THE PREDESTINED HOMICIDES #1, #2
闇の血族、闇の血族 ⎯完結編⎯
対応機種 : SHARP X68000シリーズ
メディア : 5inch 2HD (3枚組, 完結編4枚)
定価 : 各8,800円 (税別)
上巻 発売日 : 1990年7月21日(発売予定1990月4月下旬→5上旬→5月下旬→6月中旬から延期)
完結編 発売日 : 1990年10月5日(発売予定1990月8月下旬→9月20日から延期)
発売元 : システム サコム
○MIDI対応
○ローランド社MT-32・CM-64対応
(初期のMT-32では正常演奏不可)
数字ボタンを選択すると動画再生
上巻・オープニング(CM-64)
完結編・オープニング(CM-64)
上巻・オープニング(内蔵音源)
目次
闇の血族 for X68000
※マニュアル抜粋
PACKAGE REPRODUCTION
90年初夏 ファッションモデル 変死
血の祭儀が いま始まった……
美少女名探偵♡魅由の繰り広げる
ミステリアスアニメーションアドベンチャー第1弾!
艷やかなファッション界を襲う奇怪な殺人事件。
南米の血に隠された秘密とは?
そして魅由を待ち受ける血族の宿命は?
あたし魅由。
新宿にあるデザイン・スタジオの新人A・D(アパレルデザイナー)……なんだけどあたしの持ってる妙な「力」みたいなモノ───人の心が判っちゃったり、実にカンが良かったり───のせいで、周りからは「名探偵魅由」なんて呼ばれて、よく相談事を持ち込まれたりしている。
で、そんなある日、友達のモデルが、突然、殺されてしまった。
そして、あたしの親友だった唯も……!
これって……ひょっとして連続殺人事件ってヤツ?!
本製品のソフトウェアプログラム及びマニュアルは、著作権法上の保護を受けています。著作権法に無断
でプログラム、もしくはマニュアルの一部又は全部を複写、転写、貸与することは法律で禁じられています。
株式会社 システム サコム
〒130東京都墨田区両国4-38-16
両国桜井ビル
TEL.03-635-7609
PACKAGE REPRODUCTION -完結編-
密林深く眠る失せし文明に蘇った、
血族の運命。
すべての謎は、一人の少女の下に
今、遥かなる真実を紡ぎ出す──。
1990年6月
古えの封印は解かれ、時間の糸車は無数の運命の糸を引き、血染めの歴史絵を紡ぎはじめた。一連の殺人事件に秘められた暗号を解く唯一の手掛かりを求めて、魅由は親友の理沙と共に中米の地へとおもむく。が、そこには思いもよらぬ宿命の罠が待ち受けていたのであった──────
本製品のソフトウェアプログラム及びマニュアルは、著作権法上の保護を受けています。著作権法に無断で
プログラム、もしくはマニュアルの一部又は全部を複写、転写、貸与することは法律で禁じられています。
株式会社 システム サコム
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『闇の血族』について
◆『闇の血族』概要
『闇の血族』(Yami no Ketsuzoku)はノヴェルウェアシリーズ第6弾としてシステムサコムが開発を行い、SHARP X68000用として1990年7月21日に発売した現在のノベルゲームに部類されるゲーム。当初は1990年4月下旬発売予定であったが延期、結果二分割での販売となった。後編となる『闇の血族 完結編』は8月下旬予定から延期の末1990年10月5日に発売した。
後に移植版として富士通 FM TOWNS用として上下巻が収録された『闇の血族 Special』が12,800円(税別)で1991年5月末に発売(1990年12月19日→1991年1月20日→2月中旬→3月上旬→4月上旬予定から延期)されている。
ノヴェルウェアは第7弾としてX68000用に『チャイム』の発売を予定していたが紆余曲折あり開発は中止。この『闇の血族』がノヴェルウェアの最終作となった。
※ノヴェルウェアシステムを使用しノヴェルウェアのロゴを冠した『みちよドリーミィ』が1993年5月22日にNEC PC-9801シリーズ用として発売しているがノベルウェアにクイズゲームをドッキングしたものであり例外となる。
◆開発スタッフ
原作・脚本は鈴木幸一(Koichi Suzuki 1972年-)。代表作として同社では『38万キロの虚空』の一部脚本と仕上げを担当。『闇の血族』開発当時は高校3年生。部活終わりに会社に寄り、朝まで作業をするということも繰り返したという。
