
ハイドライド for MSX
作品名 : ハイドライド
販売 : T&E SOFT
対応機種 :
メディア : ROMカートリッジ
サウンドチップ : GI AY-3-8910
サウンド性能 : PSGx3
定価 : 5,800円
発売日 : 1985年11月23日
○RAM8K以上必要
○ジョイスティック対応
○BGM同時進行
GALLERY
PROMO WORD
カセットレコーダーがなくてもゲームデータの保存が可能。
(途中からでもすぐ始められます)
マップやキャラクター等の仕様はテープ版と変わりません。
ゲームスピードがファンクションキーで5段階に変えられます。
●アクティブロールプレイングゲーム(A.R.P.G.)ハイドライド●
A.R.P.G. とは、アクションゲームのリアルタイム処理に、ロールプレイングゲームのキャラクターを成長させる楽しさと、アドベンチャーゲームの秘密捜しの面白さを融合したものです。
内容
1. あなたは主人公を操って、森、草原、砂漠、城、水中、地下迷路を宝を求めて探検します。
2. でも、単なる宝探しではありません。目的は、王女を助けて王国の平和を復活させることです。
3. そのためには、次々に周りから迫る敵に勝たなければなりません。
4. ところが、初め、主人公は持ち物も力も経験もないため、弱い敵にもすぐ負けます。
5. そこで、あなたのアイディア、作戦、思考力、素早いキー操作が必要なのです。
◎高度な重ね合わせ表示処理を実現。
キャラクターはすべて背景と高度な重ね合わせ処理を施してあり、下半身が水に没し、樹木に隠れる立体的な画面となっています。
又、流れるような滑らかな動きはアクションゲームにも負けません。
◎四方向スクロール画面切り替え
次の画面に移動する時は、スクロールして、切り換えますから、リアルタイム性が損なわれません。これによってスピーディにゲームを進行する事ができます。
◎MSXの機能を極限まで追求し、グラフィック、スピード、地上のエリア数・キャラクター数等、オリジナルのPC-8801版に劣りません。
T&E SOFTの技術陣快心の作品を、ぜひ、あなたの機械でお試し下さい。
ストーリー

この伝説は、今私たちが住んでいる世界とはまったく別の空間での物語です。ここは、妖精の住む王国、フェアリーランド。ここは王様の住んでいる宮殿を中心に広がっている、緑の美しい平和な王国でした。この宮殿には三種類の不思議な宝石は祭られており、その宝石によって王国の平和は保たれていたのです。人間と妖精達はこの世界でお互いに共存し助け合いながら、仲よく暮らしていました。ところがある日、悪心を起こした人間によって宝石のひとつが盗まれてしまったのです。数が足りなくなってしまった宝石は、その輝きが鈍くなってしまい、遂に宝石によって封印されていた、神話伝説最強といわれる悪魔バラリスが目覚めてしまったのです。バラリスの魔力によって残りの宝石もいずこへかと飛ばされてしまい平和であったフェアリーランドも崩壊してしまいました。国王のプリンセス、アンもバラリスの魔力によって妖精にされて、いなくなってしまいました。王国を崩壊させたバラリスは、国のあちこちに怪物を放ち、人々の心を恐怖と絶望が支配したのです。この悪魔の悪業に耐えかねた一人の勇敢な若者が、王国の復興を願ってたちあがりました。彼の名はジム。ジムは人々の希望を一身に背負って、たった一人で怪物に挑戦していったのです。…………。
IMPRESSION

