SEGA オリジナル・ゲーム・シリーズ
アフターバーナー
対応機種 : SHARP X68000シリーズ
メディア : 5inch 2HD (2枚)
定価 : 9,200円 (税別)
発売日 : 1989年4月26日
オリジナル発売元 : セガ
開発 : マイコンソフト
販売元 : 電波新聞社
○ステレオ対応
○インテリジェント・コントローラー対応
○マウス操作仕様
○アタリ仕様ジョイスティック使用不可
○オリジナルマウスマット付属
目次
アフターバーナー for X68000
※マニュアル抜粋
PACKAGE REPRODUCTION
ストーリー
西暦199X年、世界勢力はA国とZ国に2分され、冷戦状態が続いていた。A国の海軍にいたキミに極秘司令がくだった。その司令とは、敵国の領空を強行突破して、秘密兵器の情報ディスクを軍の秘密研究所に届けるということであった。果たしてキミは、防衛線を突破して、無事目的地へたどり着けるだろうか、幸運を祈る!
SHOOTING
DOWN
ROLLING
REFUELING
マッハを体験。迫力の3Dシューティング!!
敵機の猛攻撃をくぐり抜けるスリル。
バルカン砲と誘導ミサイルを撃ちまくる快感。
加速すればG(重力加速)を感じる高速処理。
天地が逆さになる戦闘機独自の急速旋回飛行。
ヘビーメタルで決める!!熱く、ワイドなサウン
ドがキミの心を掻き立てる。
操縦桿を操ったその時から、キミは熱い死闘へ
急速発進!!
スムーズな操縦ができる!
アフターバーナーオリジナル
マウスマット付
ません。
発売元:電波新聞社 〠141東京都品川区東五反田1-11-15電話03(445)6111
CP-3205010
標準価格9,200円
税抜き
『アフターバーナー』X68000版 について
◆『アフターバーナー』概要
『アフターバーナー』(AFTER BURNER)はセガが業務用基板として開発を行い、1987年7月18日に稼働した3D視点体感型(体感型でないものも存在する)シューティングゲーム。最初はほぼ試作状態の『アフターバーナー』(Ⅰ)だった。数か月後、スピードスロットルを装着し、音楽やステージ構成などを強化した『アフターバーナーⅡ』が登場。『アフターバーナーⅡ登場時に殆どの基板と筐体は改修されたため、一般的に『アフターバーナー』といえば『アフターバーナーⅡ』のことを指す。
地面側が回転するという発想、ミサイルの煙により視界が遮られる演出、サンプリングが使用された音楽、効果音。それまで見たゲームを根本から覆す内容だった。当時はゲームセンターに足を運ぶなんてことはあまりなかったのだが、このゲームの為に足を運ぶようになった。あげくの果てにはヘッドホン端子が用意されているのをいいことに録音まで行なった。そのくらい夢中になるゲームであった。
◆FM TOWNS版『アフターバーナー』の登場
オリジナルが登場した1987年当時の家庭用ゲーム機やパソコンでは非力すぎて『アフターバーナー』を完全に近い移植を行うことは不可能だった。とにかく元のハードが力技すぎる設計のために、家庭用ゲーム機でまともに移植できるハードが出るまではおおよそ7年を要している。
国内で最初に移植されたのは1987年12月発売のセガマークⅢ版。しかしあのリアルさは全く無かった。それでも、早期に移植されたという点ではありがたみを感じずにいられない。
X68000版を語るには同時期に出たライバル機とも称されることもある富士通 FM TOWNS版に触れないわけにはいかないだろう。FM TOWNSはハイパーメディアパソコンと銘打ちCD-ROMドライブを標準搭載した32bitパソコン。そのローンチタイトルとして1989年2月28日にFM TOWNS版の『アフターバーナー』(内容はⅡ)がCSK総合研究所から華々しくデビューする(製品の内部バージョンは1.01)。
FM TOWNS版の『アフターバーナー』はたった4名で開発されている。現在はセガで活躍されている当時入社2年目の鯨井享(Toru Kujirai)と同期の社員が1名、そして新人2名だ。鯨井享はプランナーとしてまとめ役でありながら、敵キャラクターのドット打ち、BGM収録の立会いや、イベントスタッフまでこなしている。
プログラムは石田之博*1(Yukihiro Ishida)が担当。新人の1人だ。1988年3月に九州芸術工科大学を卒業後、1988年4月にCSK総合研究所へ入社している。入社後は、東京研究所AI環境部のAI言語課ゲーム・チームに配属。FM TOWNSと並行開発でありながら1年にも満たない期間で『アフターバーナー』を完成させている。新卒入社早々に大役を任され、本体発売までの短期間でこれだけの仕事を行わなければならなかったことは察するに余りある。
