『メルヘン・ヴェールⅠ』について
◆『メルヘン・ヴェールⅠ』概要
『メルヘン・ヴェールⅠ 』(Märchen Veil Ⅰ )(以下、メルヘン・ヴェール)はシステムサコムが企画・開発し、1985年8月15日*1 にNEC PC-9801(以下、PC-98)専用として発売したアクションロールプレイングゲーム(システムサコムはマルチカテゴリーゲームと称している)。本来は6月下旬予定であったが延期されての発売だった。
発売当初は5インチ版のみ提供。後に8インチ版とPC-98U2専用として3.5インチ版を提供(提供時期不明)している。U2専用版はU2専用周辺機器のFM音源ボード(PC-9801-U-03)に対応した。(ただし、3.5インチ版は他のPC-98に接続した外付けドライブでは起動しない。)
移植作として、翌年1月頃にはNEC PC-8801/mkⅡおよびNEC PC-8801mkⅡSR/FR/MR版が発売(1985年10月下旬から延期)。3月頃にはSHARP X1版、MZ-2500版(1985年10月下旬から延期)、11月27日にMSX2 版が発売。翌年の1987年にはMSX版(1986年12月中旬から延期)、8月下旬には1年延期された富士通 FM-7シリーズ版(1986年8月下旬から延期)も登場している。また家庭用ゲーム機には任天堂ファミリーコンピュータ ディスクシステム用にサンソフトが移植、3月3日に発売している。
*1 広告準拠なので延期の可能性は否定できないが、少なくとも8月に発売したことは間違いないようだ。(POPCOM1986年4月号p.30記事「昨年8月に発売された」と記載)
▲『ハイドライド』(1984年12月発売・ティーアンドイーソフト)
『メルヘン・ヴェール 』が登場した1985年8月はまだまだアクションロールプレイングゲームの珍しい時代。1984年12月13日にティーアンドイーソフトからNEC PC-8801用として発売した『ハイドライド 』が移植を続けながらその後1年以上もベスト10入りするような人気を誇った時代だ。また、かの有名な『ザナドゥ 』(日本ファルコム作品)すら、まだ登場していない。これからどんどん新しいアクションロールプレイングゲームが登場するわけだが、『メルヘン・ヴェール 』はそういったスタートラインの時代にあったゲームだったことは知っておいたほうがいいだろう。各社が変化に飛んだ様々なチャレンジを行い、目新しさ、斬新さを武器に今では面白さの理解されないようなゲームが次々に排出され人気を博す。そういう時代だ。
◆当時の『システムサコム』はPC-98ONLY
▲「I・0」1986年6月号p.180広告。
1985年までシステムサコムのゲーム開発はPC-98シリーズのみ行っており、PC-88やX1、FM-7など8ビット機は手掛けていなかった(余談だが1985年2月には富士通 FM-16βのゲームを手掛けていたことが発見されている*2 )。これまでに『ヴァリアント 』(1983年6月20日発売)、『ムーンボール 』(1983年11月20日発売)、『ウォーム 』、『ブラウンズラン 』などを手掛けてきたが、広告をほとんど出さなかったため当時であれば知る人ぞ知る作品だっただろう。流通には「PC-98はゲームマシンじゃないからゲームを作っても売れない」と言われた『ヴァリアント 』。200本売れれば大したものという計算で販売されたが3000本売れたということで作ってるほうがびっくりしたという 逸話が残っている。業界を含めてPC-98とはそういう認識だったのだ。
ゲーム以外にもPC-98専用としてアニメーションツール『PED 』を開発。システムサコム作品では1985年の段階で『ウォーム 』と『メルヘン・ヴェール 』に『PED 』が使用されている 。ちなみに、1986年2月25日にボーステックが発売したあの超有名な『レリクス 』の開発にも『PED 』が使用されている 。
