コラム:FM TOWNS版アフターバーナーの開発顛末記とX68000ユーザーに誤解されやすい問題
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アフターバーナー
●対応機種 : 富士通 FM TOWNS ●メディア : CD-ROM ●定価 : 9,800円 (税別) ●発売日 : 1989年3月中旬
●オリジナル発売元 : セガ ●販売 : CSK総合研究所
◆FM TOWNS版『アフターバーナー』、誕生の経緯
パソコン版の『アフターバーナー』を語るには富士通 FM TOWNS版に触れないわけにはいかないだろう。FM TOWNSはハイパーメディアパソコンと銘打ちCD-ROMドライブを標準搭載した32bitパソコン。そのローンチタイトルとして1989年2月28日にFM TOWNS版の『アフターバーナー』(内容はⅡ)がCSK総合研究所から華々しくデビュー(製品の内部バージョンは1.01)。その販売本数は10,000本を超えたという。注意すべき点はFM TOWNSの発表された2月28日が発売日ではないことだ(FM TOWNSの出荷時期は3月中旬とプレリリースに記載されている)。そのため『アフターバーナー』の発売も同時期の3月中旬と考えられる。重要な情報としてテクノポリスに「TOWNSのソフトは3月17日以降に発売されているので」と記載があることに注目したい。この情報からローンチタイトルである『アフターバーナー』の発売日は3月17日が濃厚と考えている。
(別の号では「TOWNS本体発売とほぼ同時にこれら3Dシューティング3本と推理AVG1本が発売されました」とも記載されている。「ほぼ同時」という言葉がひっかかるが…)
FM TOWNS版の『アフターバーナー』はたった4名で開発されている。当時まだ入社2年目であった鯨井亨(Toru Kujirai)と同期の社員が1名、そして新人2名だ。鯨井亨はプランナーとしてまとめ役でありながら、敵キャラクターのドット打ち、BGM収録の立会いや、イベントスタッフまでこなしている。
プログラムは石田之博*1(Yukihiro Ishida)が担当。新人の1人だ。1988年3月に九州芸術工科大学を卒業後、1988年4月にCSK総合研究所へ入社している。入社後は、東京研究所AI環境部のAI言語課ゲーム・チームに配属。FM TOWNSと並行開発でありながら1年にも満たない期間で『アフターバーナー』を完成させている。新卒入社早々に大役を任され、本体発表日までの短期間でこれだけの仕事を行わなければならなかったことは察するに余りある。
※1 石田之博の漢字はfacebookに投稿されている新年の挨拶などから参照できる。
https://www.facebook.com/yukihiri
https://www.proz.com/profile/1326554 CV/Resumeに添付のPDFを参照
https://www.linkedin.com/in/yukihiro-ishida-65695024/
※2 情報提供 ichi1 @ichi12345678 さん ・
◆当時の期待と、実際に触れてみた感想
当時、画面写真を雑誌で見た限りはほぼ理想の出来栄えでかなり期待した。期待しないほうがおかしいだろう。
アーケード版そのままに見えるカッコいい自機、描かれた地形、ミサイルの煙。数々の自然画。紹介記事を読んでFM TOWNSとCD-ROMという大容量がなす技に震撼した。『アフターバーナー』に恋焦がれている一人のプレイヤーとしてはこの一作だけでFM TOWNSを購入する動機として充分であり真剣に検討した。雑誌の記事を読んで本当にドキドキしたあの体験は、過去の人生を振り返ってもあの時くらいだったかもしれない。
engadget日本語版(Webアーカイブ)大阪の日本橋(恵美須町)にあるでんでんタウンへ出向くと、『アフターバーナー』は大抵のパソコンショップで試遊できる展示がされていた。そして、そんなパソコンショップでは『アフターバーナー』が最もプッシュされていた(逆にこれくらいしか派手なソフトは無かった)。これは富士通の意向でもあったようだ。イベントでもFM TOWNSは『アフターバーナー』で一点突破を狙ったという話が当時富士通の広報であった秋山岳久(Takehisa Akiyama)により残されている。
