サイキック・ディテクティヴシリーズ・ファイナル
ソリチュード(下巻)
対応機種 : 富士通 FM TOWNS
メディア : CD-ROM +
3.5inch 2HD (各1枚)
定価 : 12,800円 (税別)
発売日 : 1993年3月19日
販売元 : データウエスト
○ 内蔵メモリーが2MB以上必要
○ FASTモードには非対応
○ ユーザーディスクの作成にブランクディスクが1枚必要
目次
『ソリチュード(下巻)』について
『ソリチュード(下巻)』は、データウエストが開発し1993年3月19日にFM TOWNS用として発売したサイコホラーアドベンチャーゲーム。『Invitation -影からの招待状-』(1989年3月17日発売)から始まったサイキック・ディテクティヴ・シリーズの第6弾であり1992年11月27日に発売した『ソリチュード(上巻)』の後編にあたる。
ストーリーは『ソリチュード(上巻)』の完全な続きとなっている。マニュアルですらあらすじや登場人物の記載が一切なく、ゲーム内でも回想シーンが殆ど含まれていない。そのため、『ソリチュード(上巻)』を未プレイの場合、顛末の全容を把握するのは困難であると思われる。
システムは『ソリチュード(上巻)』を踏襲しているが、『ソリチュード(下巻)』より3DCGウォークスルーが導入された。3DCGウォークスルーという名称に関しては当時の広告やリーフレットなどに記載はなく、後に発売された『Invitation -影からの招待状- リメイクバージョン』(1993年11月26日発売)の広告に記載されたものが初出と思われる後付のシステム名だ。『ナイトメア』で蘭の家を歩き回るシーンも非常に似ているが固定された移動のみに限定されていた。『ソリチュード(下巻)』では3Dダンジョン型ゲームのように自由に前後左右へ方向転換できる点が大きく異なる。
※『「SOLITUDE(下巻)」で大好評の3Dウォークスルー』はちょっと言いすぎのような気もする。
3DCGウォークスルー はリアルタイムに計算された映像ではなく、事前に用意された動画再生の繋ぎ合わせである。この動画再生にはDAPS のシステムが使用されておりシームレスに移動が可能となっている。また、PICA-α(ぴかアルファ) によりビジュアルウインドウ内のクリックで移動することを可能としている。加えて、表示されているオブジェクトを調べることも可能とした。3DCGウォークスルー は3DCGアニメーションによる移動だけではなく、アドベンチャーゲームらしい利用を実現している。
ソリチュード(上巻)の発売からおよそ4か月を経て発売となった今作。店頭デモではいきなり重要シーン(上記画面)が登場。しかし、ソリチュード(上巻) の店頭デモに比べると何だか凄そう、面白そうと惹きつけられなかった。発売までの間にシリーズをプレイしたため DAPS に慣れてしまったためか、そうでないのか。もちろん、未プレイの人にとっては捉え処のない、まったく意味不明なゲームに感じたと思われる。
そんなわけであらすじを簡単に書くと…
現在の恋人である梨絵香に出会う前の恋人である彩(故人)が実は生きていると告げられる。「あなたの助けが必要だ」と。
動揺する降矢木は後日真行寺邸を訪れるよう連絡があるも拒む。
痺れを切らした真行寺と土屋は手下を使って降矢木を誘拐させ、強引に真行寺邸へ招く。
気がついた部屋で降矢木が見たものは…チューブに繋がれ水中花のように水槽内に浮かぶ彩の姿だった。そこに現れた真行寺に真相を聞かされ、彩の心を取り戻すよう依頼される。
彩の心を取り戻すにも降矢木は『ナイトメア』でサイキック能力を失っていた。彩の心に降矢木が入るにはブリッジとしてローズと梨絵香の協力が必要だ。しかし、梨絵香は嫉妬心に火が付き、協力を拒否。置き手紙を残して家を出ていくのだった。
梨絵香を探す手がかりとして、梨絵香の母親から出された古い手紙に記載された住所へ向かう。近々ダムの底に沈むためひっそりとした町で、梨絵香の母親である森崎さやかに出会うが梨絵香とは何年も会っていないという。梨絵香を託された瞬間に、森崎さやかは姿を消す。
梨絵香が見つからず協力が得られないとなると、もう一人必要になる。その昔、『オルゴール』で仕事を共にした樋渡を思い出し、やっとの事で出会う。樋渡を探している間に、ローズマリーとしての過去を知るため教会で眠りについたローズを目覚めさせ、3人で真行寺邸へ向かう。
