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* 連続小説 「 最果ての地、紅葉台 」
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*   作 ダベサ・クリスチィーヌ(仏)
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 あれからもう一年・・・人々の心には、すでにあきらめがあった。
いつまで足ってもこのままなんだ、ここから逃れることは出来ないんだ・・・と

 最果ての地、紅葉台、物語はここから始まる。

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* 第一話 オフィス
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 武雄(仮)はいつも通りそこに向かっていた、彼は将来を約束された花形プログラマーだ
家は郊外の水はけの良い高台にあり、そこからは電車で乗り継いで一時間位のところだ。

 別にいつもと何等かわらない秋の午後、季節の変わり目のためか不安定な天気だ
今日も冷たい雨がしとしと降っていた、武雄は3時からのプレゼンテーションに備え
企画書の整理をしていた。

 武雄のところに今年入ったばかりの管理の島崎(仮)という娘が近付いてきた、
「 あ、あの、武雄さん・・今夜は忙しいでしょうか・・・ 」
 島崎は武雄に憧れてこの会社に入ってきたのだった、今までも何度となく武雄に
アタックしていたのだが、武雄はそんな島崎の気持ちとは裏腹に巧みな話術で逃げてきた
「 島崎君か、いやすまないけど・・N社の人を接待しなきゃいけなくてね・・・ 」
今日もいつも通り、そういって切り抜けられる筈だった・・・
しかし、島崎は武雄の顔をじっと見つめると目頭を熱くさせていた・・・
「 う、うう、 」
武雄は今にも泣き出しそうな島崎をみて、少し戸惑った・・・
「 し、島崎君・・・ 」
島崎は武雄の顔を見つめてこういった
「 武雄さん、私できちゃったみたいなの・・・ 」




・・・つづく