サイキック・ディテクティヴシリーズ・ファイナル
ソリチュード(上巻)
対応機種 : 富士通 FM TOWNS
メディア : CD-ROM +
3.5inch 2HD (各1枚)
定価 : 12,800円 (税別)
発売日 : 1992年11月27日
販売元 : データウエスト
○ 内蔵メモリーが2MB以上必要
○ FASTモードには非対応
○ ユーザーディスクの作成にブランクディスクが1枚必要
目次
ソリチュード(上巻)for FM TOWNS
※マニュアル抜粋
『ソリチュード』(上巻)について
◆『ソリチュード(上巻)』概要
『ソリチュード(上巻)』はデータウエストが開発を行い、富士通 FM TOWNS用として1992年11月27日に発売したサイコホラーアドベンチャーゲーム。『Invitation -影からの招待状-』(1989年3月17日発売)から始まったサイキック・ディテクティヴシリーズの第6弾であり完結編の前編にあたる。
サイキック・ディテクティヴシリーズは1993年11月26日からNEC PC-9821シリーズとの半ハイブリッド対応となったdccs(Datawest Compatible CD System)として順次リメイク発売されたが、『ソリチュード』のみ発売されなかった。1995年からMacintosh(『メモリーズ』~『ナイトメア』)、1996年より DOS/V 用(メモリーズ~ナイトメア)もリメイク版は発売されたが、『ソリチュード』だけは長らくプレイ環境がFM TOWNSのみに限定された作品となり、それはWindows 95/NT4.0対応版(1998年7月8日発売)が登場するまで続いた。
◆『ソリチュード(上巻)』開発スタッフ
企画・シナリオを担当したのは藤田和男(Kazuo Fujita)。サイキック・ディテクティヴシリーズ生みの親だ。
キャラクターデザインおよびパッケージなどの水彩画は宮本佳子(Yoshiko Miyamoto)。シリーズ第3弾の『AYA』から参加している。過去にはチャンピオンソフト(アリスソフト)で『エグゼクティブへの道』のキャラクターデザイナーなどとしても活躍していた。
動画及び背景はあの京都アニメーションが作成しており、原画からセル画の着色まで行っている。
データウエストのオリジナル動画システムとして、1990年に開発されたDAPS(Datawest Active Picture System)をサイキック・ディテクティヴ・シリーズでは第3弾の『AYA』より採用を開始している。
DAPSを開発したのは山田和之(Kazuyuki Yamada)。データウエストでは数々の作品を手掛けているが、サイキック・ディテクティヴ・シリーズでは『オルゴール』と『ナイトメア』のメインプログラマーとして名を残している。
DAPSは秋田社長がFM TOWNSのグラフィックを見て発した「いごかせ!」という鶴の一声から開発開始。サイキック・ディテクティヴ・シリーズ第1弾『インビテーション』開発の傍らでDAPSの研究、開発を進め数カ月で雛形が完成。『D-Again』でアニメーションに成功したものを初搭載し、『AYA』でアニメーションさせつつ会話を流すことに成功させるなど都度発展させてきた。
『ソリチュード(上巻)』ではバージョンアップが進んでおり、前作『ナイトメア』との面積比は1.25倍の大画面(上画像参照)となり、動画は上下巻合わせて約6,000枚以上(3DCG部を含めると約10,000枚)用意された。(ただ、スタッフロールに山田和之の名前はなかった。)
◆ゲームシステムにPICA-αを採用
ゲームシステムとして、1992年9月18日に発売された同社の『ミス・ディテクティヴ ファイル#1 石見銀山殺人事件』から採用された「PICA」をバージョンアップさせた「PICA-α(ぴかアルファ)」を採用。「話す」や「見る」といった、アドベンチャーゲームに欠かせなかったコマンドを廃止することに挑戦している。加えて各ウインドウ(ビジュアルウインドウ、アイテムウインドウ、キャラクターウインドウ)の画像をクリックすることでゲームを進めることが可能となった。
◆CD-ROMの凄さ可能性を見せた一作
私が最初にFM-TOWNSの登場に衝撃を受け、冷めるまで非常に早かった。ローンチタイトルであった『アフターバーナー』の実際の出来映えに落胆して以来FM-TOWNSに興味を持つことはほとんど無かったのだ。