プログラムは樽木泰行(Yasuyuki Taruki)がこれまでのノヴェルウェア作品に引き続き担当している。サブプログラマーには 岩下洋治(Yoji Iwashita)が加入。ビジュアル面のキャラクターデザイン・原画は山岡一馬(Kazuma Yamaoka)が務めた。
冒頭のADPCMによる伊澤魅由(Miyu Izawa)を演じたのは火消し娘(Hikeshi Musume)(マニュアル、スタッフロールに記名なし)。18歳頃にアルバイトで受けた声優の仕事だったそうだ。
https://x.com/DdXu20OoqdR2FuS/status/1360264838308528128(2021)
◆新しい息吹を感じた名探偵魅由シリーズの登場
キャッチフレーズは「美少女名探偵魅由の繰り広げるミステリアスアニメーションアドベンチャー第1弾!」。この第1弾、今となっては上下巻の「上巻」の意味で捉えられがちだが、本来はA・D(アパレル・デザイナー)魅由シリーズ(名探偵魅由シリーズ)の第1弾という表現だった。いわば「J・Bハロルドの事件簿#1」のようなものだ。(余計わかりにくいか)
システムサコムはこれまでにも各タイトルのシリーズ化を行おうとし『ソフトでハードな物語』を除き頓挫(『ドーム』、『シャティ』、『38万キロの虚空』)しているが、この魅由シリーズも原作者の意思はあったか別としてその1つに含まれるのだろう。
※サイドストーリーとしてクマーハの真の姿の伝説や、インカ帝国を滅亡させしめた伝説などが眠っていたらしい。
プレイヤーに与えられた事前情報は「名探偵」、「殺人事件」というキーワードであった。そのため魅由にプレイヤーが成り代わり謎を解き明かすというのが目的と想像し、期待した人もいたのではないだろうか。しかし、今作ではプレイヤーに考えさせるという選択肢を廃し魅由が悩み、苦しみ、推理し、解決するのを客観的にほぼ眺めるだけのエンターテイメント作品になった。
◆ノヴェルウェア初の上下巻化
ここに問題があるとすれば上下巻に分かれたことによるコスト高だ。ゲームにおいてこれを述べるのがナンセンスである事は承知している。しかし、割とあっけなくサクッと終わってしまうことに対してコストが高いと感じるプレイヤーもいるだろう(文字量が豊富で時間がかかればいいものというわけではないが)。定価で購入するのであれば8,800円(税別)を2回支払うのだ。作品は良いものでもプレイヤーにより許容できる限度というものもあるだろう。学生、社会人といったお財布事情によっても変わると思うが、ここがまず1つの大きな評価ポイントであったような気がする。
ちなみに当時は マイコンBASICマガジン 1990年9月号掲載の「The inside affair of SACOM」にて上下巻に分かれた理由をディスク容量の増加としていたが、後に鈴木幸一シナリオの遅延(後半のシナリオの収拾に手間取ったこと)ということが明かされている。
◆新井素子をオマージュしたクセになる文体
今までのノヴェルウェアと大きく変わったのは主人公が男性ではなく19才の女性ということだ。一人称は「あたし」。心理描写を地の文として主人公の口語表現で進めていく世界は今まで見たことが無いものだった。読んでいてちょっとむず痒くなるような中毒性のある少女漫画っぽい独特の表現と文体。あまりの斬新さに「何だこれは」という所感を持ったプレイヤーも多いのではないだろうか。
この文体に関して鈴木幸一は「アドベンチャーゲームサイド VOL.2」のインタビューで以下のように述べている。文章を書こうと思ったのは 新井素子(Motoko Arai, 1960年8月8日-)がきっかけであったこと。新井素子のお陰でここまでこられたことができたというオマージュでもあったということだ。つまり新井素子風の文体で仕立てたというのがこの風変わりな文体の答えだ。
当時でもこれに気付いている人はかなりいたようだが、私が 新井素子を知ったのはこのインタビューがきっかけ。小説の試し読みでなるほど!と手を打ったのだ。たしかに、『闇の血族』には新井素子の雰囲気で溢れている。
オヨヨ島の冒険
小林信彦 / KADOKAWA
1974年9月27日出版
ISBN : 9784041382011
価格:¥572(本体¥520)
新井素子の書く文体のルーツについて調べると小林信彦(こばやしのぶひこ)の「オヨヨ島の冒険」に影響を受けているとのことだ。これもまた 闇の血族 に流れている血脈でもあるだろう。一人称が「あたし」というところもまさにそれだ。特徴的な「あたしの名前は◯◯、◯◯才。」というような名前と年齢(学年)を述べる冒頭の自己紹介。これは『闇の血族』のスタート時に流れる「あたし伊澤魅由、19才」というセリフにも掛かっている。