日本のコンピュータ黎明期に発売されたロールプレイングゲームといえば、ザナドゥかこのハイドライドが代表だろう。2作品は根本的に異なる性質のゲームだが取っ付きやすさとアクション性はこのハイドライドに軍配が上がる。
まず、キャラクターのパラメータはLIFE(生命力)とSTR(STRENGTH-腕力)、そしてEXP(EXPERIENCE-経験値)の3種しかない。しかも経験値は枠に対して100%分貯めればLIFE、STR共に10ずつ上がるというシンプルさ。アイテムは最下段にグラフィックで表示される。それ故にゲーム中に使用するキーはセーブなどの特殊な場合を除いては方向キーにスペースバー(攻撃/防御)のみに限定される。後は、勝手に動き回って謎を解いてくれという具合だ。マップは狭く、少し歩けば強い敵がウロウロしていたりと狭い中でレベルを上げ、強い敵に打ち勝てるように成長させつつ、ノーヒントの状況で1つ1つ謎を解きアイテムを集めていくのだ。逆に書くとそれ以外は何も無い。お金を集めて買い物をするとか、会話をするとか全く無い。ただ、これだけも凄く面白かったのだ。

私のパソコン歴はMSXからスタートした。当時はROMとテープで主なゲーム販売が行われていたが、小学生レベルでは本体を手に入れるだけで精一杯。どうやって手に入れたかは分からないが、ダビングしたテープにハイドライドが入っていた。きっかり6分の待ち時間の後始まるハイドライドが最初は有名なRPGとは知らなかった。そもそも「ロールプレイング」という言葉も知らなかった。ザナドゥなども当時あることはパソコンサンデーで知っていたが、MSXにそんなものはなかったのだ。
小学生なので "LIFE" "STR" "EXP" が何かも分からず最初に進めていたのは未だに忘れられない。適当に体当たりしてはすぐに死んで訳がわからなかった。しかし、敵を倒すと黄色のバーが伸びることに着目し、振り切るとどうなるか実験したことから、緑と青のバーが成長するという概念を知った。自分が強くなると知った途端にゲームは急激に面白くなった。今でこそ当たり前の経験値という言葉も当時はドラクエが出るまでは殆どの人が知ることがなかった言葉だったのだ。

非常に狭い世界ながら割と最初から割と全てを見渡せる箱庭的な点が今のゲームと大きく異なる点だった。弱いまま突っ込むと即死という点が非常に多く、レベルが上がれば次は何処へ進むかを考えるのも大きな特徴だったと今から考えれば思うところがある。
謎自体はかなり不条理で、ファミコンへ移植されると必ずクソゲーのレッテルを貼られるのがパソコンゲームの特徴だった。特に当時のパソコンゲームは不条理の塊でそれを見つけだすのが当たり前とされていた節がある。妖精を助けるとか、アン王女を助けるという目的自体知らなかったが友人に謎を聞いては進めてテープに"S"キーで保存という作業を繰り返した。最後のバラリスを倒した後に見た、アン王女のお辞儀だけのエンディングに「これだけ?」と虚しさが漂ったのは今も忘れない。

ROM版はテープ版の後発として発売されている。MSX自体にデータレコーダが内蔵されている機種は元々少なかったし、外部機器として所有している人も少なかった為だろう。更にテープ版ではRAM32KB以上を要求されるのだが、世の中には8KBや16KBのMSXは多々あったのだ。ここでのROM版発売で一気にユーザー層は拡大することになる。
この時にデータはパスワード形式で発行されるようになった。また、微妙ではあるが右下に表示されているフェアリーの色が一体毎に違う(テープ版は全て白色)、スピード調整が行えるようになったなどのグレードアップが図られている。

音楽はどうだろう?ロードが終了すると同時に開始されプレイ中からエンディングまで流れる延々とメインテーマは単純ながら一度聴くと忘れられない音楽だ。作曲者に関しては今のところ分からない。時間にすれば10秒程か、曲と呼べる代物とは言えないかもしれない。しかし、ゲームミュージックの特徴の一つとして「繰り返し聞く(聞かされる)もの」というのがある。場面が変わろうが、ボスが現れようが不変。さらにはエンディングまでこのテーマ曲が流れるのだ。それでいても飽きない。これが名曲で無くして何が名曲と言えようか。