8K 以上
ROM
カートリッジ版
カセットレコーダーがなくてもゲームデータの
保存が可能。(途中からでもすぐ始められます)
マップやキャラクター等の仕様はテープ版と変りません。
ゲームスピードがファンクションキーで5段階に変えられます。
●アクティブロールプレイングゲーム(A.R.P.G.)ハイドライド●
A.R.P.G.とは、アクションゲームのリアルタイム処理に、ロールプレイングゲームのキャ
ラクターを成長させる楽しさと、アドベンチャーゲームの秘密捜しの面白さを融合したものです。
内容①あなたは主人公を操って、森、草原、砂漠、城、水中、地下迷路を宝を求めて探検します。
②でも、単なる宝探しではありません。目的は、王女を助けて王国の平和を復活させることです。
③そのためには、次々に周りから迫る敵に勝たなければなりません。
④ところが、初め、主人公は持ち物も力も経験もないため、弱い敵にもすぐ負けます。
⑤そこで、あなたのアイディア、作戦、思考力、素早いキー操作が必要なのです。
◎高度な重ね合わせ表示処理を実現。
キャラクターはすべて背景と高度な重ね合わせ処理を施してあり、下半身が水に没し、樹木に隠れ
る立体的な画面となっています。又、流れるような滑らかな動きはアクションゲームにも負けません。
◎四方向スクロール画面切り替え
次の画面に移動する時は、スクロールして、切り換えますから、リアルタイム性が損なわれません。
これによって、スピーディにゲームを進行する事ができます。
◎MSXの機能を極限まで追求し、グラフィック、スピード、地上のエリア数・キャラクター数等、オ
リジナルのPC-8801 版に劣りません。
T&E SOFT技術陣快心の作品を、ぜひ、あなたの機械でお試し下さい。
ジョイスティック対応
BGM 同時進行
品質には万全を期しておりますが、万一製品上の原因による不都合がございましたら、
新しい商品とお取り替えいたします。それ以外の責任はご容赦ください。
この製品の無断複製、レンタルを禁じます。また、プログラムにより得られる映像等は
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MADE IN JAPAN
企画・開発/ ティーアンドイーソフトプロダクション
製造・販売/ 株式会社ティーアンドイーソフト
〒465 名古屋市名東区豊が丘1810 番地☎ (052)773-7770
TEX062 85/11
マークはマイクロソフト社の商標です。
SET内容 /ROMカートリッジ(1本)
取り扱い説明書 (1冊)
メンテナンスカード
\5,800
『ハイドライド』MSX版について
◆『ハイドライド』概要
『ログイン』1986年6月号p.122「メイキングオブハイドライド」より内藤時浩
『ハイドライド 』(HYDLIDE )はティーアンドイーソフトが開発を行い、NEC PC-8801シリーズ用として1984年12月13日に発売したアクティブロールプレイングゲーム。
タイトル画面の一枚絵を除いてメインプログラム、ゲームデザイン、シナリオ、グラフィックまで内藤時浩 (Tokihiro Naito 、1963年2月2日-)が全て担当した。
移植版として1985年1月にはSHARP X1シリーズ版が発売。3月8日にはNEC PC-6001mkⅡ版、4月下旬には富士通 FM-7/77/NEW-7版とMSX版が順次発売されている。
◆『ハイドライド』MSX版の登場
▲ Wikipediaではテープ版が3月発売とされているが4月下旬。
▲ 華麗なエンディングテーマ曲付き。とは?