数年を経て、職場の店頭デモ機としてFM-TOWNSが導入される。最初にデモされたのが『フラクタルエンジン・デモ』と、発売の迫った『ソリチュード(上巻)』だった。これまでの数年にこのサイキック・ディテクティヴシリーズは出ていたのだが、雑誌媒体で見る限り凄さもわからずほとんどノーチェックだったのでその衝撃は大きかった。
家庭用ゲーム機で数回見たことがあるレベルのPCエンジンCD-ROM2で得た偏った常識ならキャラクターの声はCD-DA(44.1kHz)の生音声データで喋らせる。悪くはないがアニメのタイミングは音声に縛られる上に、容量はかなり取られてしまうのでそういう点では容量の限界が見えていた。なにより、FM TOWNSの『アフターバーナー』で思い知ったが音声を再生しながらデータは読み込めない。そして、単なる垂れ流しは凄さもなく魅力を感じなかったのだ。
しかし、だ。『ソリチュード(上巻)』ではサンプリングデータ(PCM音源)で喋らせているおかげで、CDからの読み込みを並行して行うことが可能になっていた。また、巧みに左右にキャラクターの台詞の音声を振り分けていたり、効果音もわざとらしい感じでなんというか手作り感がひしひしと伝わってきたのだ。
そして癖のある男性陣の演技も魅力に感じたの1つ。当時マイブームとして『ソリチュード(上巻)』の発音モノマネをしていた。未だに空で台詞が言えるのだ。(今思えば、演出として制作側より指示されていたのではないかと思う。)
◆美しいグラフィックも魅力の一つ
グラフィックの美しさも凄かった。ジャギーの目立たない高解像度で展開される画面、テレビアニメと遜色ない違和感ない色使い、展開されるアニメーションも凄かった。どれを取っても他のパソコンとは一線を画した出来映え。当時はあまり有名ではなかったと思うが 京都アニメーション が関わっていた。ただ、アニメ会社が関わっても塗りにあたる再現性は制作側にかかっており、この点は非常に優れていたと思う。
こんな店頭デモを見せられたまさにこのタイミングでFM TOWNSⅡCXの新古品のフルセットが入荷。12万円で購入したのは未だに忘れられない。これらが進化したDAPSの凄さだった。まざまざと目の当たりにして、完全に虜になってしまったのだ。
ソリチュード(上巻)は発売日に即購入。しかし、このゲームは上・下巻に分かれており、本当に中途半端な状態で終了する。当時、『ソリチュード(下巻)』が出るまでの間にシリーズ第5弾『ナイトメア』、第4弾『オルゴール』と逆の順番に順次購入しプレイしより深くへダイブしていったのだった。(のめり込みすぎ)
◆よくある動画では伝わらない数々の仕掛け
ゲームのジャンルはアドベンチャーゲームだ。ただし、前述の「PICA-α」で述べたとおり、コマンドは存在しない。マウスの左クリックのみで進めることが可能だ。基本的に中央の「ビジュアルウインドウ」と画面右の「キャラクターウインドウ」の登場人物をクリックしていれば会話が行われ話は進む。
「DAPリプレイ」ではバッサリカットされる移動探索シーンがこの作品で最もアドベンチャーゲームらしい部分でプレイヤーを唯一足踏みさせる部分だ。移動先を指定し、その先々でフラグ立てを行う。やや謎解きらしいポイントは存在するものの、ほとんどのフラグ立てが総当りに近い点と、CD-ROM ならではの読み込みの遅さがプレイしていて疲れる部分でもあった。
時代を感じさせるのは、移動シーンを含めレイトレーシングで作成したものをアニメーションさせる部分。移動以外にも何か作業を行う行為にはアニメーションが用意されている。ビールを頼むとビールの絵がグルグル回る画面が出たりとか、本を調べると、本のページをめくるアニメーションが出たりする。通常のアニメ調な絵から、いきなりレイトレ画面に移るので違和感を覚える。
そして、これらに関してもやはりCD-ROMからのロード時間が割と長い。プレイ中はこれが非常にストレスだった。新しい機材や技術を間違った方向で使ってしまった悪い例だろう。
これらのオブジェクトはシリコングラフィックス(SGI)社のグラフィックワークステーション、IRIS Indigoシリーズの最上位機種Elanで描かれている。
◆DAPSリプレイでしか見られない映像も
