超伝奇RPG
幻影都市 ⎯ ILLUSION CITY ⎯
対応機種 : NEC PC-9801VM/UV以降
NEC PC-88VA
メディア :
5inch 2HD (7枚)
3.5inch 2HD (7枚)
定価 : 9,800円(税別)
発売日 : 1992年1月18日(発売予定1991年11月→12月から延期)
販売元 : マイクロキャビン
○PC-88VA対応
○PC-9801VM0/2/4は要16色ボード・640KB RAM
○PC-9801VFは要16色ボード・640KB RAM、2HDドライブ
○PC-9801/E/F/M/U/LT/HA/ハイレゾモードでは動作不可
○1ドライブ動作時にはMIDI対応不可
○MIDI対応(CM-64/CM-32L/MT-32)
○サウンドボード・ジョイスティック対応
○I・Oバンク方式増設RAMボード対応
○プロテクトメモリ対応 ○バスマウス対応
※映像のBGMはFM音源版
GALLERY
PROMO WORD
禍々しき気に満ちた近未来都市、香港。狂気と悪しき欲望とが渦巻くこの都市で、いま一人の男が駆け抜ける。失われた己の過去を求めて、迫り来る危険に自から身を投じる男、対魔掃討者 "天人" は、人民警察の対魔特別攻撃班に属する女 "美紅" と共に、その実態さえ知れぬ巨大な悪に対し、渾身の気を込めて愛用の銃を放つ。果てしなく続く戦いの日々は、いつしか眠ることさえ忘れさせてしまった。
■VRシステムVer2.5搭載■
■8頭身キャラクタ採用■
■キャラクタ演出革命!■
プロローグ
1. 電信-メッセージ-
200X年。中国返還後まもない香港は謎の地殻変動により、一夜にして崩壊した。香港のとある放送局は、その最後の放送において、崩壊した香港都市の闇にうごめく、無數の異形の者の映像と共に、次のようなメッセージを残し、沈黙した。
「全世界の皆さん、香港を破壊してください。ここは魔界と化しています。やがて、やつらは世界に広がって行くでしょう。その前にこの街を・・・。一刻も早く、やつらを滅ぼしてください」
中国はもちろん、他の各国から調査団が派遣されたが、誰一人として戻ってくるものはなく、一切の状況がわからぬままに数週間が過ぎた。
そこに近年急速な成長を遂げた民間企業団体が登場する。国際情報企業集団SIVAである。SIVAは、中国政府から調査という名目で、香港の混乱鎮圧を請け負う。
数カ月後、SIVAは香港崩壊の調査活動を全て完了、概ね "障害" は排除したと、中国政府に対して報告を行う。やがて、SIVAは香港の都市機能回復を条件に新生香港の自治権を獲得する。しかし、調査団の派遣がどのように実施されたのか?20年後の今日においても、その詳細は一切明らかにされていない。
今日、SIVAの徹底した管理の下、香港は国際情報企業都市として、復興を果たした。
しかし、あの崩壊の "障害" が、未だもって残る地域も数多くある。
ここは、幻影の街。地上に現れた魔界の楽園。欲望と退廃が渦巻き、快楽と絶望が人々の心を支配する。人は、この街を様々な想いを込めて、こう呼んだ。 "幻影都市" 、と。
2. 起動-イグニッション-
202X年、香港、下層区域。
夜とも昼ともつかぬ薄闇。一面、もやが立ち込め、壊れたネオンサインが、神経質な点滅を繰り返している。遠くに犬の吠える声がこだまする。やがて、それに交じって数人の人のかける足音が、聴こえてくる。足音は、急速に通りに近づいてくる。
「姉さん、早く!」
「待って!ホウメイ!」
先に通りに現れたには二人の少女であった。足音は、まだ彼女らの後ろから聴こえてくる。
「ホウメイ!もうだめ!あたし、走れない」
「何言ってるのよ!さあこっちよ!」
ホウメイと呼ばれたショートカットの少女が、悲痛な表情を浮かべたもう一人の少女の細い腕を強引に引っ張って、狭い路地へと駆け込む。少女たちは、そのまま休む間もなく走り続ける。二人とも、着ているものは泥だらけで、あちこち破れ、傷ついた肌が見え隠れする。髪は乱れ、その顔は苦痛にゆがんではいるが、その愛くるしい目鼻だち、整った顔の作りは、アジア的な美少女の典型と言える。しかも、髪型や服装こそ違うものの、顔かたちは瓜二つの双少女であった。二人は追手をまくため何度も道を変えた。それが功を奏したらしく、追手の足音はやがて聴こえなくなった。しかし、幾度目かの角を勢い込んで曲った、その瞬間、一組みの双少女の両の目は大きく見開かれ、その小さな口は息をすることさえも忘れてしまった。
「南天のリー、お迎えに参った」