特徴的な文体以外でも(一部の)X68000ユーザーを釘付けにしたものがあった。それがため息の際に表記される「はふ」だ。数十年前にオタク界隈で「うぐぅ」や「にょ」という言葉が流行したことは記憶に残っている人も多いだろう。その局所的なものだと考えていい。「はふ。ちょっと、ため息。」はその最たるものだ。言葉だけ有名になって実際にどこで使用されたか知らないプレイヤーや、セリフと勘違いしているプレイヤーも見受けられる。発声しているのは私室での2回、そして句点がないと覚えておこう。
※ざっくり調べた限りでは製品内で8回「はふ」とため息をついていることが確認できている。
◆ノヴェルウェアにビジュアルアニメーションを取り入れた意欲作
グラフィックは全ビジュアルがカラーで描かれている。これは『ドーム』(1988年作品)より久しく絶えていた仕様だ。(カラーが一部に使用されている作品はあったが基本は2階調だったりグレースケールだった。)
ただ、気になる部分もある。パッケージのグラフィックを見ると判るが、開発序盤のビジュアルグラフィックは512✕512ドットモードで描かれていた様子が伺える。しかし製品版ではグラフィック容量圧縮のためか512✕256ドットモードで描いたものを512✕512ドットモードで表示させている。そのため1ピクセルが縦長に見え粗さが目立つ部分も出てくる。
このため、原画のビジュアルが十分に表現しきれていない部分もある。キャラクターの表情が大きければ違和感はあまり無いが、小さくなると粗さが顕著に出てしまうのだ。その代わり色数を増加させ塗り分けを増やしたり書き込みを細かくしたりと工夫されている様子は伺うことができる。
※広告では上下巻に分かれる事になってから掲載されているビジュアルグラフィックも製品版と同じになっている。
これまでのノヴェルウェア作品で表示されるビジュアルグラフィックは止め絵だった。小説という枠であればそれでよかったのかもしれない。しかし、次なる進化ということでウルフチームや日本テレネットのお家芸でお馴染みのアニメーション効果を取り入れている。アニメーション処理自体はこの時代においては珍しいものではないのでアドベンチャーゲームという枠にするのであれば今更感があったのは否めない。ただ、小説において本来不要と思われたビジュアル面に力を入れるというのは一つの挑戦であったに違いない。
また、ビジュアルを下から上を見上げるような効果的な画像スクロールはもちろんのこと、ソフトウェア処理によるビジュアルの拡大や縮小、ラスタースクロールを効果的に使用したアニメーションも時折見せてくれる。
アニメーションシーンと通常シーンは分けて考えられており、アニメーション中に文字を読ませることは無い。小説であれば、こういったアニメーション部分は全て文章で表現すべき点ではある。しかし、本来文章で事細かに表現する部分を視覚でプレイヤーに委ねる方法にしたのも一つの挑戦という名の実験であったのではないだろうか。
◆考えさせられるキャラクターデザイン
ビジュアルに関して色々と進化していることは理解できていたが、前の作品である『38キロの虚空』と同様に『闇の血族』のキャラクターデザインを当時は受け入れられず何か違うという印象を受けた。やはりこういうゲームでウケるのはキャラクターデザインなのだ。アニメ風のカワイイ女の子なのだ。なぜわからないのか、と。
後にPCエンジン版でリメイクされた絵柄を見て「これだよ!ユーザーの求める絵柄は!」と思った。が、実際に見てみるとなにか違うのだ。文体が普通になっているし、ノヴェルウェアの体を成していない文章量というのはさておき、この絵柄(ついでに声も)は合わない!と思ったのだ。
※電撃PCエンジンでの評価は散々だった様子で 岩崎啓真(Hiromasa Iwashita)の評価は「問題外」で点数すらなし。
それは植え付けられたイメージによる先入観なのか、そうでないかはわからない。が、私にとっては山岡一馬のキャラクターデザインが正解だったと気付かされるキッカケになった。時間経過により気付かされたり証明されるというのは旬の短いゲーム作品としては決して良いことではないだろう。しかし、記憶に埋もれず良い印象に変わってるという点ではある意味で間違いなかったのではと思うのだ。
◆書籍で魅力を伝えることの限界