『ソリチュード(下巻)』は店頭で見ていた限り、『ソリチュード(上巻)』に比べるとほとんど売れなかったように思う。至極当然だが完全な続き物で下巻の売上が上巻の売上数を上回ることは一般的に少ない。さらに大きな理由として12,800円(税別)という定価も挙げられる。(当時、ソフマップではビクターなど一部を除く新作は2割引だったので少し安めに購入はできた)話を一気に楽しもうと上下巻セットで求めると25,600円(税別・定価)とゲームソフトにしてはかなり高額になる。『ソリチュード(上巻)』にそこそこの評価を下したプレイヤーに対して、買ってみようかと思わせる金額ではなかったのだ。
前作の『ソリチュード(上巻)』から好評を得た…とは思えない、グラフィック・ワークステーションで作られたと言われる3DCG のアニメーション。今作も「惜しげもなく大量投入」され、さらにパワーアップされている。心の欠片を探すために アニメーションを見ることがフラグの1つにもなっている。(しかもハズレもある)問題なのは、そこそこ長い時間の3DCGアニメをフラグ回収のために繰り返し見ることになることだ。1度視聴済みでもマウスクリックで飛ばしたりキャンセルできないため、無駄なアニメーションを再度見ることに対して非常にストレスが溜まる。
『ソリチュード(下巻)』は、シリーズ中大きく変わったことが1つある。今までのシリーズは主人公の降矢木視点でプレイしていた。しかし、今作は後半部分をローズ視点でプレイすることになる。そう、サイキック・ディテクティヴシリーズの締めで主人公の視点が入れ替わるのだ。
主人公が入れ替わった時から、最大の難関である真行寺邸探索という本格的なアドベンチャーパートが始まる。前述の3DCGウォークスルーがここで全開放されるのだ。全開放と書きつつも移動範囲は限定的で狭いのだが、フラグの順番がほぼ指定されている上に何をすればいいかという指標がないために初プレイ時はかなりの時間を要した。あまりに何も起きないので ナイトメア のキャベツ千切り地獄同様「バグってるんじゃないの?」と疑ったものだ。(攻略法は下部参照)
難関のフラグ立てが終わると暗号を使った謎解き。アドベンチャーゲームは斯くあるべしというお手本に立ち返ったような演出がある。メモは必要だがIQが低くても理解できるようなやりがいのある暗号解読だ。(答えは下部の攻略法参照)
最後は心象世界に紛れ込んだ土屋を探すゲームが待っている。3回連続で成功しないと1からやり直しになるが、冷静になれば簡単。マウスを適当に動かしてメッセージウィンドウに「意識の流れ」と表示される場所をクリックするだけだ。
以上のゲームらしいパートはDAPSリプレイでばっさりカットされる。最近ではDAPSリプレイの動画を見ることは難しくなくストーリーの把握は容易くなっている。しかし、こういったゲーム的な要素があったという側面は恐らく伝わらなくなっていくだろう。
物語の締め方としてはやはりサイキック・ディテクティヴシリーズらしく最後まで大団円とは行かなかった。『ソリチュード(下巻)』に関しては歯切れが悪い幕引きだと感じた人も多いのではないだろうか。特に最後の展開に関して是か非か討論したいところだが、ネット上でもそういった意見を述べている情報は少なく、既に語る人もいなくなってしまった時代に突入しているのが残念だ。
『ソリチュード(下巻)』のBGMは引き続き斉藤康仁(Yasuhito Saito, 1967-03-15-2024-07-18)、効果音を含めて音楽データへの落とし込みは『ソリチュード(上巻)』から進藤敦史(Atsushi Shindo)が行っている。BGMのチャンネル構成も引き継がれており、BGMにはFM音源6ch+PCM音源6chの計12chを使用。PCM音源の残り2chは音声用に1chと効果音に1chに割り振られている。
http://31103.ldblog.jp/archives/52007748.html
https://www.kogado.com/sw/male/news/20240719/