※1 石田之博の漢字はfacebookに投稿されている新年の挨拶などから参照できる。
https://www.facebook.com/yukihiri
https://www.proz.com/profile/1326554 CV/Resumeに添付のPDFを参照
https://www.linkedin.com/in/yukihiro-ishida-65695024/
※2 情報提供 ichi1 @ichi12345678 さん ・
画面写真を雑誌で見た限りはほぼ理想の出来栄えでかなり期待した。期待しないほうがおかしいだろう。アーケード版そのままに見えるカッコいい自機、描かれた地形、ミサイルの煙。数々の自然画。紹介記事を読んでFM TOWNSとCD-ROMという大容量がなす技に震撼した。『アフターバーナー』に恋焦がれている一人のプレイヤーとしてはこの一作だけでFM TOWNSを購入する動機として充分であり真剣に検討した。
とにかくFM TOWNSは大阪日本橋のパソコンショップでも発売後しばらくは『アフターバーナー』が最もプッシュされており(逆にこれくらいしか派手なソフトは無かった)店頭でプレイできる状態で展示されていた。これは富士通の意向でもあったようだ。イベントでもFM TOWNSは『アフターバーナー』で一点突破を狙ったという話が当時富士通の広報であった 秋山岳久(Takehisa Akiyama)により残されている。
実際に自分の目で製品を見てプレイした時は別の意味で驚いた。動きは想像すらしなかったガクガクした動きだった。そして、数ステージ毎にデーターをロード(例外としてステージ1~2は発生)するので数秒の待ち時間があるうえ、その間はゲームもBGMが途切れる。ロードが終わったらBGMは最初からの演奏し直しだわで過剰な期待に対してがっかりする出来だった。音楽もアレンジ版がCD-DAで流れるというもので求めていたものと違った。
もし、FM TOWNS版『アフターバーナー』が完璧に近い出来栄えであったならX68000は早くに終焉を迎えていたかもしれない。
だが、揶揄を行うことの多いX68000ユーザーこそFM TOWNS版の開発には並々ならぬ苦労があったことを知っておくべきだろう。まず開発資料が筐体の資料以外ほぼ何も無かったとのこと。そして、たった4人(しかも内2人は新人)の開発体制。
開発はFM TOWNS発売まで余裕で1年を切っている初夏(5月頃?)になって、やっとスプライト機能を搭載した開発機が到着し本格スタート。夏にはFM/PCM音源搭載機の開発機が到着しBGM/SEと仕様を確定。秋に生演奏の収録。しかし、最終仕様の開発機は冬に入ってもまだ届かない。
そして、年明けになってデバッグも終わるかというときにやっと最終仕様開発機が到着(発売まで2カ月弱しかない)。早速、最終仕様開発機で動作させてみると動きが超スローになるという緊急事態が発生する。バグなどを疑い調査するも不明であり、途方に暮れダメ元で富士通に問い合わせると仕様変更(メモリスピードを落とした)があったことが判明。その後、マスターアップデッドエンドまでその対応の作業に追われたという。FM TOWNS最初の展開を大きく左右するソフトであったためよくある開発延期など許されないことは想像に難くない。聞くも涙語るも涙の物語だ。
※3 情報提供 ichi1 @ichi12345678 さん
X68000ユーザーが『アフターバーナー』を比較する際に、FM TOWNS版はグラフィックを強化したためにゲーム性が犠牲になったと評することがある。が、これは大きな誤解だ。画面の書き換えがバタバタしている感は受けるが実は動作スピードに関しては問題ではない。
致命的な欠点は移動範囲のおかしさにある。これがゲーム性を大きく損ねている点だ。まず真横の移動ができない(横を押しても斜め上に移動していく)。加えて左下、右下に移動できない(これも斜め上に移動していく)、真上の頂点が左右の上角より「大幅に」下がる。そして、ありえないことに左右の位置が対象ではない。こうなるとプレイヤーは意図した場所にサイトを合わせることができないのでゲームとしての観点でオリジナルと比較すると破綻しているのだ。
デモ画面を含め動きがワチャワチャしているように見えるのはそういった理由が主だろう。
◆X68000版『アフターバーナー』の登場