『闇の血族』はPCゲームを取り扱う各雑誌で特集を組まれる機会はそれなりにあった。しかし、ノヴェルウェアの進化や方向性の変化という観点でクローズアップされることはなかった。これまでの作品とどこが変わったのか、どういった所がポイントなのかという点に関してはライターに委ねられていた様子が見受けられた。例えばRoland CM-64に対応した外部音源で奏でられるBGMの素晴らしさや緊迫時の存在感に関しても上記雑誌記事では全く触れていない。総枚数300枚といわれるアニメーション効果なども然りだ。(Oh!X 1990年12月号に掲載された完結編に関しての記事には少し記載あり)
このあたりの要因は恐らくシステムサコム側にもあるだろう。とにかく、アピールが下手というか自慢したがらない性質があったように思う。そのため何にこだわって作ったのかという見せ所のポイントが記事を書いたライターに伝わっていないのだろう。
『闇の血族』はゲーム的な要素を減らし、先へ進めなくなるような謎や仕掛けもない。適当にポチポチしていればエンディングを迎えてしまう。これではプレイヤーが介入する余地のないただのビジュアル付小説なのではないか、と。ライターの方も読者に向けて何を発信すればいいのか戸惑う気持ちが想像できる。
◆ノヴェルウェアの転換
後に鈴木幸一は「アドベンチャーゲームサイドVOL.2」にて『闇の血族』に対してのチャレンジに関してこう語っている。「闇の血族では小説でいうところのコンテクスト(文脈)を自由化しようと思ったんです。(中略)プレイヤーの選択の順番が、主人公の気持ちの動きになる。それに合わせて、次のシーンのテキストを分岐させるんです。そうすればあたかもその順番で用意されたかのように、文章が自然に変化するんじゃないですか」と。また、「それまでのAVGは、たとえば『電話を見る』という選択肢を選ぶと、電話についての説明が始まりましたが、そうじゃなくて電話をトリガーとしたエピソードが始まるようにしています。主人公・魅由の視点に応じて、物に付随するエピソードやブロックを読みものとして発生させているんですよ」とも語っている。
こういったこだわり(差別化)に関しては言われればなるほど、と思うものだ。しかし、知らされていないと気づきにくいものでもある。そういうところの橋渡しが各雑誌における特集記事の役割だったはずなのだ。
ノヴェルウェアの「小説とパソコンとの融合」という定義。これまでは、フラグ管理に応じたアドベンチャーゲームらしさを交えることでパソコンとの融合としてきた節があった。それを別の観点で打破してみせたのが『闇の血族』だった気がするのだ。一切のゲームらしいフラグ管理を捨て、各所のセリフや効果音にADPCM を使ったり、挿絵のような蛋白な雰囲気を捨て色彩豊かにしたグラフィック、アニメーションビジュアルなどを加える事でパソコンとの融合をより効果的に表現している。だが、その機能に依存しすぎるとそれは小説というカテゴリからは逸脱してしまう。小説というからにはまず文章が中心でなくてはならない。そういうジレンマとの末に出来た作品であったような気がするのだ。
その結果、新井素子を思わせる文体表現の要でもあった冒頭の自己紹介部分を文章ではなくADPCMで喋らせたのではないだろうか。また、途中途中のアニメーションシーン、結末はビジュアルのみで表現し本来文章で語られる部分をプレイヤーの想像に委ねたことなど、天秤に乗せた小説という重りに傾きすぎたことからの脱却だったんじゃないかと思うのだ。
これらを知った上で、ノヴェルウェアとしての新しい試みだったと再評価されるか、時代の流行に流されてしまったと捉えるかは意見の分かれるところかもしれない。
※ADPCMで喋らせる案を出したのは斎藤学。
◆細谷晴夫を中心としたレベルの高いBGM
『闇の血族』のBGMは細谷晴夫(Haruo Hosoya)がメインで担当しており、斎藤学(Manabu Saito a.k.a マサ斉藤, 1970年1月26日-1992年10月1日)は上下巻に分かれることが決まって(概ね6月頃?)から数曲担当したはず(鈴木幸一からの情報)とのことだ。
音楽データは3つのバリエーションで構成されている。内蔵音源はFM音源8声+ADPCM、外部MIDI音源は Rolandの MT-32シリーズ系とCM-64にそれぞれ個別で対応している。
闇の血族 の開発と同時期に『斎藤学』は『ジェミニウイング』を担当(BGMデータは4月には作成完了と完パケ報告あり)しており、先に発売される予定だったが発売が大幅に延期となった。そのため『闇の血族』はCM-64のPCM音源部を使用したX68000初の市販ゲームソフトとなる。
※38万キロの虚空 CM-64専用版は1989年11月に販売されているが通販のみなので例外と判断。
