『物語』という名の迷宮へ…
この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO
対応機種 : PC-9801VX/UX以降
メディア :
5inch 2HD (15枚)
3.5inch 2HD (15枚)
CD-ROM (1枚)
定価 : 9,800円 (税別)
発売日 : 1996年12月26日
販売元 : エルフ
○18歳未満の方はご購入できません。
○VX21・UX21以降対応
○ハードディスク専用
○要バスマウス
○FM音源対応。
ステレオ時は要[PC-9801-86]ボードかPC-98Canbeの内蔵FM音源
○要MS-DOS3.3C以上
(起動ディスク作成時はMS-DOS5.0A以上)
○ハードディスクの空き容量要25メガバイト以上
目次
PROMO WORD
『物語』という名の迷宮へ…
「この世の果てで恋を唄う少女YU-NO」は A.D.M.S.=Auto Diverge Mapping System(オート分岐マッピング・システム)を採用した、今までに無いタイプのゲームです。
マップを見ながら、様々な分岐世界を探索する…新たなマルチシステム A.D.M.S.は、複雑にからみあった世界を、目に見えるマップとして作成していきます。
ストーリーの根幹には「並列世界」と呼ばれる概念が存在します。プレイヤーの目的は、この並列世界の探索、そしてその奥に潜む謎に迫ることです。
あなたの判断と行動が、様々な分岐世界を進んでいくきっかけとなるのです。
A.D.M.S.が仕掛ける数々の謎を解く事ができるでしょうか?
『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』について
『この世の果てで恋を唄う少女 YU-NO』(以下YU-NO)はエルフが開発を行い、NEC PC-9801シリーズ(VX21/UX21以降対応)用として1996年12月26日にエルフより発売された新機軸アドベンチャーゲーム。開発期間はおよそ8ヶ月。年齢制限のある成人指定ソフトとして販売された。
後にセガサターン(1997年12月4日)、Windows98/2000(2000年12月22日)に移植されている。2017年にはSONY PS4、PS Vita、2019年には任天堂 Switch でリメイク版が販売された。
シナリオは剣乃ゆきひろ(菅野ひろゆき-Hiroyuki Kanno, 1968年5月8日-2011年12月19日)、音楽は島田竜(梅本竜-Ryu Umemoto, 1974年2月18日 - 2011年8月16日)。クレジットされていないが音楽には高見龍(Ryu Takami)、神奈江紀宏(Kazuhiro Kanae)が関わっている。菅野ひろゆき、梅本竜、高見龍はシーズウェアの『EVE burst error』で名を馳せた3人だ。キャラクターデザインは現在もアニメ界で活躍されている 長岡康史(Yasuchika Nagaoka, 1959年- )が担当。なお、菅野ひろゆきは2011年12月19日に、梅本竜は2011年8月16日に逝去されている。
https://automaton-media.com/articles/interviewsjp/20170124-38850/
一般的に『YU-NO』がタイトル名として認知されているが、『この世の果てで恋を唄う少女』がメインタイトル名であることはあまり知られていない。(SPディスク応募用紙にメインタイトルが「この世の果てで恋を唄う少女」、また、サブタイトルが「YU-NO」であることが明かされている。)
初回出荷分は特典として500円でスーパーアレンジ音楽CD(2枚組)が購入できた。エルフ恒例のスペシャルディスク(フロッピーディスクのみの提供)も2,000円(エルフファンクラブ会員は1,000円)で販売されている。
メディアはフロッピーディスクとCD-ROMの2種類が存在しており共にハードディスク専用。発売はWindows 95が爆発的に普及した時期でもあり、ハードディスク専用版のみに踏み切ったと思われる。またPC-9801シリーズにおいてもCD-ROMドライブが普及期だった。なお、この『YU-NO』がエルフの手掛けたPC-9801シリーズ(MS-DOS用)最後の作品となった。
メディアの大きな違いとしてCD-ROM版にはおまけの壁紙(256色版と16M色版、6種類の画像が各解像度別で18枚の計36枚)とアレンジ音楽が9曲収録されている。パッケージにはもちろんのことマニュアルにすら記載はない隠し要素的な存在だった。収録内容を考えると販売価格は異なりそうなものだが同価格だった。
02 回想
03 思い出
04 少女
05 結城
07 運命(因果 I)
08 剣の岬
09 自宅(安堵)