先行したFM TOWNS版よりおよそ2ケ月遅れの1989年4月26日にマイコンソフトが移植・開発を行ったSHARP X68000版が電波新聞社から登場。タイトル名は『アフターバーナー』だが内容は『アフターバーナーⅡ』だ。搭載メモリ1MBの初代・ACE・PROを含めた全機種に対応している。(当時2MB標準搭載モデルは発売したばかりのEXPERTのみだったが裏技でオンメモリに対応していた)開発期間はおよそ1年(マイコンBASICマガジン1988年6月号「幸運私真矢の大予言」参照)に及ぶ。(プチネタ:幸運=らっきー、私=あたし、真=ま、矢=や を逆に読むと山下章)
移植を担当したプログラマーは 松島徹(Tetsu Matsushima)。X68000では同社の『スペースハリアー』の移植にもメインプログラマーとして担当した。開発の難航と疲れからか、開発中に趣味で作ったとされている『ボスコニアン』を発売している。
X68000版『アフターバーナー』の開発コンセプトは「すひ゜ーと゛か゛はやい。 かっこいい。 みさいる みた゛れうち。ろーりんく゛ く゛りく゛り。 あふたーは゛ーなー まっは3。て゛っかい くうほ゛。 けむりか゛ と゛は゛ぁ!」
特徴的なのは操作方法だ。自機の移動にはアナログ操作を可能としたマウスを使用する。一般的なアタリ仕様ジョイスティックは対応していない。キーボード操作もだ。(ただし、スピードスロットルの操作や一時停止などはキーボードで行う。)
周辺機器として『アフターバーナー』のために開発された アナログジョイスティック(インテリジェントコントローラー)に対応していた。6月発売(5月末の情報もあり)ではあったにも関わらずパソコンサンデーではあたかも『アフターバーナー』と同時発売のようにお目見えし紹介されている。(製品版との見分け方はボタン手前の「CYBER STICK」のグリーンでプリントされたロゴの有無。雑誌紹介でも発売前はロゴ無しを見ることができる。)
◆期待とは違った出来栄え
このX68000版。ゲームとしては頑張っているものの見た目はオリジナルとかけ離れていた。地上の背景パターンが殆ど無いのは仕方が無いとして、あらゆる視覚的な部分で大きく見劣っていた。特に自機の描画まで変えてしまった(上画像参照)のは意味が分からなかった。あらゆるバランスを取りながらの移植なんだろうけども、FM TOWNS版を見てしまうと、何かもう少し…もう一歩近づけなかったのか?と思ったのも事実だった。
現在ならこれ以上のデキはX68000の性能では難しかったことくらい想像に難くない。しかし、1989年当時に多くのプレイヤーがX68000でどこまで『アフターバーナー』を再現できるかなどそうそう分かるはずもない。
「マイコンBASICマガジン」上でさえ一部画面が初公開された際に「完璧に近い状態で移植されると思われます」という記事が掲載された。しかもこの記事のライターはあのX68000版『ドラゴンスピリット』のBGM移植を担当した川野俊充(Toshimitsu Kawano)であり、現場側でも当時はどこまで再現できるのか未知数だったことが読み解ける。今で言うハードルを上げるという行為に一介のプレイヤーである私は大いに期待した。凄いものが登場するぞ!とワクワクした。その期待が大きすぎたため落差にガッカリしたのだ。
それでも自宅で楽しめるということは、『アフターバーナー』に恋い焦がれた身として非常に嬉しい出来事であったことは間違いないということは記載しておこう。
◆X68000版の大きな問題点
しかし、ゲームとして問題に思える点もあった。それは、コンティニュー回数が無制限のため誰でも初回プレイでクリアできることだ。これはオリジナルの設定であるのだが、ハイスコアやヒット数に拘りのない私はあっという間に飽きてしまった。
ミスしてもその場から再スタートするような業務用基板の作品は、移植されるにあたりコンティニュー回数を制限したり、一定面数に戻すなどの改変で壁を用意し、クリアに向けたプレイヤーの鍛錬を必要とさせるものもそれなりに多い。当時発売されていたX68000の作品であれば『スペースハリアー』なら一定面まで戻されるし、『沙羅曼蛇』ならばコイン数は99までクレジットできても残機を3倍にするだけなどにして壁を設けていた。この「壁を乗り越える」という達成感がまったくなかったのだ。
また、オリジナルの『アフターバーナー』やFM TOWNS版であれば、ド迫力のサウンドやPCMによる効果音、圧倒される画面でゲームとは別のアトラクションとして楽しむこともできたが、トレードオフで作成されたX68000版はその点も厳しかった。
◆声の大きいX68000版絶賛論
グラフィックを犠牲にしてのスピード感重視に舵を切ったのは松島徹の求めた『アフターバーナー』の最適解であり、多くのプレイヤーが賛同したのは事実だろう。だが、無理移植に正解はなく、多くのユーザーが求めた出来栄えだったかと言い切れるかといえばそうでもない。「当時、見た目を捨てて動きを優先したX68000版に文句を言うプレイヤーは(周りに)いなかった」というような発言も散見される。
