たった一つ真実を伝える伝説がある。
サークⅡ ⎯ Rising of The Redmoon ⎯
対応機種 : SHARP X68000シリーズ
メディア : 5inch 2HD (2枚)
定価 : 6,800円 (税込)
発売日 : 1992年8月29日(発売予定8月中旬から延期)
オリジナル販売元 : マイクロキャビン
開発・販売元 : ブラザー工業タケル事務局
GALLERY
プロローグ
1.闇の力
暗い闇の宮殿の中。ここは、その最も奥に位置する広間。その中央には、巨大な玉座にその巨体をゆだねる、何者かの姿があった。天井から差し込むわずかな光が、その不気味なシルエットを浮かび上がらせている。身の丈は常人の数倍はあろうか。しかし、その巨体にも関わらず、部屋には、その者の息遣いさえ聞こえず、しんと静まり返っている。
ふいにその玉座の前には別な影が現れる。影は三つ。それは、音一つ立てずに静かに床に伏している。
さらに間もなく、三つの影の前に、こつぜんともう一つ影が現れる。その影は差し込む光の元に少し歩み出ると、その場に静かに伏した。その姿は先の者の巨体とは比べるまでもなく小さく、すっぽりと黒いマントに身を包み、巨体の足元にひざまづいていた。
「手筈は整いましてございます」
黒マントは、静寂の中にりんとした声を響かせた。しかし、先の巨体はなんの反応も示さない。
「されど、一つ問題が……」
黒マントが言いよどむと、玉座のひじかけに置かれた、巨体の左腕のその指の一本が、ぴくりと動く。黒マントは、ためらうが、意を決し言葉を続ける。
「町の中に、あの "白き玉" がございます」
今度は巨体に動きはない。黒マントも静かに身を伏せたまま、指示を待っている。やがて巨体の顔と思われるところに赤い口らしきものが開き、くぐもった不気味な声が、静寂を破る。
「間もなく赤き月が昇る。"地"よ、"黒き玉"は?」
「我が手の中に」
闇の中に伏した影の一つから、低い、どこか "いびつな" 声がそれに答えた。
不気味な声がなおも続く。
「"氷"よ、"蒼き石"は?」
「ははっ、おおせの通りに」
"氷"と呼ばれた者の声は、その名の通り冷たい響きを含んでいた。
「……"風"は?」
「背後の陣にて、指示をお待ちいたしております」
最後に控えた"風"と呼ばれる者の、静かな自信に満ちた返答が聞こえると、再び闇の中に赤い口らしきものがうごめく。それは、満足げに笑ったようにも見えた。
「まずは、"白き玉"を闇に閉ざせ」
「はっ」
巨体の指示に答える黒マントの声が、広間にこだました。それと同時に黒マントの姿も三つの影もその場から、こつぜんと消え、どこかへ去っていった。
闇の中には、巨体のシルエットだけが残っていた。
「時の必然……曲げて見せようぞ」
ぼそりと不気味な声が、赤い口から漏れ出た。しかし、それきりで、再び広間は静寂に包まれる。やがて、天井から差し込む光もかげり、巨体は無限の闇にのまれる。
その闇は、そのまま世界のすべてをのみこんでしまうかのように、不気味な威圧感を放っていた。
2.旅立ち
大陸の西半分を占める大国ウェービス。その北には多くの山がそびえ、山脈を形成し、極北の永久氷壁と広大なボーレスト平原とを隔てていた。フェアレスの町は、その山のひとつ、トレア山のふもとにある小さな町だった。この町は、交易路に位置するわけでもなく、ほとんど自給自足で生活を営んでおり、訪れる旅人も少なく、宿も一軒しかないような、それは小さな町だった。だが、その周囲は高い硬固な壁が物々しく囲っており、さながら城塞都市のような景観を呈していた。戦乱がこの地を覆ったことはかつてなく、それほどの壁を設けなければならぬような理由は、ないはずであった。ただ一度、このウェービスの地を揺るがした三年前のバドゥー襲来を除いては……。
「母さーん!」
フェアレスの町の、まだ人影もまばらな朝の通りを、一人の青年がかけていく。道行く人は、皆けげんな顔で、かけ抜ける青年を振り返る。
「よう!こんな早くに……」
声をっけようとする者もいたが、青年がまったく気に止めず走り去ってしまったので、言葉を最後まで続けることができなかった。
「まったく、相変わらずだよな。ラトクのやつ」
声をかけた男は微笑みながら、そうつぶやき、走り去る青年の後ろ姿を見送った。
青年の名はラトク・カート。もう19歳になる。彼が3年前に世界を救った英雄であることなど、今の彼からは想像もできない。もちろんその剣の腕はウェービスでも一二を争うほどであり、3年の間に様々な冒険を重ね、その武勇伝を話しだしたら、きりがないほどなのだが……。
「母さーん!オレ、旅に出るよ!」
「なんだい、なんだい、騒々しいね。本当にお前って子は……。今度はどうしたんだい?東の悪竜退治かい?それとも、南の盗賊団の噂かい?」
ラトクが駆け込んだのは、町のはずれにある一軒の家。ラトクが母と二人で住む、小さな家だった。母は、息を切らして駆け込んできた息子ラトクを、静かに揺り椅子に揺られ、針仕事をしながら、いつもと変わらぬ落ち着いた様子で迎えた。母は名をサリアという。4年ほど前、夫ドルク・カートが消息不明になっていらい、その目は闇に閉ざされたままであったが、さりげないラトクの優しさと彼の冒険による少なからぬ報酬に支えられ、日々の生活まで暗く沈むことはなく、穏やかに暮らしていた。