CM-64はLA音源に加えU-110譲りのPCM音源を追加で搭載、U-110用として発売されているサウンド拡張カードSN-U110シリーズを1枚挿入できるカード・スロットを搭載している。(CM-32P というRS-PCM音源のみ搭載のMT-32やCM-32LをCM-64と同等にするアップグレード機のような存在の機種も同時に発売されている)
『闇の血族』ではCM-64専用データでもMT-32相当にあたるLA音源部分はリズムパートと共に使用されている。ピアノやストリングス、ベースなどを主にPCM音源へ割当て、リードシンセなどの音は主にLA音源で作成された独自の音色を使用している。
曲内容はFM音源版とMIDI音源版で若干異なる。曲は全く同じだがMIDI音源版は音色の違いによるバリエーション違いが存在する。また、完結編では完全に異なる曲(回想シーン)も存在する。普段 MIDI版でプレイしていて内蔵音源版(もしくはその逆)をプレイすると聞き覚えの無い曲が含まれているので驚くかもしれない。
MT-32とCM-64は曲構成は同じだが鳴る音の差が違いすぎる。発売当時はMT-32しか所有しておらず友人の友人にお願いしてテープに入れてもらった音を聴いてぶったまげたことが未だに忘れられない。CM-64を知ってしまうと 闇の血族のMT-32版は下位の音源と思い知らされるだろう。その位の差を聴かせてくれる。
細谷晴夫はレベルの高い楽曲を残しながら他の作品で名を聞くことがなく、ゲーム音楽作曲家として謎の多い人物だ。細谷晴夫が音楽と関わったのは6才の頃でピアノを始めたという。高校時代には我流でシンセサイザーを使い作曲活動を開始。システムサコムの門を叩いたのはその頃だろう。しかし、大学に入ってから偉大な作曲家と自分との越えがたい差を感じてから作曲活動の道は閉ざしている。偉大な作曲家が残した作品を学ぶ方向に楽しみを見出し今に至っているそうだ。
細谷晴夫が作曲活動を開始して計算上1~2年の時期に作成されたのが、この『闇の血族』となる。曲自体のクオリティーもさることながら CM-64の音源として美味しい部分の使い方が絶妙だ。1作前のノヴェルウェア作品『38万キロの虚空』CM-64専用版をサンプルで聞いたことはあるが、無理に音を置き換えたという印象が強く性能を持て余しているようにも聴こえた。比較して、『闇の血族』はCM-64の美味しいところを活かすように曲が作られたのではないかという錯覚を覚えるほど見事に嵌っている。後にCM-64専用データ対応のゲームは登場しているが、『闇の血族』を超える作品は私の中では存在しない。後に出たSC-55など鼻で笑うほどのCM-64に搭載されたPCM音源の凄さ、魅力を知ることができる。そういうレベルで曲と音源がうまく纏まっている。
何曲か書かれたという斎藤学の作成された作品がどの曲かは現在判明していない。鈴木幸一の所有する楽曲シートが見つかった際にはぜひ教えていただきたいところだ。しかし、公開されるまではどの曲が斎藤学の作品か想像で思いを馳せるのも悪くないだろう。
番外 富士通 FM TOWNS版
◆FM TOWNS版『闇の血族Special』概要
富士通 FM TOWNS用として上下巻が収録された『闇の血族 Special』は定価12,800円(税別)で1991年5月末に発売(1990年12月19日→1991年1月20日→2月中旬→3月上旬→4月上旬予定から延期)。メディアはCD-ROM1枚と3.5インチの2HDフロッピーディスク1枚(ユーティリティディスク)で構成されている。
FM TOWNS版はメディアに不遇の扱いを受けている。パソコンゲーム雑誌の代表とも言えるログイン(アスキー刊)では3月上旬予定を最後に発売予定表から情報が消え、システムサコムの広告は新発売と銘打った2月から姿を消している。マイコンBASICマガジン(電波新聞社刊)では1991年1月号で12月19日発売予定の記載後、発売日延期情報に名が載ることは無かった。
唯一情報更新が行われ掲載されたのはテクノポリス(徳間書店刊)。1991年5月号の新作ソフト発表予定表に4月上旬と記載。正確な発売日は不明だがCD-ROMのタイムスタンプを見る限り少なくとも下旬くらいには発売されている様子が伺えた。
後にいただいた情報でOh!FM 1991年6月号(ソフトバンク刊)には5月末と記載のあることが判明。テクノポリスですらも最後まで発売予定に載せなかったことがわかり、ますます不遇の扱い…なのか、システムサコム側の落ち度なのかは不明だ。