「DAPSリプレイ」というモードがこれまた凄まじかった。『オルゴール』から採用されたもので、ゲームを最後まで終わらせると、タイトル画面のメニューに出現する。プレイしたアニメーション部分を繋ぎ合わせて、ビデオ作品として見ることができるのだ。
ゲーム中は降矢木(プレイヤー)視点のみで進行する。しかし、『ソリチュード(上巻)』のDAPSリプレイで再生されるのは半分近くがゲーム中に登場しない裏側で起こったシーン。真行寺やローズからの視点が随所に盛り込まれている。これにより物語はより深くなり濃密になった。
DAPSリプレイの再生総時間は1時間20分近くにも及ぶ。たった1枚のCDにこれだけの量を入れ、おまけにCD-DAで音楽のアレンジバージョンを5曲入れる余裕を見せるのだから、その技術にも圧倒される。(CD-DAを除いたデータ量は230MB)
◆世界観とドラマ観を見事に現した名曲の数々
『ソリチュード(上巻)』のBGMを担当したのは斉藤康仁(Yasuhito Saito, 1967-03-15-2024-07-18)。データウエストでは広報も同時に担当されていた。『ライザンバー』シリーズや『第4のユニット』シリーズなど、この時期にデータウエストの作曲を数多く手がけた方だ。(過去にはデービーソフトの『ヴォルガードⅡ』や『うっでいぽこ』など手掛けている)最近では歴史に埋もれてしまった感が強いものの、当時はシリーズを通して評価は高かったように思う。私も高く評価をした一人だった。
斉藤康仁が用意した楽曲には1曲毎にドラマがある。特にこのサイキック・ディテクティヴシリーズに関してはドラマ色が濃いゲームの為、それっぽい曲が多く、世界観を映し出す哀愁漂う曲もまた多い。残念なのはゲーム中に流れるBGMよりCD-DAで奏でられるアレンジでより真価が発揮される点だろう。
効果音を含めて音楽データへの落とし込みは『ソリチュード』から進藤敦史(Atsushi Shindo)が行っている。BGMにはFM音源6ch+PCM音源6chの計12chを使用。PCM音源の残り2chは音声用に1ch効果音に1chで割り振られている。PCMの利用方法で特徴的なのはコーラスが多用されていることだ。聞こえにくい曲もあるが、半数以上の曲に使用されている。
http://31103.ldblog.jp/archives/52007748.html
https://www.kogado.com/sw/male/news/20240719/
FM音源+PCM音源のデータも悪くないのだがCD-DAで収録されているアレンジを聞いてしまうとやはり全てを伝えきれないと感じた。それでも、例えばアレンジ収録されていない「Solitude 8」は3DCGで作成されたマップを走り抜ける雰囲気が素晴らしく出ていて聞いてすぐ気に入ってしまった。(DAPSリプレイでは流れないので店頭デモを見た人か、実際にプレイした人でないと理解しづらいか。)
エンディングBGMだけは、サイキック・ディテクティヴシリーズ第4弾の『オルゴール』以降、全てCD-DAで流れるようになったためFM音源+PCM音源で曲は作成されなくなった。『ソリチュード(上巻)』のエンディングで流れるのは 森崎利絵香の生まれ故郷の地で流れる曲のアレンジである。
曲名には数字が連続で割り振られている事が多い。その中で、収録した音楽データに「Solitude 7」は存在しない。ゲームにも収録されていない。
『ソリチュード』には『ナイトメア』を中心とする過去作品の曲が数多く使用されている。しかし、それらは『ソリチュード』として収録しないこととした。これらに関しては、各々の作品で収録しているので聴いて欲しい。
プロローグ
「真行寺彩は生きています。あなたの助けが必要だ」
降矢木の病室を訪れた男は静かに告げた。驚愕する降矢木。かつての恋人真行寺彩は、降矢木が彼女のこころを治療中、事故で他界した……
アナリストは自分の愛する人間にダイブしてはいけないというタブーを破った報いが、彩の死だった。だが、男は彩の生存を告げ、しかも彼女のこころに再度ダイブするよう強要する。しかし、降矢木は蘭香芳を無意識界から助ける為に、サイキック能力を喪失していたのだった。
果たして彩は生きているのか?またローズマリーという新しい肉体を手に入れた蘭香芳の運命は?梨絵香出生の秘密とは?!全ての謎と真実が、今明らかにされる!
