1989年に登場したフェアレディZは、現在の280psスーパースポーツの先駆けとなったモデルである。このZ32が登場するまで、フェアレディZはどちらかといえば大陸GT的な性格を持ったクルマだったが、このモデルチェンジによって、方向性はリアルスポーツへと転換された。スタイリングも、伝統的だったロングノーズと決別し、ワイド&ローフォルムに進化。エンジンやシャシーも徹底して走りに振った構成になっている。
エンジンはロングノーズを避けるために、以前のモデルで利用された直6から、3.0リッターのV型6気筒DOHCツインターボVG30DETT型になった。NAでは同型のVG30DE。トランスミッションは5速MTと4速ATの2種類が用意されているが、2シーターのバージョンSは5速MTのみしか存在しない。足回りはフロント/リアともにマルチリンクを採用。バージョンR(最終型)では専用のサスペンションとボディ剛性パーツが設定されたことで、さらにシャープなドライビングが可能となっている。しかしデビューから10年以上経過しているだけに、実際に走ってみると、絶対的なポテンシャルでは後発のライバルたちに一歩譲ってしまうのも事実。だが、ツインターボは大排気量ターボFRならではの豪快さが味わえるし、NAはバランスの良い走りが可能だ。
ラインナップの基本展開は2シーターと2by2で、2シーターにはノーマルルーフとTバー、2by2にはTバールーフが設定されている。また、これに加えて1992年8月のマイナーチェンジではコンバーチブルも追加された。最初のデザインコンセプトが良いためか、マイナーチェンジではファンでないとわかりづらい箇所の改良に留まることが多かった。モデル誕生10年となった1998年10月には、エクステリアではバンパー、リアウイング、サイドシルプロテクタ(バージョンRのみ)、インテリアではシートベルトの位置などが変更。シャシーの剛性もあがることになった。
しかし、残念なことに2000年8月をもって、11年続くZ32の歴史は幕を閉じることになるが、早くもZ33の期待がある。空白の数ヶ月間、次の貴婦人はどれだけの紳士を魅了することになるのだろうか。
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