付属品も若干異なる。MS-DOS上からCD-ROMドライブを認識させなければならないので、簡易説明書が付属。CD-ROM版は輪を掛けてプレイ環境を作るのが困難だった。また、メディアにより必要とされるMS-DOSのバージョンが異なった。フロッピーディスク版はバージョン3.3C以上、CD-ROM版はバージョン5.0A以上が必要である。(CD-ROMドライブを使うにあたってのDOS問題)
『YU-NO』は今でこそ推理型と恋愛型を組み込んだアドベンチャーゲームと知られているが、PC-9801シリーズ用のパッケージではA.D.M.S.と並列世界について述べられており、具体的なジャンルやあらすじに一切触れていなかった。事前に成人指定のゲームを掲載するパソコン・ゲーム雑誌で情報を得ていなければパッケージ表に描かれた『YU-NO』とパッケージ裏に散らばった画像で判断するジャケ買いを期待するしか無いゲームだった。それでもヒット作になったのは、当時のエルフというブランド力によるものが大きいと思われる。ただし情報を開示しない点が物語を最大限に楽しむ大きな要素になっていた。
対して、セガサターンや各種リメイクの移植作は情報を公開しすぎている部分があって、本来あっと思わせるところに水を差している気がする。登場人物のレベルですら情報を事前に知っていると『YU-NO』の面白さは目減りしていく。企業として売上のための情報開示も重要だと思うのだが、エルフはそういう所をわきまえていたように思えるのだ。
『YU-NO』には店頭で使用できるような実際のプレイデモが4場面収録されている。デモを見て受けた印象は古き良きアドベンチャーゲームだ。単純なコマンド選択だけではなくマウスカーソルで所定位置の調べ物をしたり、所有アイテムを駆使しないと進行しないシステム。デモ中にはA.D.M.Sを使用した分岐マップ画面も出てきたが予備知識が無ければ理解できないだろう。
ただ、実際の所は古き良きという部分は思い出補正であり、逆の悪い面も備えている。進行には重要性が無いのにあらゆるところをクリックして調べ尽くさないと次に進まないのだ。そういう面は表に出ないように巧みに作られていた。
デモやオープニングを見てもまずゲームの目的は分からない。もちろん、主人公であるたくやがムフフな学園生活をエンジョイすることが目的でもない。死亡したと思われた父からのメッセージが届き、各種アイテムを与えられる。これを契機として、実は父親が生きているという結論(並列世界にいる)に至り行動に移る。あくまで初動はそれだけだが、そのアイテムを巡り色々と問題が発生することにより物語は大きな動きを見せる。
送られてきたアイテムがゲームのシステムを決定付けている。1つは横に時間軸を取り、プレイヤーが辿った世界の「道」をマップとして表示する。平たく言えばプレイヤーが見たマルチストーリーの道を形成していく。ゲーム中では、この各々のストーリー世界を「並列世界」という呼び方をしている。新たな道を発見すると、このマップに道が記録されるだけでなく、チャイム(効果音)も鳴る。プレイヤーは目と耳でこの「並列世界」の探索を、能率的に進めることができる。
そして、右下にあるのが宝玉。クリスタル細工のアイテム。ここをマウスでクリックすると、現在の場所および時間がマップに記録される。現在の位置に記録されているマークがセーブマーク。マップ上のこのマークをクリックすると、再びその時点へと戻ることができる。ゲーム開始時は2つだけ「宝玉」を持っている。プレイヤーは、各並列世界に点在するこの「宝玉」8つを集める目的がある。並列世界のどこにあるかはマップ状に記されている。
ガラス玉みたいなものと呼ばれている宝玉はいわゆるセーブポイントを司るもの。一度使用するとルート上に配置。マップ上でクリックすれば時間を超えて戻れる。持っている数だけセーブポイントが増える仕組みだ。
マルチエンディング型アドベンチャーゲームでいう分岐点がマップとして見られるので、物語を視覚的に進めることができる…だけと思いがち。しかし、『YU-NO』のシステムは時間軸を超えてもたくや本人の記憶だけではなく、持ち物までそのままということに注目だ。
ゲーム分岐には単純な場所移動によるキャラクターとの接点だけではなく、そのときに「もしも」アイテムを持っていたら、使ったらという事により進む場合が多々ある。また、分岐点ではご丁寧にマッピングスイッチが光ってくれる。プレイ時間はかなりかかるが、最後までゲームを進めるのに一役買っている。ちなみに私は初プレイで100時間以上費やした。当時は攻略本も何も無かったので、ホントに地道に宝玉を置いて、時間を溯っての繰り返しだった。