少女たちの視線の向こうに、一人の男がこちらを向いて立っていた。常夜灯を背にしているためにその表情は判別できないが肩に羽織った黒い繻子のローブが、風に静かに揺れていた。
「さあ、こちらに」
ローブの間から、しなやかな右手が差し出される。その手に誘われるように、片方の少女の体が宙に浮かび移動し始める。
「シャオメイ姉さん!」
残されたホウメイは、とっさに姉の手をつかもうとした。が、目に見えぬ力にあらがうことはできず、ホウメイの両手はむなしく宙を切り、勢い余ってそのまま地面に倒れ込む。
「ホウメイ!」
シャオメイは体をよじって抵抗したが、やがて男の手元にたどり着き、射竦められたかのように静かになる。地面に伏したホウメイも同様で、顔を上げるのが精いっぱいだった。
「シャオメイ姉さん!」
リーと名乗る男の腕の中で、シャオメイは声も出さずぐったりとしている。
「安心しろ、傷つけはしない。おまえもな」
リーはそう言い残すと、シャオメイを抱き抱えたまま身を翻し、逆光の中に音もなく消えて行った。
しばらくして、そのまま気を失ってしまったホウメイを、妖しい黒服の一団が取り囲む。
「リー様にも困ったものだ。我らがおらねば、巷の禍根は増えるばかりぞ」
「愚痴を言っても始まらぬ。さあ」
黒服の一団がそれぞれ懐から銃を取り出そうとしたそのとき、彼らの背後から何者かのつぶやきが聴こえてくる。
「南天のリー、そして天狼の少女か」
黒服の一団は、一斉に振り向き、腰を屈めて銃を構える。よく訓練された兵士の行動であった。
「誰だ!?」
闇の中から男が姿を現し、静かに応えた。
「カイ。そう呼んでもらおう」
白い着物に身を包み、長い髪を後ろにゆったりと束ねたその姿は、少し長身ではあったが、女性と見紛う美しいものであった。もちろん、どう見ても、この場にはふさわしい姿とはいえない。
「ふん、最近こういう手合いが多くて困る。まあ、我らに出会うたのが、身の不運と諦めてもらおう」
カイと名乗る男の白い能面のような顔が、その言葉に応えるかのように微かに歪む。
「面白い」
間もなく、数人の男の断末魔の叫びが、通りにこだました。
それきりだった。もう犬の吠える声も聴こえてこない。もやの立ち込める中、壊れたネオンサインは、相も変わらず神経質な点滅を繰り返していた…。
登場人物
天人-テイェンレン-(主人公)
下層区域ダウンタウンを中心に対魔掃討業 "ダイバー" を営む青年。
出生不明、美紅と共に老師に育てられる。特に銃器の扱いに長ける。
美紅-メイファン-(ヒロイン)
下層区域のみを管轄とする人民警察の対魔特別攻撃班に所属する婦警。
兄弟同然に育てられた天人と組むことも多いが、その度にトラブルは大きくなっていく。妖斬糸と呼ばれる特殊な金属糸を操る。
老師
シュウという本名を呼ぶ者は少ない。独自の気功術を体得しており、その剛の技は少しも年齢を感じさせない。
ドク(武器商人)
下層区域ダウンタウンにおいて、武器屋を営む。扱うモノは必ずしも合法品ばかりとは限らず、生体強化改造もやってのける。ちなみに医師免許は持っていない。
アイレン(桃源酒家主人)
下層区域で酒場を経営する傍ら、裏の世界の情報流通における重要な位置を占める。老師や天人、美紅らとは、旧くからの知り合いであるが、商売に私情をはさまないのがモットー。
年齢性別共に不明。
シャオメイ
ホウメイの双子の姉。行動的な妹とは対照的に物静かな美少女。その血に潜む、特別な因子のために何者かに拉致される。
ホウメイ
下層区域で双子の姉シャオメイと、それなりに平穏な生活を送ってきたが姉の拉致事件をきっかけに残酷な運命を辿ることになる。本来は、闊達な元気少女である。
カッシュ
香港崩壊の騒乱時に某大国の国家任務を帯びて同地に潜入。その後母国との連絡を絶つ。その消息不明の20年の間に数々の修羅場をくぐり抜けたであろうことは、その肉体が多くの人口パーツに置き換えられていることから十分想像できる。老師とも、そのころに知り合ったものと思われる。心を持った戦闘マシーンである。
西天フェイ(魔天八部衆)
八部衆の一人。東天ダイと共に崩壊後の20年間、SIVAによる香港統治を仕切った。武闘派の東天とは違い、政治経営手腕に長け、その実質的総指揮を担当した。しかし薬の常用者で、ときに人格の脆なさも見せる。
"風" のダーサの術を操る。
南天リー(魔天八部衆)
崩壊後に選ばれた、魔天八部衆の事実上の筆頭。常人を遥かに超える肉体の上に "火" のダーサの術を体得している。感情を表に出すことん少ない冷徹な戦士である。
幻影都市について