文句を言う人は存在しない。見たこともない。これはコミュニティの問題だろう。操作系でさえマウスとキーボードの併用が難点とされる記事(工学舎刊 I/O 1989年6月号)もあった。雑誌上では文句まではいかなくてもグラフィック面は嫌味にならない程度の一言やフォローは必ず入っていた。地上パターンの少なさ、煙のメッシュ表現やボーナスステージの壁などに不平不満を言う人はいない!ということはない。少なくともここに私一人だけでもいたことは記しておきたい。本来の『アフターバーナー』はロックオンしてファイアしてグルグル回るだけの作品ではないのだ。
当時、グラフィック表現で意見が割れた表現の一つが煙のメッシュ表現だ。アトラクションとしての『アフターバーナー』は煙で前が見えなくなることが重要な演出の一つでもあった。そのため、速度面より見た目を求めるプレイヤーもそれなりに存在し、改造方法が雑誌にも早々に掲載された。そして、実際には敵がミサイルを乱発してこない限り元と比べてそこまで大きく処理落ちしないことも付け加えておきたい。
ゲーム性重視!という言葉でも現在では評価されるX68000版。しかし、ゲーム性そのものを変えてしまう致命的な欠点があった。X68000版ではローリング(空中旋回)さえしていれば敵のミサイルを100%回避できてしまうのだ。X68000版『アフターバーナー』でミスをしない攻略はいかにうまいタイミングでローリングさせるかということになる。
アーケード版は真逆で(本来はこちらが正だが)意図しないローリングをさせないことは基本中の基本。ミサイルが放たれた段階でローリングを行ってしまったら運を天に任せるようなことになる。本来の魅力を削ぐ行為だが急激な操作を避けローリングを起こさないプレイを心がけるというのもゲームの緊張感に一役買っていたのだ。(もちろんアトラクション的に楽しむプレイヤーは訳がわからずグルグル回り、そして…撃墜されていた)
購入したほとんどの人はマウスでローリングがグリグリできるのでローリングしまくっていたら100%回避できることに気づいたはずだ。それを不思議に思わないのはアーケード版をそもそも理解していないということなのだ。そして、そんな方がX68000版『アフターバーナー』で他者にマウントを取ろうとする不用意な発言はすべきでないだろう。(色々と何かを見た)
◆サイバースティックを作らせた『アフターバーナー』
X68000版の『アフターバーナー』と切っても切れない関係になるのがこの インテリジェントコントローラー(CZ-8NJ2)サイバースティックだろう。マイコンソフトとユニオン電子工業、シャープの3社が半年以上の歳月をかけ共同開発したものでシャープから発売(後に電波新聞社からも XE-1AJ の名で発売)された。
X68000 版のアフターバーナー登場時には発売されていたと誤解されやすいが、およそ1ヶ月後の発売。定価23,800円(税別)とそれなりに高額に見えたが、当時17,500円で購入しているので実売はそこまで高くなかった。また、アナログ操作だけと思われがちだがデジタル操作も対応しているので過去の3D視点ゲームにも対応可能だった。ちなみにあまり知られていないが、スティックとスロットルの入れ替え(右利きと左利きに配慮)が可能である。また、スティック交換時の装着音は一眼レフレンズの装着音から着想を得たとされている。
上記は一例だが後にアナログスティック対応作品も次々に登場している。シャープの製品ではあったが、PC-9801 シリーズや FM TOWNS のゲームでも対応作品は発売されている。
X68000用:サイバリオン、遊撃王Ⅱ エアーコンバット, F-15 STRIKE EAGLEⅡ, ガンシップ, グループ・エックス, スターラスター
NEC PC-9801用:遊撃王Ⅱ エアーコンバット, 零戦記, エアーコンバットⅡ, エアーコンバットⅢ, F-29リタリエイター, F-15 STRIKE EAGLEⅡ, RAC RALLY, ガンシップ2000、グループ・エックス, グランプリサーカス、グランプリサーカス2, スリップストリーム'93 レブ・リミット、ストライクコマンダーPLUS
NEC PC-9821用:F-15 STRIKE EAGLEⅢ
富士通 FM TOWNS用:エアーコンバットⅡスペシャル, F-29リタリエイター、ウイング・コマンダー、ガンシップ、ギャラクシーフォースⅡ、ターボアウトラン、アフターバーナーⅢ、ストライクコマンダーPLUS
…など。