最近のアドベンチャーゲームは…と老人ぽい書き出しになるが、謎解きというより選択肢を分岐点としたマルチエンディングへ至る読み物になっている作品が多い。それを考えれば、今でも通用するのではないかと思う奇抜なシステム、頭を使う少しハードな謎解き、ミステリー、エッチなイベント。ゲームを面白くするために入れられる要素を存分に盛り込んでおり贅沢なゲームに仕上がっている。プレイしたことのない人には是非この世界を体験して欲しい。
本当に驚いたのは宝玉を全て見つけた後の展開だ。「異世界2」のBGMが流れた場面では鳥肌が立った。想像すらできなかった展開に たくや と一緒に大混乱した。読み物としてもこれまた秀逸でどこに向かって物語が進んでいるのかまったく想像できない事が続く。大袈裟な話ではなく本当に目が離せない展開の連続。そして、名作にありがちなちょっと考えさせられる余韻のあるエンディング(スタッフクレジット)で幕を閉じる。これは、平成におけるアドベンチャーゲームの究極と言ってもいいのではないだろうか。
移植作、アニメなど『YU-NO』にアプローチする方法は数多くある。しかし、物語や設定そのものがそのままなのは、PC-9801シリーズ用のみである。移植されたサターン版は18禁部分が削られているし、2000年に発売された Windows版(エルフ大人の缶詰)は文章がぼかされている。たった4年で倫理的にタブーとされ表現に自主規制を行ったのだ。細かい話だが設定や変更を行えば菅野ひろゆきの意図(タブーに挑戦することがテーマ)と変わってしまう。そういう意味でいくら復刻やリバイバル、アニメ化されようがPC-9801シリーズ用は唯一無二の貴重な『YU-NO』となるのだ。
https://automaton-media.com/articles/interviewsjp/20170124-38850/
『YU-NO』のBGMはC-9801-26音源(FM音源3音+SSG音源3音)に加えPC-9801-86音源(FM音源6音+SSG音源3音+リズム音源+ADPCM)やYAMAHA YMF288-M及びYMF297搭載の98MULTiやCanBeの音源(FM音源6音+SSG音源3音+リズム音源)に対応。ただし3代目CanBe(PC-9821Cb3,Cx3)と同じ音源チップ(YMF297)を搭載する PC-9801-118音源ボードは設定方法がマニュアルに記載されているもののノーサポートとされている。
音楽関係をメインで務めたのは梅本竜。しかし、梅本竜の失踪事件があり残りの曲を作成するためにピンチヒッターで参加することになったのが高見龍、神奈江紀宏、ということがインタビュー記事にて語られている。
音の構成は効果音の少ないアドベンチャーゲームということもあってか例外を除きFM音源6ch、SSG音源6ch、リズム音源のフルパートで演奏されている。
特徴としてフワッと浮かび上がってくるようなSSG音源3音を用いた旋律やコードが挙げられる。まるで波が押し寄せて引いていくような独特のゆらぎが非常に心地よい。加えてメロディーにも積極的にSSG音源を使用したりポルタメントを多用する傾向がある。難点としては過去作品から音色や調の似ている曲が多く、混在させるとどのゲームだったか分からなくなることが多い。今回、どの場面でどの曲が鳴るか調べながら再プレイしていたわけだが、正直記録していないと今までに鳴った曲なのか、初めて鳴る曲なのか分からなくなり混乱することが度々あった。
しかしながら、この神秘的な雰囲気はFM音源とSSG音源の賜物で、音源を変えたアレンジではなかなか表現できない完成された一つの形であるように思える。それは梅本竜がFM音源とSSG音源の使い手として境地に達していたからと言っても過言ではないだろう。
https://automaton-media.com/articles/interviewsjp/20170124-38850/
画面の説明
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
⑫
⑬
①白い道
横に世界軸を取り、プレイヤーがたどった世界の「道」。
②セーブマーク
「宝玉」を使った位置。ここでマウスカーソルをクリックすると「宝玉」を使った時点へ戻ることができる。セーブは右下の「宝玉」の数だけ可能。
③光点(取っていない宝玉)
この時間この場所に「宝玉」が隠されていることを表わす。このアイテムを8つ全てを集めるのが目的の1つ。
④うず巻き
ここへ入るとあることが起きる。
⑤宝玉
クリスタル細工のアイテム。ここでマウスをクリックすると現在の場所と時間がマップに記憶される。なお、宝玉を全て使い切ってしまうとマップを開くことができなくなるので注意が必要。
⑥マップ用スクロールバー
マップは1画面に収まるような世界ではなく広大なマップになっているので、矢印の右と左でマップ画面をスクロールさせることができる。
⑦???