「悪竜はこのあいだ捕まえて王様に献上したし、盗賊団は首領を一騎打ちで負かしたから、もう悪事を働くこともないさ。そんなことじゃなくてさ、母さんの目を直せるかもしれないんだよ!」
「おやおや、またその話かい?」
「母さん、今度は確かだって!」
「もう、あきらめているよ。この目のことは……」
「ラトクの言うことは本当ですわ。おばさま」
ラトクの懐から、手ひらに乗るような、それはそれは小さな少女が、ちょこんと顔を出し、話に割り込んだ。
「おや、その声はピクシーじゃないの?」
「ごぶさらしてます。おばさま」
サリアはその小さな少女が来ていることを知ると、満面に笑みをたたえ、ここへおいでと手を差しのべた。ラトクは懐からそっと少女を出して、サリアの手の前に差し出した。
「おや、どうしたんだい!?羽がなくなっているじゃないか」
サリアは、少女に優しく触れると驚いたように声を上げた。
「ご心配なさらないで、おばさま。このところ少し精神力が不安定で、長い時間は羽を出していられないんです。私たちの種族には、成長の段階で何度かこういうことがあるんですよ」
「さっきオレの手に乗ったとたん、うずくまって動かなくなったのには正直驚いたよ。また、なんか変なものでも拾って食ったんじゃないかってさ」
「なによ!あたしそんなに意地汚くないわよ!」
「なに言ってんだよ。このあいだ来たときに花の種を食い過ぎて飛べないって、騒いでたくせに」
「あーん、おばさまぁ」
調子に乗って騒ぎたてるラトクに、ピクシーはサリアに泣き付くという切り札を使った。
「なんです、ラトク!レディに対してはもっと優しくなりなさいといつも言っているでしょう!ピクシーにお謝りなさい!」
ピクシーはサリアの手の中からラトクをのぞき、あっかんべーをしている。涙の後は露ほども見えない。それを見たラトクは、サリアには見えないだろうと手を振り回して、『ひ・き・ょ・う・も・の』と声を出さずに口だけを動かし、ピクシーに講義のそぶりを見せた。
「これ、ラトク!」
「はい、母上。申し訳ありませんでした、ミス・ピクシー」
まるでその様子が見えていたかのようにサリアがきつくたしなめると、不満気ではあったが、しかたがないとばかりに丁寧な言葉で謝るラトクであった。だが、その光景には少しもとげとげした様子はなく、むしろ微笑ましい印象さえある。
これが、あの勇者ラトクの日常であった。その武勇伝の数々は、遠くウェービスの辺境の地にも聞こえていたが、このラトクの姿を見て、噂の張本人だと信じろという方が無理があるかもしれない。バドゥーを倒し、王にナイトの称号を賜った勇者と聞けば、屈強な大男を想像するほうが自然だろう。常人と少しも変わらぬ体型で、まったく偉ぶる様子のない、どこにでもいる戦士志願の青年といった感じのこの青年が、世界を救った勇者だなどと誰が信じようか。実際流れていく噂には尾ひれが付き、またそれを利用した偽物も横行しているのが現実なのである。まあ当の本人はそんなことも気に止めず、相変わらずの日々をこうして送っているわけであったが…。
3.運命の戦士
「ねえ、ラトク。本当のこと、言わなくて良かったの?」
足早に街道を歩くラトクの懐からピクシーが顔を出し、ラトクの顔を見上げて心配そうにそう聞いた。もう、かなり町から離れたのだろう。木々もまばらで殺風景な道には、旅人の姿も見えない。
「うそをついたわけじゃないさ。父さんのことは言わないほうが、母さんを心配させなくて済むだろう」
「そうね、あたしが聞いた話もラトクのお父さんらしい人を見たっていうだけだものね」
「でも、その人の話によれば、かなり父さんの特徴に近いし、その永久氷壁に近い港町バヌワに行けば、めの病によく効く薬が手に入るのは、たしかなんだから、行ってみる価値はあるさ」
「うん」
母サリアに旅に出ることを告げたラトクは、手早く旅支度を整え、すぐに町を出たのだった。もう、日も高い。日差しは穏やかであったが、空には不気味な雲が広がりつつあった。まるで、これからの彼らの旅の行く末を暗示するかのように……。
時は聖暦756年。平和な日々を送っていたウェービスの地に、今再び嵐が起きようとしていた。そして今、旅立った一人の青年は、かつてない戦いの場に挑み、その嵐を鎮めなければならない運命を背負っていたのだが……。青年は、まだ何も知らない。
登場人物
ラトク・カート 19才 男
主人公、フェアレスの町に住む戦士、剣士ドルク・カートの息子
明朗快活で、剣の腕はウェービスでも指折りの「達人」(?)。およそ250年の昔、バドゥーを永久氷壁に封印した"戦神デュエル" の血を引く勇者として、3年前に再び復活したバドゥーを倒した。
バスパ・ドムラエ 56才 男
バヌワの町のアル中毒医者。
きまぐれなアルコール中毒医者。しかし、腕は確かなようで、知識も豊富。若いころ、先のウェービス国王 "サリアス" の元で働いていたこともあるらしい。
セスト・アリーナ 50才 男
バヌワの町の町長。
バヌワの町は、このセストの祖父バヌワ・アリーナが仲間と共に開いた町である。とはいえ、町長は世襲ではないので、彼自身の町の人々の信頼は厚く、顔に似合わず、温厚な知性派で必ずしも争いを好まない人物である。
結晶の谷の採取物(結晶石、薬草など)の商いをまとめる商人でもある。
ピクシー ? 女?