基本はマウス操作とはなっているが、楽しく遊ぶにはかなり不十分だ。本気で遊ぶにはサイバースティックは必須。躊躇なく購入した。
期待に胸高まる瞬間だ。思ったよりスティック操作のストロークが深く、フニャフニャでだなというのが第一印象。そして遂にプレイする。確かにマウスなんかとは比べ物にはならない没入感の高さだ。マウスと比べてロックオンの精度が格段に上がり、操作性の素晴らしさもありゲームとしての面白さは跳ね上がる。普通のプレイヤーならこれで文句が出ることは無いだろう。
◆それでもやっぱり私は
…だが、操作性や機体の動きがオリジナルとはやはり異なることが気になった。一般的には気づかないだろうが、「SEGA スーパーゲーム6」のビデオを繰り返し見ていたのでそこのあたりはすぐに違和感を覚えた。これはある意味不幸だったかもしれない。
空気を切り裂き飛行するという機体と地面の動きの違いに気づいてしまった。地平線の角度が浅い X68000版は機体の動きが 早すぎる(軽すぎる)のだ。アーケード版は左右移動時は地面が、上下移動時は機体の動きが各1テンポ遅れるのに対してX68000 版は0.5テンポ遅れのような感じでこちらもやはり早すぎるのだ。(FM TOWNS版はもっとひどい)
また、画面の端に移動した際の地上の傾き方がX68000版は明らかに浅い。(FM TOWNS版はそこそこ再現できている。)
サイバースティックを早々に準備し、こちらからは歩み寄る努力はしたのだ。しかし、オリジナルとの大きな操作性の違いに気づいてしまったばかりにどうしても不満が残った。しかし、『アフターバーナー』の発売があったからこそ、サイバースティック の誕生があったと言っても過言ではないだろう。そういう点では X68000 にとって『アフターバーナー』は特に意義のあるゲームソフトだと言えるだろう。そして、改めてオリジナルの『アフターバーナー』がどれだけ偉大であるかを思い知らされたのだ。
ただし、当時家庭でプレイできる『アフターバーナー』はまだまだ少なくその中では断トツに良かったという事実は残しておきたい。移植であるという雑念を捨て、無心でプレイすればX68000版は相当遊べるものになっている。
◆BGMについて
アフターバーナー セガ・ゲーム・ミュージック VOL.3
アルファレコード/1987年10月10日
メディア/価格:
CD 28XA-109 2,800円
CT ALC-22915 2,200円
LP ALR-22915 2,200円
収録曲:①〈After Burner〉(1)Maximum Power~Final Take Off (2)Red Out (3)Super Stripe (4)After Burner (5)City 202 ②〈Alien Syndrome〉Title~Round表示~Doons Day(Main BGM)~Killer Instinct(Boss BGM)~Ending~Name Entry ③〈Super Hang On〉(1)Opening~Hard Road (2)Outside A Crisis (3)Sprinter (4)Winning Run~Goal~Name Entry ④〈SDI〉(1)Illusion (2)An Imminent War (3)Sky Sun (4)System Down (5)Satellite Attack~Perfect (6)We Are Desirous Of Peace(Ending)~Blue Moon(Name Entry) ⑤〈Dunk Shot〉(1)Team Select~Beat Away (2)Toast! (3)Hide & Seak~Winning Ceremony (4)One On One (5)The Fight~Winning Song (6)Ranking ※ダンクショットが収録されるのはCDのみ。
オリジナルのBGMは 川口博史(かわぐちひろし)が担当している。アーケード版稼働からおよそ3カ月後に発売されたオリジナル・サウンドトラック「セガ・ゲーム・ミュージック Vol.3」にはメインメロディーが収録されている。アルバムが割と早く世に出たため、アーケード版にもメロディーがあると思っている人も存在した。後に業務用基板のオリジナル・サウンドトラックが発売されている。
『アフターバーナー』の業務用基板には音源としてYAMAHA YM2151(同時発音数8音ステレオFM音源)1個とSEGA 315-5218 LSI(12bit/31.25kHz 同時発音数16音ステレオPCM音源)が搭載されている。(当時の販促物には FM音源DAサウンド式 と記載)