マイクロキャビンが放つ新しい路線の、サイバーパンク・超伝奇RPGと銘打ったのが幻影都市だった。一夜に崩壊した香港となるが、妖獣が存在するという世界が舞台だ。
ちなみに、名前は中国語読みとなる。ヒロインは「美紅」と記載して「ミク」と読んでしまいそうになるが「メイファン」と読む。どうにも難しい。主人公に至っては脳内変換するのも難しい。移動先などの名称も漢字表記だ。せめてルビを打つなどの配慮が欲しかった。(幻影都市と記載してイリュージョンシティーと英語で読ませるあたり、香港という土地柄の融合性を考えていた…のかは謎)
そんな今作は予定通りに行かず、1991年12月発売予定とされていたが延期となり年を越してしまった。ギリギリの開発関係上の問題と思われるが表記は「1991 MICRO CABIN」のままとなっている。発売はPC-9801(PC-88VA兼用)とMSXturboR専用という8bitPCを排除した2機種での開発になった。(後にX68000用とFM TOWNS用がタケルから販売されている。)
システムとして、サークで培い、熟成させてきた「VR(Visual Representation)システム」はバージョン2.5に進化した。小さいキャラクターながらも8頭身キャラとなったデフォルメされないキャラクター、そしてサークIに対して4倍のパーツが使用できるため、リアルな背景になっている。
また、ビジュアルシーンに変わる演出部分を補うために「操演システム」という新しい技法でキャラクターを演技させる手段を用いた。服を着たり、椅子に腰かけたりといった様々なアニメーションをキャラクターが行いイベントシーンを違和感なく繋げて行く手法として用いた最初の1作目となる。
操作はシンプルで分かりやすい。戦闘シーンは選択形式になりアクションが苦手なユーザーにも安心できた。
しかし、厄介な点ができた。というのも、序盤に主人公が持つ武器は基本的に銃なのだが、これには弾数制限があって弾が無くなってしまうと何もできなくなってしまう上に、戦闘中は装備の変更もできない。それ故に、レベルアップの為の経験値稼ぎを延々と行うことができないのが難点だった。
また、序盤はお金が殆ど手に入らず武器を買うこともままならならず、弾を買うだけでギリギリというシビアさ。纏まったお金が手に入るようになった頃には、街に戻ることができない場所に到達しているだろう。
セーブにできる地点が限られているのがこのゲームの苦しいところだろう。基本的に端末がある場所のみに限られる。ボスの直前などでセーブしておきたいのはユーザーとしてもあると思うが、こういった親切心は世界観(端末で行う)を重視したためか、排除されている。
特に敵のエリア(迷宮内)でのセーブは本当に限られた場所でしかできなくなっている。最後の迷宮に関しては長い工程の最初でしかセーブできない、最後のボスで攻略法を確立できずゲームオーバーになってしまった際はかなり辛い。ちょっとエンディングを見たいと思っても、それが一苦労になる。
物語も拘りをもって作成されており、ゲームバランスも良好でプレイしやすい。操演システムの効果で、ビジュアルシーンに頼ることも無いため集中力も切れずにプレイすることができる。
各キャラクターも際立っていて、もっと大きなバックボーンがあるはずなのだが、シャオメイの最後に至るまでのシーンや八部衆側のシナリオが省かれている。彼等なりの正義に感情移入できる部分が乏しくもっと語って欲しい所だ。お互いの関係を現すベッドシーンを操演シーンで一部語られるのが唯一だろう。特に、戦闘後の最後に刺さる言葉を残して倒れることが多いだけに勿体無い。
ロールプレイングゲームとしての謎解きなどはあまり存在しない。しかし、やはりアドベンチャーゲームの先駆けのマイクロキャビンというべきか、最後の最後で謎がやってくる。「色即是空」を語る像がそれだ。ストーリー重視の流れから最後の最後にゲームらしい謎解きというのは苦しい。メモ書きしてみれば反時計周りに四角になるよう像を向かせるといい事は分かるのだが、敵が寄ってくる中で落ちついている余裕は中々無いだろう。割と強敵が多い中寄ってくる敵は本当に平常心を失わせてくれる。
謎というわけででは無いが、最後のボスもヒント無しの正攻法だと中々倒すのは難しいかもしれない。
レベル上げはボス直前のシーンで40少しまで上げれば十分でダメージもさほど受けない。あとは「練気」×2を行なった後に「気功弾」を撃つ。この繰り返しで最終形態まであっという間に倒せる。