『ログイン』1986年6月号p.123「メイキングオブハイドライド」より中島健二
『ログイン』1986年6月号p.123「メイキングオブハイドライド」より加藤英治
『ハイドライド 』のMSX版は当初テープ版のみで発売が行われた。MSX版の開発を行ったのはプログラムが加藤英治 (Eiji Kato 、1965年9月21日-)(当時18歳)で、グラフィックは中島健二 (Kenji Nakashima 、1962年7月1日-)(当時21歳)。
加藤英治 の移植作業は主に千葉県にある自宅で行いNEC PC-9801を使用。ほぼ一ヶ月で完了したとされている。プログラムのロード時間はおよそ6分。オンメモリで動作する。発売後の広告には「華麗なエンディングテーマ曲付き」と記載されたが、そんなものはなかった。
MSXというハードは一部の機種を除いて記録媒体であるデータレコーダは別売になっており、『ハイドライド 』をプレイするにはハードルがやや高めであった。(ただし、実売1000円前後の別売ケーブルを用意すれば一般的なラジカセでもデータレコーダとして代用可能)
RAM32KB以上必要なテープ版ゲームの一例
また、当時はMSXの本体価格を抑えるため搭載RAMが16KBの機種もそれなりに発売されていた。ROMカートリッジのゲームだけをプレイするならば搭載RAMが16KBで問題ないが、テープ版のゲームではRAM32KB以上が必要な作品も見受けられる。当時のPCゲーマーなら誰もがご存知!上記に掲示した作品のテープ版は全てRAM32KB以上を搭載したMSXが必要だ。
▲ 1985年3月にナショナルより発売のエントリー機CF-1200(当時の実売32,800円前後)はRAM16Kバイト。
この『ハイドライド 』(テープ版)も御多分に洩れずRAM32KB以上が必要。(RAM16KBの機種は別売の16KB RAMカートリッジを購入することによりプレイは可能)このような環境であったにも関わらず、MSXマガジンの「MSX SOFT TOP10」に初登場(1985年8月号)から3ヶ月に渡って1位にランクインしていることは驚くべきことだろう。
◆『ハイドライド』で初めて体験したRPG
▲ 再生ボタンを半押で維持するとほぼ倍速で動く裏技を知ってるか?(少しでも緩めるとエラーで止まる)
私のパソコン歴は三洋 PHC-30N(1984年11月発売)という搭載RAM64KBに加えてデータレコーダ内蔵というオールインワン的なMSXからスタートした。当時としてはMSX四天王の1台に認定してもいいだろう。(ただし後に出たRAM16KBのPHC-30、お前はダメだ!)そして、『ハイドライド 』との出会いは、誰の手からどうやって渡ってきたか分からないダビングされたカセットテープだ。最初は有名なロールプレイングゲームとは知らなかった。そもそも「ロールプレイング」という言葉を聞いたことがないし意味も知らなかった。マニュアルもないためどういうゲームで何が目的なのか分からなかった。私にとっては未知の世界だったのだ。
▲ 序盤だとあっさりやられるジム。
当時は小学生であり「LIFE」「STR」「EXP」が何かも分からずゲームを進めた。適当に体当たりしてはすぐに死んで訳がわからない。しかし、敵を倒すと黄色のバーが伸びることに着目した。EXP が振り切るとどうなるか実験することに専念する。そして、端まで貯まると、緑と青のバーが成長するという概念を知る。
今でこそ当たり前のレベルアップや経験値という言葉も当時はマニアでなければ『ドラゴンクエスト 』が出て流行するまでは殆どの人が知ることのなかった専門用語に等しい単語だったのだ。自分が強くなると知った途端にゲームは急激に面白くなっていく。並行して、キーを1つずつ押してインタフェース部分でもセーブやロードといった操作方法を模索し理解し学んでいく。(クイックセーブ機能を理解した時は非常に驚いた)
▲ デモシーンでは箱庭的な狭いマップながら色々なシーンがあることを見せてくれる。
まず、キャラクターのパラメータはLIFE(生命力)とSTR(腕力)、そしてEXP(経験値)の3種しかないが、常に視認できるのが素晴らしい。アイテムは最下段に全てグラフィックで表示される。それ故にゲーム中に使用するキーはセーブなどの特殊な場合を除いては方向キーにスペースキー(攻撃/防御)のみに限定される。後は、勝手に歩き回って隠された謎を解いてくれという具合だ。このシンプルさがとっつきやすく感じさせた。
後の『ハイドライドⅡ 』や『ハイドライド3 』ではマルチウインドウが取り沙汰される。しかし、ゲームのインタフェースとして優れていたのかは今になれば疑問に思う。数値を用いず、グラフィカルに全て視認できるこの『ハイドライド 』こそが最高なのではないだろうか?シンプルイズベストとはまさにこのことだ。
▲ ローパーから逃げつつ宝箱を狙う緊張の場面は未だ忘れることができないシーンの1つ。
後に出る様々なロールプレイングゲームと比較すれば明らかにマップは狭く、少し歩けば強い敵がウヨウヨしている。そんな中で自分のレベルに見合った狩り場となる場所を探しレベルを上げる。強い敵に打ち勝てるように成長させれば次の強い敵に立ち向かっていく。そして、ノーヒントの状況で1つ1つ謎を解きアイテムを集めていく。逆にそれ以外は何も無い。お金を集めて買い物とか、会話とか全く無い。しかし、これだけでも凄く面白かったのだ。ゲームの革命に思えたのだ。
◆進行に詰まったときには友を頼れ!