楽器音と効果音、ボイスを含めたPCMは128KBのROM3個に分かれて収録されており、容量は合計で384KB(MPR-10930, MPR-10931, MPR-11102)。BGMにはPCM音源8音を通常使用するが「Red Out」と「After Burner」のみイントロで効果音を2音追加使用している。
X68000版は業務用基板と同様にメインメロディー無しである。メインの移植担当は『スペースハリアー』や『ボスコニアン』、他社では『イースⅡ』でおなじみの永田英哉(Hideya Nagata a.k.a Yu-You,19XX年9月29日-)。リズムパートとBGMの一部パートは粟田英樹(Hideki Awata a.k.a YUU, 19XX年7月20日-)が担当している。
FM音源は8音フルパートで演奏に使用。ADPCMはリズムとオーケストラヒットで使用している。ギターを含めて際立った再現性の高さは無いのだが、バランス良い作りになっている。色々な方のMDXファイルを聞くとより際立ってバランスの良さが理解できる。
STORY
西暦198X年、世界勢力はA国とZ国に2分され、冷戦状態が続いていた。A国の海軍にいたキミに極秘司令が下った。
その司令とは、敵国の領空を強行突破して、秘密兵器の情報ディスクを軍の秘密研究所に届けるということであった。果たしてキミは、防衛線を突破して、無事目的地へたどり着けるだろうか、幸運を祈る!
HOW TO PLAY
画面中央のジェット戦闘機を操作し、全23ステージの敵陣を突破するのだ。敵はあらゆる攻撃を仕掛けてくるだろう。
君に与えられた武器は次の二つだ。
まず、狙った敵は決して逃さないホーミングミサイル、サイトを敵機に合わせロックオン、すかさず "FIRE!!" しかし弾数に限りがあるので無駄使いは禁物だ。
次はバルカン、弾数制限はない遠慮なく撃ってくれたまえ。
そして緊急回避用の切札が "アフターバーナー" だ。これを使いこなすには少々のナレが必要である。いきなりスロットルをFASTに入れてもアフターバーナーはかからない、一度SLOWに戻すのがコツ。
そうそう忘れていたことが一つある。自機を反対方向に素早く動かすことによって、ローリングすることができる。敵ミサイルを振り切るときに使ってくれ。
以上で説明を終わる。
A国の勝利は君の双肩にかかっているのだ!
健闘を祈る・・・。
操作方法
操作はマウスとキーボードで行う。
なお、アタリ仕様ジョイスティックは使用できない。
SLOW | FAST | |
---|---|---|
XF3 | XF3+XF4XF4XF4+XF5 | XF5 |
ESC ポーズ。マウスのボタンで解除。
OPT.1 アナログ・ジョイスティック操作へ切り替え。
OPT.2 マウス操作へ切り替え
画面構成
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
① スコア
② 撃墜数
③ レーダー
④ 敵機
⑤ サイト
⑥ スピード・メーター
⑦ 残機
⑧ ステージ数
⑨ ミサイル残弾数
トリビア
◆初期ロットのバグ
STAGE1のみステージ数が表示がされない。次のロット(8月位から出荷分)からは修正されている。パソコンサンデーで放送されたのはもちろん初期ロットなので同じ現象が出ている。余談だが、テクノポリス1989年8月号に掲載された煙改造は初期ロットのみの対応で修正ロットには対応していない。このプログラムにはステージ表示のバグ改善も含まれており、それが原因とされる。
◆新しい自機パターンの謎
ついでにこの画面でもわかるマニアックな話をしますと、画面を比較すると分かりますがX68000版は最大角度が割と浅いです。右上のラインを見るとわかりやすいです。(FM-TOWNS版はまあまあの線で再現されています)
— Gyusyabu (@Gyusyabu2001) March 22, 2023
プログラム上の問題があったのか、なかったのかは不明です。
なるほどー pic.twitter.com/CvEQgAzLQv
— HrSt (@HrysSt) March 23, 2023
X68000版は無理移植の側なのになぜゴロンと寝たような新しい自機にパターンを取り入れたのが不可解だった。横過ぎる角度のパターンは似合っていないし、アーケード版を見慣れていると違和感しか覚えない。そんな中ふとtwitterで呟いたときに一人の方が出した回答がまさに正解に近いのではないかと思い、その発想力にただただ感心した。
ちなみに、この自機パターンはメガドライブ版でも採用されている。これは製作者が松島徹だから流用したという話で済む。しかし、なぜかPCエンジン版でもこのX68000発祥の自機パターンが採用されている。コレに関しては謎のままだ。