最後も清々しく、ゲーム中に外野から突っ込まれていた天人と美紅との関係にまで決着を付けハッピーエンドにて終了する。シナリオと共に良作であったことを感じる余韻もエンディングにあり、素晴らしい作品だったと思う。
音楽面ではサークシリーズとは完全に分離した曲だった。サイバーパンクと言われれば成る程と思う曲が多い。中でも「クライシス・エリア」が代表的な曲だろう。しっかり「イリュージョン・テーマ」のフレーズも盛り込まれているのに気づくだろうか。
「レクイエム」に関してはゲームオーバーの曲と捉えられがちだが、双方のキャラクターの死を謳う曲だ。ただし、印象に残らない曲があるのも事実。使用されるのが一場面だけの曲もあるので、一部の曲ではBGMを聞聞きながら、使用場面を頭に蘇らせて思いにふけることが難しいかもしれない。
MIDI対応!と聞いて期待される人は多いと思うが、この幻影都市に関して、そしてその後のマイクロキャビン作品に関しては厳しい。最初に音色ファイルを転送することから、音色を作成していると思わせる玄人っぷりに期待は高まるが…。原曲のフレーズがカットされておたり、原曲より発音数が少ないんじゃないの?と思わされる。当てている音色も似合っていない。スタッフロールに強調して「FM音源」と記載しているあたり外注ではないかと思われるが、これはこれで酷い。あと、戦闘終了後の「勝利2」の曲だけがFM音源で奏でられるのは何故だろうか。
裏技の紹介
【死んでも生き返る】
カナCAPSをロックしGRPHを押しっぱなしにしておく。
SHIFTを押しっぱなしにしていると反応しないので注意。
TRACK LIST
ラジオ収録曲(MIDI音源)
01 イリュージョンテーマ2
02 イリュージョンテーマ1
03 Home
04 老師の家
05 クライシス・エリア
06 インドア・コンバット
07 ハザード・エリア
08 シャオメイ
09 METALエリア
10 ネットワーク・イマージュ
11 レクイエム
12 危機
13 勝利
14 摩天楼
15 胎動
16 幻影城
17 街のざわめき
18 Dancing
19 VIPルーム
20 Shop
21 儀式
22 囚われて
23 Lovers
24 WATERパイプ
25 CAVERN(迷宮)
26 研究施設(月の狂気)
27 バトル
28 八部衆バトル
29 魔天王バトル
30 悪夢(DARK DREAM)
31 ファイナルバトル
32 イリュージョン・エンディング
合計時間 : 46:00
ラジオ収録曲(FM音源+SSG)
音源チップ:YAMAHA YM2203(OPN)
01 イリュージョンテーマ2
02 イリュージョンテーマ1
03 Home
04 老師の家
05 クライシス・エリア
06 インドア・コンバット
07 ハザード・エリア
08 シャオメイ
09 METALエリア
10 ネットワーク・イマージュ
11 レクイエム
12 勝利2
13 危機
14 勝利
15 摩天楼
16 胎動
17 幻影城
18 街のざわめき
19 Dancing
20 VIPルーム
21 Shop
22 儀式
23 囚われて
24 Lovers
25 WATERパイプ
26 CAVERN(迷宮)
27 研究施設(月の狂気)
28 バトル
29 八部衆バトル
30 魔天王バトル
31 悪夢(DARK DREAM)
32 ファイナルバトル
33 イリュージョン・エンディング
合計時間 : 45:47
作曲 : 新田忠弘, 福田康文, 瓜田幸治
DISCOGRAPHY
幻影都市 全曲集
発売日: 1992年4月25日
価格: 2,400円(税込)
商品番号: PSCX-1043
販売元: ポリスター
収録曲
01 イリュージョンテーマB
02 イリュージョンテーマA
03 ホーム
04 老師の家
05 クライシス・エリア
06 インドアコンバット
07 ハザードエリア
08 シャオメイ
09 メタルエリア
10 ネットワーク・イマージュ
11 レクエイム
12 勝利2
13 危機
14 勝利
15 魔天教
16 胎動
17 幻影城
18 街のざわめき
19 ダンシング
20 ヴィップルーム
21 ショップ
22 儀式
23 囚われて
24 ラヴァーズ
25 ウォーターパイプ
26 カヴァーン(迷宮)
27 月の狂気
28 バトル
29 八部衆バトル
30 魔天王バトル
31 悪夢
32 ファイナルバトル
33 エンディング
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エンディングムービー
※映像のBGMはFM音源版