新曲はエンディング曲を含め12曲だが、そのうち2曲が未使用。アレンジ曲も3曲と少なめだった。これまでのマニュアルには斉藤康仁によるアレンジ版の曲名と解説があったのだが、今作は一切ない。ジュークボックス(ミュージックモード)により、主に二人の子供時代に流れる曲が「Japanesque #4」、最後の「Psychic Detective History」で流れる曲が「SOLITUDE」ということは分かるが。エンディングの曲名は未だ不明のままだ。
一番耳に残っているのは、真行寺邸探索で延々と聞かされた「Solitude 22」だろう。とはいえ、刺さる曲ではなかった。新曲の中には聞き覚えのあると思われる2曲が含まれている。「SOLITUDE」とエンディング曲だ。これは『ソリチュード(上巻)』の「Solitude 9」が編曲されたものだ。
全体的に印象に残る曲が少ないが、アレンジでも残されている「Japanesque #4」だけは別格だった。姉妹二人のテーマ曲でもあり、降矢木と梨絵香二人の最後のシーンを飾るBGMとしても使用された。店頭デモでも真っ先に使用されていた曲だけに、制作側としても推しの強い曲であったのではないだろうか。この曲はゲームを解き終えて聞くと印象は大きく変わり、本当に心に染みるのだ。
プロローグ
失踪した梨絵香の捜索を諦めた降矢木は、ローズ、樋渡とともに真行寺邸へと向かう。
そこでは、かつての恋人真行寺彩が目覚める時を静かに待っていた。
彩の逃避した自我を求めて3人はダイブする。
寂蔘とした虚無の香りだけが存在する世界。
降矢木が遭遇したビジョンは遠い過去の記憶だった。
ミルク色の霧に包まれた庭園。
時折、風に誘われた花びらが吹雪のように舞う。
霧に浮かび上がるように、無邪気に毯を就く幼き彩の姿が映る。
そこへ現れたもうひとつの幼児……。
ビジョンを目にした降矢木は激しく動揺する。
その時、空間が激しく崩れ始めた。
彼の見たビジョンが彼の意識に動揺を与えたのだ。
果たしてプロジェクトAYAとは?降矢木は彩の意識を取り戻す事が出来るのか?
失踪した梨絵香の行方は……。
登場人物紹介
ソリチュード(下巻)のリーフレット
操作方法
①
②
③
④
① ビジュアルウインドウ
基本的な映像が表示される。映像内にある様々なオブジェクトをマウスでクリックする事により物語が進行していく。
視覚的な情報や選択の結果がここに集約される。
② アイテムウインドウ
このウインドウには現在持っているアイテムなどが表示される。
このウインドウは通常閉じているが、ビジュアルウインドウ左側の枠内をクリックする事によりオープンできる。
ウインドウを閉じるには、EXITをクリックする。
③ キャラクターウインドウ
現在ビジュアルウインドウに登場していない人物のアイコンが表示される。
このウインドウも通常閉じているが、ビジュアルウインドウの右側の枠内をクリックすることによって開く。
ウインドウを閉じるには、EXITをクリックする。尚、アイテムウインドウとキャラクターウインドウは同時に開くことはできない。
④ メッセージウインドウ
必要に応じて文章がこの場所に表示される。
真行寺邸 攻略の手引き
真行寺邸探索のフラグ立てがかなりわかりにくいので攻略法を残しておくことにした。
どこで何をするか分かっていないと延々と屋敷を調べ回ることになる。フラグ回収は順番どおりでないと進まないことがあるので注意だ!(鍵を見つけるシーンなど)
1. 1階 応接室
暖炉を複数回調べてみよう。ファイルが見つかる。
ITEM WINDOW からファイルを読んで 高津医師 の行動調査報告から情報を引き出しておく。
2. 2階 廊下
階段を上がった所で右のバルコニー側を向き CHARACTER WINDOW から 樋渡 と会話する。
真行寺 は屋敷の外には出ていないことがわかる。この場面がかなりわかりにくい!
3. 2階 書斎(ドア3)
手前のソファーを調べると紙切れが見つかる。暗号キーの1つだけど今は気にしなくていい。
この部屋にまだ何か隠し事がありそうだけどもう何もない。
4. 2階 客室(ドア2)
ジュークボックスでサイキックディテクティブシリーズの音楽を聞くことができる。…だけかと思いきやここにも。
故障中の紙を調べると暗号の2つ目が手に入る。
現段階では、この部屋ではこれ以上調べても何も出てこない。
5. ITEM WINDOW
ふと ITEM WINDOW から何度もファイルを繰り返し見ると新しい情報が出てくるじゃないか!