実際に自分の目で製品を見てプレイした時は別の意味で驚いた。動きは想像すらしなかったガクガクした動きだった。そして、数ステージ毎にデーターをロード(例外としてステージ1~2は発生)するので数秒の待ち時間があるうえ、その間はゲームもBGMが途切れる。ロードが終わったらBGMは最初からの演奏し直しだわで過剰な期待に対してがっかりする出来だった。音楽もアレンジ版がCD-DAで流れるというもので求めていたものと違った。
もし、FM TOWNS版『アフターバーナー』が完璧に近い出来栄えであったならX68000は早くに終焉を迎えていたかもしれない。
◆X68000ユーザーに誤解されがちな「動き」の本質
X68000ユーザーが『アフターバーナー』を比較する際に、「FM TOWNS版はグラフィックを強化したためにゲーム性が犠牲になった」と評価する人が多い。しかし、これは大きな誤解だ。画面の書き換えがバタバタしているのは事実だ。しかし、実は動作スピードに関しては問題ではない。
デモ画面を含め自機の動きとそれに連動する地上の描画がワチャワチャしているように見えるのには理由がある。
致命的な欠点は移動範囲のおかしさにある。円を描く動きができないのだ。これがゲーム性を大きく損ねている点だ。
まず真横の移動ができない(横を押しても斜め上に移動していく)。加えて左下、右下に移動できない(これも斜め上に移動していく)、真上の頂点が左右の角下より「大幅に」下がる。こうなるとプレイヤーは意図した位置にサイトを合わせることができない。そのため上下左右に操作をしようと試みるが、それもなかなかうまくいかない(ゲームとしての観点でオリジナルと比較すると破綻している)。そして、ありえないことに左右の位置が対象ではないことも付け加えておく。
◆CD-DAのBGMは本当に「失敗」だったのか
また、CD-DAによる生演奏に関する苦言もよく見る意見の一つだ。
オリジナルの音源が欲しいという意見は非常によく分かる。しかし、FM TOWNSのデビューで世間に対し華やかに演出するにはCD-ROMをアピールする「生演奏」、というのは結果として良かったのだろう。FM TOWNSの発表会会場で『アフターバーナー』が登場した時の映像を見てほしい。生演奏だからこそ体感できる迫力、ライブ感が理解できる。そして、自機がV字型にしか動いていないという欠陥もこの短い動画で分かるだろう。
◆知られざる開発の裏側
最後に、FM TOWNS版を揶揄することの多いX68000ユーザーには、この開発の裏側を知ってほしい。
まず開発資料が筐体の以外資料がほぼ何も無いという状況での開発、この一言に尽きるとのこと。そして、たった4人(しかも内2人は新人)という少人数での開発体制。
FM TOWNS発売まで1年を切った1988年の初夏(5月頃?)になって、やっとスプライト機能を搭載した開発機が到着。ここがスタートラインだ。
夏頃になってFM/PCM音源搭載の開発機が到着。内蔵音源で演奏するデータの問題やサウンドドライバの開発を諦めた上でCD-DAしかない、という判断に(当時はストリーム再生という技術はない)。BGM/SEの仕様が固まり、秋に生演奏収録。だが、最終仕様の開発機は届かないまま冬がやって来る。
年が明け、1989年。
FM TOWNS発売まで残り2か月。デバッグも終わるかという時期になってやっと最終仕様開発機が到着。ところが動作させてみると動きが超スローになるという緊急事態が発生。
バグなどを疑い調査するも原因は不明。ダメモトで富士通に問い合わせて初めて知らされる「メモリスピード(性能)を落とす仕様変更をしました」。
その後、マスターアップデッドエンドまでその対応の作業に追われたという。
FM TOWNS最初の展開を大きく左右するソフトであったためよくある開発延期など許されないことは想像に難くない。聞くも涙語るも涙の物語だ。
※3 情報提供 ichi1 @ichi12345678 さん
X68000版『アフターバーナー』に関してはこちらのページに纏めているので、ご興味のある方はどうぞ!
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