裏技の紹介
◆オンメモリ対応(要2MB)
SHIFTを押しながら立ち上げると起動時に2枚のディスク内容を全て読み込んでくれる。(当然起動時間はいつもより長くなる)これでゲーム中のディスクアクセスが無くなる。
◆隠しメッセージ、ミサイル100発補給
下記のコマンドと ミサイル 、 バルカン のボタンを押しっぱなしにする。スタート時以外はメッセージの他、ミサイルが100発まで補給される。
マウス | スロットル | |
---|---|---|
1面 | 右 | LOW |
3面 | 右 | LOW |
5面 | 右 | HIGH |
9面 | 右 | HIGH |
11面 | 左 | LOW |
13面 | 左 | HIGH |
マウス | スロットル | |
---|---|---|
16面 | 右 | HIGH |
18面 | 左 | LOW |
19面 | 左 | LOW |
21面 | 左 | HIGH |
23面 | 左 | LOW |
◆隠しメッセージ1
ディスクⅠの「ふくぶくろ」ディレクトリ(半角表記)に「KAIHATU.ED」のファイルがある。内容はプログラマー松島徹の開発ドキュメント。
◆隠しメッセージ2
ディスクⅠの「ふくぶくろ」ディレクトリ(半角表記)に「URUSEI.TXT」のファイルがある。内容は粟田英樹の開発ドキュメント。今作では効果音とBGMの一部を担当している。
◆隠しメッセージ3
ディスクⅠの「ふくぶくろ」ディレクトリ(半角表記)に「MANUAL.TXT」のファイルがある。内容はジェイムズ・ブッカー少佐の「実践! 空戦マニュアル」
◆グラフィック・エディター & エディター用 外部関数
1. バックアップを取った システムディスク をドライブ0、アフターバーナーの ディスクⅠ をドライブ1に挿入して起動する。
2. CD BASIC2⏎
3. COPY B:\FUKU1\EDIT.FNC A:⏎ で外部関数ファイルを BASIC2 フォルダーへコピー
4. ED BASIC.CNF⏎ を入力し編集。
5. FUNC = EDIT の文字列を追加し保存(ESCを押してE)する。
6. BASIC⏎ で X-BASIC を起動。
7. RUN "B:\FUKU1\GREDIT.BAS"⏎
◆フライト・シミュレーター もどき プログラム
ディスクⅠの「FUKU2」ディレクトリに FLIGHT.X のファイルがある。操作はデジタルジョイスティックのみでキーボード操作は不可。ボタンで前進と後退。
◆スペースハリアー マウス&アナログJOY 対応版
1.「Human68k」のディスクをドライブ0、アフターバーナーの ディスクⅠ をドライブ1に挿入して起動する。
2. 起動したらドライブ0に入れていたHuman68k と スペースハリアーのディスクと入れ替える。
3. B:MOUSE⏎
4. B:\FUKU3\AJOY⏎
5. B:\FUKU3\AJOY_HAR⏎
ゲーム中にOPT.1を押すとアナログジョイスティック、OPT.2を押すとマウスに切り替えられる。マウスだとクリックボタンがショットになるので連射がかなり辛い。
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+ADPCM)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2151(OPM)+ OKI OKI MSM6258
01 Maximum Power
02 Final Take Off
03 Red Out
04 Super Stripe
05 After Burner
06 City 202
合計時間 : 12:11
作曲 : 川口博史
編曲 : 永田英哉, 粟田英樹(一部リズムパート)
DISCOGRAPHY
アフターバーナー
セガ・ゲーム・ミュージック VOL.3
発売日: 1987年10月10日
価格: 2,800円
商品番号: 28XA109
販売元: アルファレコード
収録曲
01 After Burner
02 Alien Syndrome
03 Super Hang On
04 S.D.I
05 Dunk Shot
アフター・バーナー
発売日: 1990年6月21日
価格: 1,500円(税込)
商品番号: PCCB-00032
販売元: ポニーキャニオン
収録曲
〈ARRANGE VERSION〉
01 MAXIMUM POWER ~ RED OUT
02 AFTER BURNER (VERSION Ⅱ)
〈ORIGINAL VERSION〉