ソリチュード(上巻)後半に出てきたジャーナリストの 中西博美 に関する報告書。高津医師 の件でもうファイルからは何も出てこなかったので、ここでもう一度ファイルを見るなんてなかなか思いつかずハマりやすい。最後に雛人形の情報が出てくる事により、雛人形を探すことになる。
6. 2階 客室(ドア2)
雛人形を探すことになると、今まで探しても何も出てこなかったラックから鍵が見つかる! これで今まで鍵がかかっていて開かなかった2階の扉が開き雛人形が見つかる。
7. 2階 鍵のかかった部屋(ドア1)
全く同じグラフィックだけど部屋は違う。
プロジェクト "AYA" の真相が分かって一段落し移動シーンへ。左の引き出しを調べると音がする。(どういう仕掛けなんだか。)
なお、右のラックを調べると私の環境ではフリーズしてしまったので触らないほうがいいかも。
8. 1階 水槽のあった部屋
ここで紙切れの暗号から文章を作ろう。
HEAD(頭) 2回
RIGHT LEG1(右足1) 1回
LEFT LEG2(左足2) 3回
LEFT LEG1(左足1) 1回
RIGHT ARM2(右腕2) 2回
と順番に動かせばクリアだ!
トリビア
【最後に表示されるメッセージの謎】
Phichic Detective History 終了後に,
Quid dormitis? Surgite et orate, ne intretis in tentationem.
というメッセージが表示される。もしかして、これは暗号のメッセージで続編を示唆するものだろうか?などと期待で勘ぐったりもした。
現在なら調べると一発で分かるものだ。文章は新約聖書中の一書である「ルカの福音書」からの引用だった。
(翻訳)なぜあなた方は眠っているのか?誘惑に陥らないよう、起きて祈っていなさい。
文章の意味は理解できたが、なぜこの文章が最後に表示されるのかは未だに理解できていない。
PSYCHIC DETECTIVE ARRANGEの館
2003年10月~2004年の間にXVさんが作成されたページ。記憶では機材にRoland XV-5050のみで打ち込み。オフィシャルのアレンジとしても違和感のないアレンジの押さえ方が秀逸。
当時一部ファンの間でもかなり話題になり、掲示板には斉藤康仁も登場、高い評価を得ていた。『ソリチュード(下巻)』からは2曲アレンジされているが、1曲(Doubtful Touch55)は行方不明。マニアックだが最初の公表時「Arrange」を「Arrenge」と記載していた。その初期版とその文章を掲載しておこうと思う。
■ソリチュード下巻 「ENDING THEME」
サイキックシリーズの最後を飾る曲です。
原曲ではテノールサックスがメロディを担当していましたが、今回のアレンジではキーを1度上げて、ソプラノサックスに変更しています。これにより、曲の雰囲気が若干柔らかくなったと思います。
また、ギターソロについても、なるべく生音のようになるべく音色調整しました。
リアルな音色のギターソロにも注目してください。
最後に
サイキックディテクティヴシリーズの主人公である降矢木和哉や、ローズマリーの祖父などの声をあてておられた工藤恭造さんが 2021年1月24日、お亡くなりになられました。シリーズの顔でもあった氏の訃報はショックでした。心よりご冥福をお祈りいたします。
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+PCM音源)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2612(OPN2)+RICHO RF5C68
01 Solitude 19
02 Solitude 20
03 JAPANESQUE #4
04 Solitude 22
05 Solitude 23
06 SOLITUDE
07 Doubtful Touch55
08 Solitude 26
09 Solitude 27
10 Solitude 28
11 Solitude 29
合計時間 : 11:44
作曲 : 斉藤康仁
編曲 : 進藤敦史
DISCOGRAPHY
サイキック・ディテクティブ・シリーズ・ザ・ベスト
発売日: 1991年12月18日
価格: 2,500円(税込)
商品番号: TOCT-6381
販売元: 東芝EMI
収録曲
01 PHOTOGRAPH <CLUB MIX>
02 AUTUMN <CLUB MIX>
03 OPPOSITE LOVE <CLUB MIX>
04 JAPANESQUE #3
05 IGNITER
06 D.N.A. (ReMIX)
07 JAPANESQUE #1 (ReMIX)
08 FEEL TIRED (ReMIX)
09 ROSE MARY
10 SAND STORM
11 A FEAR (ReMIX)
12 SHADOW
13 ALONE
14 INVITATION
15 YOU-ME
3DCGウォークスルーの初出
映像はWindows95への移植版。
BGMやスタッフロールシーンが異なる。