◆FM TOWNS版の変更点
大きな変更点として上下巻が纏まったことにより完結編の予告は未収録。また、FM TOWNS上でのテクニカルなプログラムは省かれているため文字や画像が拡大・縮小するシーンやラスタースクロールのシーンは未再現であり表示方法が変更されている。また、理由は不明だがグラフィックの変更されている部分が一箇所存在する。
BGMはCD-DAによる再生のみサポートされており、X68000のように内蔵音源や外部MIDI音源による演奏はできない。BGMは1ループのみ収録されており未使用曲4曲(予告編BGMを含む)含めた全48曲が収録されている。CD容量の関係上1曲あたり1ループでの収録となっている。そのためBGMはすぐにフェードアウトし再度再生までの無音時間も多いためやや不自然さを感じることも多い。
収録に関しては、メロディーやベースが抜けた演奏であったり、冒頭や終了部分が切れているなどミスが多い。またループポイントを間違えて認識しているためかBメロに入る前にフェードアウトしてしまう曲など悲惨なものになっている。これほどのミスがなぜ収録時に気づかれなかったのか謎が残る。
物語
伊澤 魅由────通称『名探偵♡魅由』は、新宿の<スタジオYo>で活躍する、新人A・D(アパレル・デザイナー)。一見、普通の『女の子』だが、実は彼女には幼い頃から『異常に勘が鋭い』といった、奇妙な力が備わっていたのである……。
1990年5月。
Yoのファッションショーを数ヶ月後に控え、魅由はその準備に追われて、大忙しの日々を送っていた。
そんなある日、突然、魅由のモデル仲間のマリーが、変死体で発見された。
死因は不明。警察の話では、体中の血液が抜き取られて、夜の公園に転がっていたと云う。
そして翌日、魅由の親友だった唯が、同じ様に奇怪な死を遂げる。
───魅由の周囲に渦巻く、陰惨とした闇の甘い血の薫り。
やがて魅由は、犠牲者達に秘められた、奇妙な共通点に気付く。
そして、この連続殺人事件の裏に見え隠れする不気味な符号にも、おぼろげに気付き始めたのである……。
登場人物紹介
♡伊澤 魅由(Miyu Izawa)19才
高校生の時、デザイナーの泉 麗子に見込まれ、学生生活を営む傍ら麗子のデザインスタジオ(専門学校)に通い始める。そこで小品の手伝いなどをしながら、デザイナーとして本格的に勉強を開始。2年間の研修期間を終え、高校卒業と同時に麗子の強力な推薦で、現在所属している≪スタジオYo≫に入った。
趣味:ジョギング、ティー・タイム
好きな食べ物:チーズケーキ
嫌いな食べ物:ブロッコリー
好きな音楽:なんでも大好き。
現在はディズニー音楽に夢中とか
家族構成:父、母、妹
♡姫野 里沙(Lisa Himeno)18才
≪スタジオYo≫の専属モデル。ファッションショー、雑誌モデルを専門としている。平凡な可愛さがウリで、生活の中で"Yo(自己性)"をファッショナブルに演出する───といった≪スタジオYo≫のメイン・コンセプトから考えれば、最もYoらしいモデルと云えるかも知れない。
趣味:読書、推理ものが好きとかで
本格的シャーロキアンでもある。
好きな食べ物:果物、全部
嫌いな食べ物:ピーマンだけが、苦手
好きな音楽:主に、ニューエイジ・ミュージックをよく聞く。
特に好き嫌いなし。
家族構成:父、母、兄
♡雪原 リーン(Lean Yukihara)20才
≪スタジオYo≫の付属学校、「矢萩デザイナーズ・スタジオ」の卒業生。研修期間中「Yoプロデュース」でスタイリスト補助のアルバイトをしていた。現在では、Yoでファッションショーを中心とした若手スタイリストとして活躍中。
趣味:読書、ジョギング
好きな食べ物:特になし
嫌いな食べ物:コンニャク
好きな音楽:クラシック
家族構成:父、母、弟
■マリー 富岡(Mary Tomioka) 24才
≪スタジオYo≫の専属モデル。180の身長を誇り、エスニック風情豊かな、極端に日本人離れしたモデルとして有名。Yoでは異色のモデルである。第一の犠牲者。
■山辺 唯(Yui Yamanobe) 18才
≪スタジオYo≫の専属モデル。どこか儚げな、世の男性陣の保護欲をかきたてるような、里沙系美少女モデル。業界のアイドル的存在である。第二の犠牲者。
■高峯 テレサ(Teresa Takamineたかみね テレサ) 23才
クイーン系のモデル。ニューフォークロアを巧みに着こなす。顔立ちは日系色濃厚だが、エスニックファッションを身に纏うと、非常に映える。服を完全に着こなすモデルで、Yoの中でもかなりの実力派である。第三の犠牲者。