03 MAXIMUM POWER
04 FINAL TAKE OFF
05 AFTER BURNER
06 RED OUT
07 SUPER STRIPE
08 CITY 202
09 SE COLLECTION
アフターバーナーⅡ
発売日: 1997年12月17日
価格: 2,310円(税込)
商品番号: MJCAX-7
販売元: ポニーキャニオン
収録曲
01 MAXIMUM POWER
02 FINAL TAKE OFF
03 AFTER BURNER
04 RED OUT
05 SUPER STRIPE
06 CITY 202
07 FINAL TAKE OFF (with MELODY)
08 AFTER BURNER (with MELODY)
Voice & S.E.Collection
09 EXPLOSION 0~2
GROUND EXP.0~2
CLASH EXP.0~2
ENM MIS 0 R1,R2,L1,L2
ENM MIS 1 R,L
10 FLIGHT & RL,LR
FLIGHT 1CE,R1,R2,L1,L2
FLIGHT 2 R,L
FLIGHT 3 R,L
HELI0~1
11 VALCAN A,B
WARNING
SIGHT LOCK
EXTEND MISSILE
CHECK POINT
INSERTED COIN
REBOUND
12 (Voice)
FIRE
BE CAREFUL
THE ENEMY
GET READY
BREAK LEFT
BREAK RIGHT
3 O'CLOCK
9 O'CLOCK
LOOK OUT 1 O'CLOCK
LOOK OUT 3 O'CLOCK
BREAK LEFT, BREAK LEFT
BREAK RIGHT, BREAK RIGHT
BE CAREFUL, BE CAREFUL
13 AFTER BURNER(S.E.)
AFTER BURNER 20th Anniversary BOX
発売日: 2007年11月29日
価格: 9,240円(税込)
商品番号: WM-581~86
販売元: SEGA
収録タイトル
1987 Arcade AFTER BURNER
1987 Arcade AFTER BURNERⅡ
1987 Arcade AFTER BURNERⅡ with Melody Version
2006 Arcade AFTER BURNER CLIMAX ~ 2007 AFTER BURNER CLIMAX SDX
1987 MASTER SYSTEM AFTER BURNER
1989 FAMILY COMPUTER AFTER BURNER
1990 PC-Engine AFTER BURNER Ⅱ
1990 MEGA DRIVE AFTER BURNER Ⅱ
1995 SUPER 32X AFTER BURNER COMPLETE
2001 Dreamcast AFTER BURNER Ⅱ For "Shenmuell"
1989 FM TOWNS AFTER BURNER
1989 X68000 AFTER BURNER Ⅱ
2003 GAME BOY ADVANCE Overseas Edition AFTER BURNER For "SEGA ARCADE GALLERY"
2003,2004 Mobile AFTER BURNER Ⅱ For "SEGA AGES" [Yahoo!Keitai / EZwab]
2007 Mobile AFTER BURNER Ⅱ For "SONIC CAFE" [i-mode]
Extra Tracks
当時の広告
ベーマガ第一報
発売元である電波新聞社の記事で「完璧に使い状態で移植されるものと思われる」なんて書かれるとそりゃあ凄いものができると期待してしまう。
貴重な証言
X68k版アフターバーナーIIとシャッフルパックカフェのSEマスターテープ。アフターバーナーのほうはおそらく基板から収録したもの。これらのテープからX68kでサンプリングしたのです。(当時は直接のデータ変換では無かったのです) pic.twitter.com/rFssV4l79h
— 粟田 英樹 / あわた@ゆう (@yuu_hawata) May 3, 2022
当時のおぼろげな記憶をたどってみると、もしかしたらX68k版アフターバーナーのボイスはテープ経由ではなく基板から直接サンプリングしたかもしれない。SEマスターテープを聴けばわかることだけど…(再生機器はあるけど引っ越し荷物の中)。どっちだったかなぁ。
— 粟田 英樹 / あわた@ゆう (@yuu_hawata) May 4, 2022