「日本のソフトハウスはいま」.『月刊ログイン』. 1984年3月号, p.119
「特集パソコンアニメーション」.『月刊ログイン』. 1986年2月号, p.129
「特集パソコンアニメーション」.『月刊ログイン』. 1986年2月号, p.137
▲ 1985年2月25日の読売新聞に掲載されたFM-16βの広告
*2 喜多 次郎(@ktjdragon )さんよりFM-16βに『MOON BALLⅡ』の情報。価格の前に付いている*マークは近日発売の注釈マークであり、実際に発売されたのかも現在の所不明。
▲ オリジナルのPC-98版は400ラインという緻密なグラフィックが後の8ビット版との差を見せた。
PC-98専用にするメリットは処理速度や標準メインRAMの大きさなどもあるが、『メルヘン・ヴェール 』ではそれらの優位性を活かした640×400ドット(PC-88などは一般的にゲームでは640×200ドット)という高解像度のグラフィックがプレイヤーを魅了したはずだ。
1984年には伊佐社長も『ヴァリアント 』や『ムーンボール 』を「全8ビット機には移植する予定はありません。むしろPC-9801に対するソフト技術のノウハウを蓄積したいと思っている」 と述べるほど16ビット機に焦点を絞った開発を強調していた。
それが、8ビット機まで手広く開発していくことになったのはこの『メルヘン・ヴェール 』からで、PC-98版が売れたから発売することになった、というわけではない。PC-98版開発中から8ビット版(PC-88、X1etc.)の開発は決定していたのだ。ただし本来1985年10月発売予定だった8ビット版の発売は1986年以降に順次発売されたため、8ビット機ユーザやPC雑誌からシステムサコムと『メルヘン・ヴェール 』が脚光を浴びたのは1986年からが本番だった。
「日本のソフトハウスはいま」.『月刊ログイン』. 1984年3月号, p.119
◆開発スタッフ
▲ 『ポプコム』1986年4月号,p.30「ソフトハウス独占居すわり取材!システムサコム」より 左から、佐藤浩一、前田喜次、堀本幸男、石井達也、石井深雪
ゲームデザイン及びプログラマーは堀本幸男 (Yukio Horimoto a.k.a ヤン・トモリ)(現インフィニティー 代表)が務めた。シナリオ及びプレストーリー、BGMは佐藤浩一 (Koichi Sato a.k.a 佐藤幸之助, 佐藤浩之助)が担当 。オリジナルキャラクターデザイン、シナリオ、ストーリーを担当したのが石井深雪 (Miyuki Ishii )、キャラデザイン、背景デザイン、パッケージデザイン、キャラのアニメーションチェックなど全体のアート・ディレクションを務めたのが石井達也 (Tatsuya Ishii )だ。
佐藤浩一,高崎一征. 「特別寄稿 メルヘン・ヴェールⅡ"開発"物語」.『チャレンジ!!パソコン・アドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲームⅡ』. 電波新聞社,第3刷, 1987, p.274
▲ 『月刊ログイン』1986年4月号,p.49システムサコム広告
『ポプコム』1986年4月号,p.30「ソフトハウス独占居すわり取材!」より前田喜次
謎なのは『ポプコム』1986年4月号の記事に掲載された『メルヘン・ヴェール 』制作陣だ。この中に前田喜次 というスタッフがプログラマーとして参加しており『メルヘン・ヴェール 』は5名で手掛けられたされたことになっている。しかし、マニュアルに記されている開発スタッフにもその名前はない。
取材時期から『メルヘン・ヴェールⅡ 』の開発にも関わっていそうだがスタッフロールや開発手記などにも全て名前は記されていない。
上の広告にも記されているが『メルヘン・ヴェール 』は「わずか4人で完成させた精鋭たち」と記されており、前田喜次 はいないものとされている。