■鷹野 優也(Yuya Takano) 21才
実力派の、人気アイドル俳優。リーン、魅由と同じ高校で学び、演劇部在学中に、当時美術部員だった魅由と知り合う。2人の仲が噂されるようになる頃、魅由がデザイナーとしての勉強を開始。同時に優也を避けるようになった。同時期、優也は高校を卒業。大学に通いながら演劇を目指し、ついに半年後、映画デビューを果たす。デビューと同時に世の全女性を魅了し、一躍、アイドル俳優となる。
■矢萩 葉(Yo Yahagi) 43才
「スタジオYo」、「矢萩デザイナーズ・スタジオ」の主宰者。24才でファッションデザイナーとしてデビューし、その後常に第一線で活躍を続けている。「スタジオYo」を創立した後、パリ・コレにも参加。そこで大好評を博し、世界の矢萩として注目を浴び始める。ニューフォークロア系を中心としたファッションデザインから更にジャンルを広げ、現在ではそのモデルからも判るように、主に、ニューベーシック系をYoのカラーとして押し出している。
新宿にYo事務所を置き、関連施設としての武蔵野の「矢萩デザイナーズ・スタジオ」、杉並の「アトリエ・Yo」がある。自宅は清瀬のマンション。
■野沢 祥子(Shoko Nozawa) 36才
≪スタジオYo≫のチーフ・スタイリスト。マネージメントも行っている。いかにもやり手といった感じで、多少キツめの感を受ける。スタッフのリーダー的存在。
■泉 麗子(Reiko Izumi) 38才
元イラストレーター。雑誌、宣伝媒体を中心としたスタイリスト活動を経て、現在では雑誌中心の仕事をしながら「泉デザインスタジオ」の校長をも兼ねる。魅由の才能を見い出し、掘り起こした人間でもある。仕事場、学校、ともに六本木の奥まった静かな環境にあり、スタイリストを目指す若者達が、後を絶たないと言う。今回の物語には、直接登場はしない。
■河野 瞬(Shun Kono) 22才
バー≪FELICS≫のマスター。唯の幼なじみであり、現在進行形で恋仲でもある。優也とは正反対の魅力を持った男。
操作方法
〈基本操作〉
マウスのみですべての操作を行う。
複数のウインドウを開いている時、
1つ前のウインドウに戻る。
〈MIDIでの演奏〉
MT-32/CM-32Lで演奏する場合
F1 キーを押しながら起動する。
※初期のMT-32(ヘッドフォンジャックのないタイプ)では正常に演奏できない。
CM-64で演奏する場合
F2 キーを押しながら起動する。
いただいた情報
38万キロの・・・ 投稿者:彩寂 水凛
投稿日: 2003年11月22日(土) 20時33分43秒
X68のところで、闇の血族がX68最初のCM-64対応と書かれているのですが、おそらく最初の対応は同社から発売されていた「38万キロの虚空」の通販版(CM-64対応)だったと。
それが好評なので以後、最初からCM-64対応になったかと思うのです。
Oh!FM 1991年6月号では5月末となっています。また、'91/5版のアプリケーションカタログでは発売済みとして掲載されていました。 pic.twitter.com/WAYDk72rV9
— Jiro Kita / 喜多 次郎 / KtJ Dragon (@ktjdragon) December 12, 2023
TRACK LIST
ラジオ収録曲(MIDI音源)
01 闇の血族オープニング
02 初めまして
03 力のせい
04 リビング
05 スタジオYo
06 突然!電話
07 マリーの死
08 死の後に
09 優也との思い出
10 午前0時30分
11 血・交換・赤
12 喫茶 茶此夢
13 マリーの部屋
14 唯が殺された
15 不思議な夢を見た
16 目覚め
17 死因の真相
18 里沙の怯え
19 テレサの死
20 血の繋がり
21 リーンの失踪、そして
22 闇の血族 エンディング
23 闇の血族 -完結編- 予告
24 闇の血族 -完結編- オープニング
25 飛行機での目覚め
26 雲の波
27 都会の夜
28 血のシャワー
29 里沙が消えた
30 テオティワカンへ
31 遺跡について
32 遺跡の入り口
33 運命の地
34 太陽の神殿
35 笛の調べ
36 広大な石造りの間
37 クマーハ
38 迫り来る蜘蛛
39 リーン
40 リーンとクマーハの対決
41 蘇る記憶
42 封印、別れ
43 消えゆく神殿
44 エピローグ
45 闇の血族 -完結編- エンディング
46 未使用曲1
47 未使用曲2
48 未使用曲3
曲名は適当に私が付けたもので、
ゲームの進行通りに並べてある。
合計時間 : 69:12