▲ まさかここに謎が隠されているとは気づかず友人を頼った。
1985年~1986年当時のパソコンゲームにおける謎解きといえば攻略のヒントも少なく私にとっては難解なものが多かった。不条理なフラグをひらめきで見つけだす、もしくは運で乗り切るのが前提で制作されていたのではないだろうか。『ハイドライド 』もその傾向が少しばかりある。
1987年前後からPCゲームライフをスタートしたプレイヤーには一般的なイメージとして発売直前と直後には紹介記事と攻略情報などが大々的に雑誌掲載されていたと思われがちだ。しかし、PC-8801シリーズ版発売当時、まず新作ソフトとして記事が掲載されたのは発売後であり大々的な扱いではなかった。各雑誌の初出は、ログイン(1985年3月号)、マイコンベーシックマガジン(1985年2月号)、コンプティーク(1985年3/4月号)、テクノポリス(1985年3月号)でばらつきがあり直後にも攻略情報の特集は掲載されていない。MSXマガジンでも『ハイドライド 』の簡易的なマップや攻略が掲載されたのは1986年2月号(P.80~81)が初めてだ。そのため、お手軽な謎解きの解決方法は友人を頼ることであった。(正規ユーザーなら手引書というヒント集を100円で購入することもできた)
▲ たったこれだけのエンディングに唖然としたことは一生忘れない。
妖精を助けるとか、アン王女を助けるという目的自体を最初のプレイでは知らなかったが、詰まった時には友人にヒント(ほぼ答え)を聞いた。少しずつ進めてはテープにS キーで保存という作業を日々繰り返した。最後のバラリスを倒した後に見た、アン王女のお辞儀だけのエンディングに「これだけ?」と虚しさが漂ったのは今も忘れない。
◆シンプルながら心地よいBGM
T&E SOFT 創立5周年記念ゲームミュージックライブラリー
東芝EMI/1987年11月
メディア/価格: CT CM-0002 非売品
収録曲: SIDE1 ①スターアーサー伝説 ②ハイドライドⅠ~Ⅱ(メドレー) ③ディーヴァ a.メインテーマ b.ヴリトラの炎 c.アスラの血流 d.ドゥルガーの記憶 e.カリ・ユガの光輝 SIDE2 ①スーパーレイドック a.テーマミュージック b.ブラックストーミーガンナー~前線基地~毘沙門天(メドレー)② ハイドライド3
BGMは最初の移植作であるSHARP X1シリーズ版で使用されたテーマ曲(作曲者不明)がメインで使用される。通常シーンでもボスシーンでもエンディングでも一切変わらないテーマ曲は単純ながら一度聴くと忘れられない。時間にすれば10秒程か、曲と呼べる代物とは言えないかもしれない。それでいても飽きない。これがゲームミュージックの名曲で無くして何が名曲と言えようか。また、あまり話題にならないがジムがやられた時に流れる数秒のアイキャッチ的なBGMもなかなかコミカルで素晴らしい。
『ハイドライド 』のアレンジBGMが収録されているのは1987年の年末から発売された作品に限定で添付された、「T&E SOFT 創立5周年記念ゲームミュージックライブラリー 」。1フレーズのみでシンプルながら浅倉大介 (Daisuke Asakura 、1967年11月4日 -)によってアレンジされている。
◆真打ちROM版の登場
▲ ROMカートリッジ版初出の広告。8KはCASIO PV-7の代名詞とも言える。
さて、ここからがこのROMカートリッジ版の話だ。開発は同じく加藤英治 で製作期間は1985年10月4日~10月20日とされる。(内部コードでは「HYDLIDE for MSX Version2.0 」)
開発の経緯はROMカートリッジスロットが標準搭載されているMSXなのにテープ媒体のみの販売ということでROMカートリッジ版を所望する手紙や電話が殺到したのかもしれない。テープ版発売からおよそ7ヶ月後である11月23日にROMカートリッジ版が発売する。世間では、NEC PC-8801シリーズやSHARP X1シリーズ、富士通 FM-7シリーズ、いわゆる御三家で12月同時発売(できなかった)を控えた続編の『ハイドライドⅡ 』が話題になっている時期にだ。
しかし、MSXユーザには何処吹く風ということだったのだろう。MSXマガジンの1986年3月号(2月8日発売)ではROMカートリッジ版の集計も反映され「MSX SOFT TOP10」で ハイドライドが1位に返り咲く。MSXでは初出の1985年8月号から1986年10月号までベスト10圏内に残り続けるロングセラーぶりを発揮したのだ。(ちなみにMSX版『ハイドライドⅡ 』は1987年3月で初出1位を飾るも7月には15位だった)
▲ ROMカートリッジ版の大きな特徴であるパスワードシステム
ROMカートリッジ版になってMSX全機種対応となり、煩わしいプログラムのロードやセーブにカセットテープという旧世代になりつつあったメディアを使用することは無くなった。データセーブには後に広く使われるパスワード制を業界初で導入。(奇しくも1987年発売の『ディーヴァ 』で再びデータレコーダが必須となる。)テープ版同様、メモリセーブ機能(いわゆるクイックセーブ機能)も搭載されており、都度都度簡単にセーブすることが可能だ。
▲ ROMカートリッジ版はゲームスピードの変更が可能となり経験値稼ぎもより楽に!
システム面では他にゲームスピードを変更を行うことが可能になった。ゲーム内容に変更はなく、グラフィックは面でも右下に表示されるフェアリーがテープ版では3体とも白一色であったが各々に色が付くようになった程度だった。しかし、動作環境のハードルが完全に無くなったROMカートリッジ版『ハイドライド 』はこれを機にMSXという限られたハードで再び盛り上がりを見せることになる。