ここへくると何かが起こるかもしれない。
⑧分岐している道
この時間に違う並列世界へ分岐する道があるという道しるべ。
⑨現在位置
プレイヤーの現在位置を表わす。
⑩アイテム用スクロールバー
画面では5つのアイテムが見えているが、5つ以上のアイテムを所有したときにスクロールさせ表示させることができる。
⑪アイテム
アイテムの使用。基本的にドラッグ&ドロップ方式となっている。
⑫マッピングスイッチ
このクリスタルをクリックすると、広大な分岐マップ(上の画面)を開くことができる。また並列世界の分岐が近づくとここが点滅して知らせてくれる。
⑬ゲーム中断
ここをクリックすると「キャンセル/セーブしてメニューへ戻る」が表示される。再びゲームを始める時はトップメニューの「前回の続きから」を選択することで中断した場所から開始できる。
トリビア
【マップの達成率を100%にするとお祝いされる】
ルートを全て制覇し分岐マップの達成率を100%にすれば、初日の校内(ホール)にて音楽室への道が開ける。移動すると様々な次元のキャラクターが出てきてお祝いの言葉をくれる。(流れるBGMは 「団らん」)
【過去エルフ作品のアレンジ曲が聞ける】
エルフの過去作品である某ゲームから「Yui Narusawa」と「Lower Garade Girl」の2曲が喫茶イブニングのジュークボックスで聞ける。特別なルートで鳴沢唯がゲスト出演するのか!?と当時思っていた。(残念ながら、それはなかった)
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+SSG+リズム音源)
音源チップ:YAMAHA YM2608(OPNA)
01 プロローグ(イントロダクション)
02 回想(夢)
03 移動1(プロローグ・基本移動)
04 思い出(寝起き)
05 少女(異世界 I)
06 団らん(食事)
07 亜由美
08 結城
09 予兆(気配)
10 美月
11 運命(因果 I)
12 運命(因果 Ⅱ)
13 始動(危機)
14 剣の岬
15 自宅(安堵)
16 澪
17 幻影
18 怪しさ1
19 怪しさ2
20 オープニング
21 遺跡
22 絆(きずな)
23 懐古 (Crystal Glock)
24 神奈
25 焦燥1
26 焦燥2
27 危機
28 エリィ
29 愛情
30 謎解き
31 FANKY TANG (Honky Tonk)
32 発現
33 恐怖
34 謎
35 愛1
36 愛2
37 急転
38 探索
39 湖面の少女 (Ancestral)
40 手記
41 校内
42 移動2
43 移動3
44 移動(夜)
45 去りし人
46 玄室
47 胎動
48 レア・メタル (Moog Square)
49 喫茶店
50 Yui Narusawa (ジュークボックス)
51 Lower Garade Girl (ジュークボックス)
52 静寂
53 ふれあい
54 コミカル
55 GAGU
56 侵入
57 異世界1a (未使用バージョン・「帝都」のイントロ無)
58 異世界1b
59 異世界2
60 セーレス
61 旅立ち
62 ユーノ1
63 ユーノ2(未使用バージョン)
64 成長
65 WANPAKU
66 時計塔
67 別れ
68 砂漠
69 棺
70 神殿
71 ワル
72 崩落
73 Ruins
74 帝都
75 夜のプール(地下道)
76 reunion(再会)
77 噴水のほとり
78 緊張
79 悲哀
80 Ending
81 プロローグ・屋内移動(未使用曲)
合計時間 : 2:47:42
作曲 :
島田竜(梅本竜)
高見龍 (07,57, 74,78, 80)
神奈江紀宏 (66, 71, 72, 73, 75, 76, 77)
国枝学 (50,51)/ 編曲:島田竜(梅本竜)
DISCOGRAPHY
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
オリジナル・サウンド&ボイスコレクション
発売日: 1997年12月3日
価格: 非売品
商品番号: OP-9447
発売元: elf
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
スーパーサウンドトラック
発売日: 2000年12月8日
価格: 非売品
商品番号: YU-NO-1
発売元: elf
この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
限定盤同梱特典サウンドトラック[DVD-ROM]
発売日: 2017年3月16日
価格: 非売品
商品番号: FPBD-0360
発売元: 5pb.
エンディングムービー
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