ラジオ収録曲(FM音源+ADPCM)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2151(OPM)+ OKI OKI MSM6258
01 闇の血族オープニング
02 初めまして
03 力のせい
04 リビング
05 スタジオYo
06 突然!電話
07 マリーの死
08 死の後に
09 優也との思い出
10 午前0時30分
11 血・交換・赤
12 喫茶 茶此夢
13 マリーの部屋
14 唯が殺された
15 不思議な夢を見た
16 死因の真相
17 里沙の怯え
18 テレサの死
19 血の繋がり
20 リーンの失踪、そして
21 闇の血族 エンディング
22 闇の血族 -完結編- 予告
23 闇の血族 -完結編- オープニング
24 飛行機での目覚め
25 雲の波
26 都会の夜
27 血のシャワー
28 里沙が消えた
29 テオティワカンへ
30 遺跡について
31 遺跡の入り口
32 運命の地
33 太陽の神殿
34 笛の調べ
35 広大な石造りの間
36 クマーハ
37 迫り来る蜘蛛
38 リーン
39 リーンとクマーハの対決
40 蘇る記憶
41 封印、別れ
42 消えゆく神殿
43 エピローグ
44 闇の血族 -完結編- エンディング
45 未使用曲1
46 未使用曲2
47 未使用曲3
曲名は適当に私が付けたもので、
ゲームの進行通りに並べてある。
合計時間 : 66:10
作曲 : 細谷晴夫, 斎藤学
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貴重な証言
俺は相当中学生時代に新井素子を拗らせて、それが高校の時に書いた闇の血族に繋がるわけで…。あれを考えると、星船の影響というよりも「いつ猫」とか「扉」の日常→非日常の感じが好きだったんだろか…。星船はもっと後…?だめだ思い出せん。
— すずきこういち(鈴木幸一) (@kouichisuzuki) September 5, 2010
@naka_gawa あの頃は、結構一人がなんでもやる時代でしたからねー。闇の血族は、初めて自分が「企画」という仕事をさせて頂いた作品でもあるので、思い出深かったりします。企画会議で「女の子一人称ですよ!ため息は『はふ』なんですよ!」とか、今にして思うとよく企画通ったなーw
— すずきこういち(鈴木幸一) (@kouichisuzuki) January 20, 2014
細谷君は確か私と同じ感じのバイトだったはずです。同い年だから当時高校生か? マサさんが忙しかったかご体調を崩されていたかで、闇血の曲はほとんど細谷君に作ってもらったはずです。急遽前後編になって、マサさんにも何曲か書いてもらったんだったかなぁ…? えーと、楽曲シートどこやったかなw
— すずきこういち(鈴木幸一) (@kouichisuzuki) November 11, 2023
コンサートでピアノを弾いていたりもしていたのですが(マサ斉藤さんが褒める腕前でした)、大学では研究者の道に進んで、音楽活動は趣味の範囲にしているようでした。僕もサコム以来すっかりご無沙汰をしています。https://t.co/c6b27dOLSh
— すずきこういち(鈴木幸一) (@kouichisuzuki) November 11, 2023
調子に乗ってもう一つ発見!?
— 火消し娘 (@DdXu20OoqdR2FuS) February 12, 2021
これも18歳位の時、X68000というフロッピーディスクのゲームソフトでの声のアルバイト(笑)『闇の血族』というシリーズで、ファッションデザイナーの魅由という女の子でした。2分05秒位からの自己紹介。やたら早口でやたらぶりっ子だけど懐かしいhttps://t.co/YXzwUkHVTs
私が18歳位の頃に声を吹き込ませて頂いたX68000というゲームソフトの
— 火消し娘 (@DdXu20OoqdR2FuS) December 12, 2023
キャラクター“スタジオYOデザイナー魅由”ちゃんの声が32年の時を経て、こんなにクリアな音質で聴けた事に、顔から??が出る程恥ずかしい“ぶりぶりブリッ子早口声”のアフレコですが、
何だか声のタイムカプセルで、嬉しいです?感謝 https://t.co/aTgCwUvZnW
エンディングムービー
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上巻・エンディング(CM-64)
完結編・エンディング(CM-64)