実はこの方がマーク・フリント …なんてことはないと思うので、8ビット版『メルヘン・ヴェール 』の移植プログラマーだったのではないかと想像する。(他の4人は『メルヘン・ヴェールⅡ 』の開発で忙しく移植に回っている暇なんて無いだろうし)
◆「ドルアーガの塔」の影響を受けたであろうゲーム性の一面
▲ 先に倒してはダメだったり、先に倒さなければダメだったり。
『ドルアーガの塔』1984年ナムコ作品
『メルヘン・ヴェール 』のゲーム性に一部影響を色濃く与えていると思われるのが1984年にナムコが業務用基板として開発した『ドルアーガの塔 』だ。バリアの向きもそうだし、アイテムを取らないとマップが暗闇になるアイデアもそうだろう。しかし、その最もたる部分が「宝探し」要素。『ドルアーガの塔 』ほどではないが、アイテムの出現方法がそれなりに理不尽なことも多い。そのため手順を間違えると二度と手に入らないアイテムは存在するし、詰んでしまうこともある。アイテムが出ることすら知らないままになることもあるし、そんな状態でセーブしたらそれはそれでほぼ詰むことも。
もちろん、全てではなく序盤では単純に岩や枯れ木を撃てばアイテムが出てくるなんてこともあるし、最初からマップ上に表示されているものもある。
▲ 出るはずのアイテムが無いのはプレイヤーがアイテムの出し方をミスったからであろう。
フンギ
SNSで見つけた一例だが、画面写真のシーンから察するに6面の海の神の娘である「ミノス・ムーメ」を助けるには5面で手に入る「ソルビティオ」が必要になる。これを入手するには5面で「鏡」を手に入れなければならない。ただし出現させるには条件があり「鏡」の隠されている岩のある画面右端にいる「フンギ」を倒す前に岩を破壊すると出てこなくなるのだ(攻略サイトや攻略本にも書かれている)。出るはずのアイテムがバグで出なかったかのように書かれている。しかし、そういうのではなく、アイテムの出し方をミスったので詰んだのだ。
▲ 攻略本や攻略サイトを見ているとどうにもいかなくなることもある。
ケラステス
また攻略サイトは『チャレンジ!!パソコン・アドベンチャーゲーム&ロールプレイングゲーム(以下、チャレアベ)』(山下章著)を参考にしていたりするようだ。『チャレアベ』の情報が曖昧だったり未掲載だとハマることも多い。例えばチャレアベではアムニス薬やリバティオーを発見するには「敵を全滅させてから」とあるが、まったくそうではない(上下に1体ずついるフンギを倒せばいい)。
さて、この質問は『チャレアベ』には普通に鍵と聖書が手に入ると記載されている。普通に岩を壊せばいいように思えるが、実はケラステスを倒してから岩を破壊しなければ鍵は手に入らない。この宝箱は取らなくてもクリアには問題ないので詰みにならないのが不幸中の幸いだ。シーン8へ行けばいいという話は、宝箱のある場所まで戻るくらいならシーン8から井戸で戻れば1発で宝箱の画面に行くからだろう。
謎解きといいつつ、運良くアイテムが手に入っているプレイヤーも多いだろう。しかし、所定の敵を倒してからアイテムの隠された岩を破壊しなければならないという出現条件が結構多い。その運が悪いと上記のようなケースになる。(宝箱のケースを除いては基本的に詰みになりセーブポイントもしくは最初からやり直しだ)
鏡を使ったトリックなどは少し分かりにくい気もするが、所定の敵を倒してからという謎解きはまだ良心的といえるかもしれない。
◆「ビジュアル」という単語を早くから採用
▲「ビジュアルステージ」がメインで、「アクションステージ」はおまけというのがシステムサコムの見解。
1986年12月に発売した『夢幻戦士ヴァリス』。ビジュアルシーンというゲーム用語を生み出した。
『メルヘン・ヴェール 』の大きな特徴はそれまでの一般的なアクションゲームやロールプレイングゲームと異なり「ビジュアルステージ」と呼ばれる絵本のように絵と文章で物語を綴るモードが「アクションステージ」の始まりと終わりに用意されたことだ。「ビジュアルシーン」などの「ビジュアル」という言葉を最初にゲームへ用いたのは日本レネットの『夢幻戦士ヴァリス 』(1986年12月発売)という向きもあるが、その1年以上前に『メルヘン・ヴェール 』が「ビジュアル」という単語を用いていたということは知っておいてもいいかもしれない。