登場人物紹介
設定資料
キャラクターデザインは 宮本佳子(みやもとよしこ)。サイキック・ディテクティヴシリーズでは第3弾の『AYA』より参加。データウエスト在籍前は チャンピオンソフト(アリスソフトの前身)に在籍。同じくキャラクターデザインを担当していた。
操作方法
①
②
③
④
① ビジュアルウインドウ
基本的な映像が表示される。映像内にある様々なオブジェクトをマウスでクリックする事により物語が進行していく。
視覚的な情報や選択の結果がここに集約される。
② アイテムウインドウ
このウインドウには現在持っているアイテムなどが表示される。
このウインドウは通常閉じているが、ビジュアルウインドウ左側の枠内をクリックする事によりオープンできる。
ウインドウを閉じるには、EXITをクリックする。
③ キャラクターウインドウ
現在ビジュアルウインドウに登場していない人物のアイコンが表示される。
このウインドウも通常閉じているが、ビジュアルウインドウの右側の枠内をクリックすることによって開く。
ウインドウを閉じるには、EXITをクリックする。尚、アイテムウインドウとキャラクターウインドウは同時に開くことはできない。
④ メッセージウインドウ
必要に応じて文章がこの場所に表示される。
PSYCHIC DETECTIVE ARRANGEの館
2003年10月~2004年の間にXVさんが作成されたページ。記憶では機材にRoland XV-5050のみで演奏。オフィシャルのアレンジとしても違和感のないアレンジの押さえ方が秀逸。
当時一部ファンの間でもかなり話題になり、掲示板には斉藤康仁も登場、高い評価を得ていた。『ソリチュード(上巻)』からは4曲アレンジされているが、2曲(Solitude 2、Strike Zone)は行方不明。マニアックだが最初の公表時"Arrange"を"Arrenge"と記載していた。その初期版とその文章を掲載しておこうと思う。
■ソリチュード上巻 「Solitude 1」
ディストーションギターのソロが映える力強い曲です。
ディストーションはかなり深めに設定しており、ややハウリング気味な音色がグリッサンド奏法と組み合わさり、緊迫した雰囲気を醸し出します。
ちなみにギターの打ち込みはかなり辛かったです、ハイ。
■ソリチュード上巻 「MOON」
原曲はテノールサックスの哀愁漂うメロディーが非常に印象的な曲です。
今回のアレンジでは、原曲でサックスが演奏上苦しげな音域になっているので、キーを2度下げてあります。そのため、原曲と比べてより一層哀愁漂う雰囲気になりました。
(より陰気になったとも言う)
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+PCM音源)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2612(OPN2)+RICHO RF5C68
01 Solitude 1
02 Solitude 2
03 Psychic Detective
04 Solitude 4
05 Solitude 5
06 RIECA
07 Solitude 8
08 Solitude 9
09 Solitude 10
10 MOON
11 Solitude 12
12 Solitude 13
13 Solitude 14
14 Solitude 15 (unused)
15 Invitation (Version "J")
16 Strike Zone
合計時間 : 18:10
作曲者 : 斉藤康仁
編曲者 : 進藤敦史
DISCOGRAPHY
サイキック・ディテクティブ・シリーズ・ザ・ベスト
発売日: 1991年12月18日
価格: 2,500円(税込)
商品番号: TOCT-6381
販売元: 東芝EMI
収録曲
01 PHOTOGRAPH <CLUB MIX>
02 AUTUMN <CLUB MIX>
03 OPPOSITE LOVE <CLUB MIX>
04 JAPANESQUE #3
05 IGNITER
06 D.N.A. (ReMIX)
07 JAPANESQUE #1 (ReMIX)
08 FEEL TIRED (ReMIX)
09 ROSE MARY
10 SAND STORM
11 A FEAR (ReMIX)
12 SHADOW
13 ALONE
14 INVITATION
15 YOU-ME
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映像はWindows95への移植版。
BGMの使用シーンやスタッフロールが異なる。
エンディングムービー
■エンディングムービー