ラトクの旅のガイド。
妖精界オーシャニティから、サーク界に修行(?)に来ている妖精族。明るくて、カンがいい。「やきもちやき」なところもある。
3年前にウェービス王の命を受け、戦神デュエルの末裔ドルクを捜しにフェアレスを訪れ、ラトクに出会う。バドゥー復活の最終段階で、ネクロマンサーによって連れ去られ、バドゥーに操られるが、ラトクによって救けられた。
シャナ・タウトゥーク 18才 女
"ボローズの森"の女狩人
負けず嫌いではあるが、実はさびしがりやな女の子。
生まれたときに一族もろとも両親を失い、祖母ゼミテルによって育てられる。
ジーク・ボルドー 43才 男
バヌワの町の武器屋(鍛冶屋)。
陽気で豪快な肉体派。しかし、昔の話はあまりしたがらない。昔は王に仕える剣士であったらしいが、何等かの理由で剣を捨てて、鍛冶師の道を選んだという。
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+ADPCM)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2151(OPM)+ OKI OKI MSM6258
01 繁栄
02 暗雲
03 メインタイトル
04 現在
05 ボローズの森
06 タウトゥーク・森の民
07 バヌアの町
08 酒場の酔っ払い
09 放浪の吟遊詩人
10 聖なる教え
11 町人(その1)
12 町人(その2)
13 AI・YU・E・NI
14 再会・親しき友よ
15 天空の橋
16 森の洞窟
17 激闘!四天王
18 眠り姫ミューン
19 TA・KA・MI・NI・TE
20 鉱夫ベルナンドの苦悩
21 結晶採掘場
22 あやしき輝き
23 カウリャンの城
24 水路を行く
25 トラップ
26 ゲームオーバー
27 参上!レイ
28 港にて
29 船出
30 襲撃!
31 デスマウンテン漂着
32 封印の地
33 赤き月満ちるとき
34 飛翔
35 ただ一人最終決戦!
36 対峙!将軍ゴスペル
37 妖魔対決
38 最後の死闘
39 静かなる勝利
40 再会・同士たち!
41 エンディング1
42 フレイとピクシー
43 エンディング2
合計時間 : 72:26
作曲者 : 新田忠弘, 笹井隆司
DISCOGRAPHY
サークⅡ&フレイ
発売日: 1991年5月25日
価格: 2,400円(税抜)
商品番号: PSCX-1023
販売元: ポリスター
収録曲
〈アレンジ・バージョン〉
01 メインタイトル
02 ボローズの森
〈サークⅡ・オリジナル・バージョン〉
03 繁栄
04 暗雲
05 メインタイトル
06 現在
07 ボローズの森
08 タウトゥーク・森の民
09 バヌワの町
10 酒場の酔っ払い
11 放浪の吟遊詩人
12 聖なる故え
13 町人
14 町人
15 AI・YU・E・NI
16 再会・親しき友よ
17 天空の橋
18 森の洞窟
19 激闘!四天王
20 眠り姫ミューン
21 TA・KA・MI・NI・TE
22 鉱夫ベルナンドの苦悩
23 結晶採掘場
24 あやしき輝き
25 カウリャンの城
26 水路を行く
27 トラップ
28 ゲームオーバー
29 参上!レイ
30 港にて
31 船出
32 襲撃!
33 テスマウンテンの漂着
34 封印の地
35 赤き月満ちるとき
36 飛翔
37 ただ一人最終決戦!
38 対峙!将軍ゴスペル
39 妖魔対決
40 最後の死闘
41 静かなる勝利
42 再会・同士たち!
43 エンディング1
44 フレイとピクシー
45 エンディング2
〈フレイ・オリジナル・バージョン〉
46 Running Fray
47 フレイのマーチ
48 ドミソGO!
49 ク・オルのワルツ
50 サーフィンGO GO!
51 バルアの祝宴