また、「ビジュアルステージ」が単なる絵物語で終わっていないのも特徴だ。先に進むために「アクションステージ」で行うべきことであったり、取得しなければならないアイテムなどの謎に迫るヒントとなる非常に重要な話が盛り込まれている*3 。
*3 1面のビジュアルステージにはアクションステージで行うべきヒントとなる情報がほとんど入っていない。という件はマニュアルに記載されており、何をするか分からなかったらストーリーを読むように記されている。
◆シューティングアクション+RPG
▲ 実際はロールプレイングいうよりシューティング要素が強い。
『メルヘン・ヴェール 』はシューティング要素が非常に強い。これはロールプレイングゲームにあまり見られないスコア(得点)が用意されているところからも見て取れる。実際のジャンルはアクション・(シューティング)・アドベンチャーゲームと言ったところが正しいのかもしれない*4 。
敵への攻撃方法は剣による直接攻撃ではなく「魔剣アキナケス」の魔力による間接攻撃のみだ。直接攻撃できると思って体当たりをすると一部例外の敵(麻痺系など)を除いて敵による攻撃によりダメージを受ける。アイテムの中にはパワーアップする剣も用意されているが、罠として装備の状況によってはパワーダウンする剣もあるので注意だ(パワーダウンしているのかわかりにくいのがいやらしい)。
*4 当時のパソコンゲームであればアクションアドベンチャーゲームといえば、日本ファルコムの『ロマンシア』やシステムサコムの『ユーフォリー』、アクションシューティングといえば日本テレネットの『ファイナルゾーン』や『夢幻戦士ヴァリス』などが挙げられるだろう。ジャンル的には『うっでいぽこ』が近いように思える。
◆誤解の多い防御
▲ ロック・カピトー(モアイもどき)の弾はバリアが反応しない。それは物理攻撃だからだろう(流れ星は?)
ロック・カピトー
攻撃があれば防御があると思うかもしれない。しかし『メルヘン・ヴェール 』には敵からの直接攻撃を防ぐ方法はない。
例外として魔法の腕輪「アルミラ」によって正面からの魔力(+流れ星)による間接攻撃(PC-98版は黄、8ビット版はピンク)に限り「バリア」(盾ではない!)で防ぐことが可能である。マニュアルにも記載されているが『ドルアーガの塔 』(1984年ナムコ作品)の魔法攻撃を防ぐのと同じように攻撃状態(スペースバーを押している状態)の時のみ左側からの魔力(+流れ星)を防ぐことができる(攻撃中は正面からの魔力を防御できない)。
PC版のレビューサイトではバリアの説明を「敵の攻撃を防ぐことができる」であったり「弾を防ぐことができる」と記載しているサイトも多い。しかし、これは間違いだ。直接攻撃は防御できないし、2面から5面に数多く登場するロック・カピトーの口から吐く弾(石)には無効だ。これに対抗する手段は物陰に隠れるか逃げるかしか方法は無い。
◆動きが遅いという批判はいかがなものか
▲ ストゥルーシオを全て倒し魔法の靴「フェスティノー」を取ればほれこのとおり!
フェスティノー
『メルヘン・ヴェール 』でよく見受けられる批判は「主人公の移動が遅い」というものだ。検索でも『メルヘン・ヴェール 』といえば「移動が遅い」という言葉が大抵出てくる。しかし、これには2つの誤解が考えられる。
砂地に足を踏み入れると急激に足が遅くなるのだ。これを見て「遅い!」と思っているような記事やSNSの発言も見受けられる。1面と2面は砂地が多いので特にスピードが落ちる。ここで判断されてしまうのはナムコの『ドルアーガの塔 』で「ジェットブーツ」を取らずに遊び続けて「遅い!」と言っているようなものなのだ。2面には魔法の靴「フェスティノー」がある。これを取ると砂地でも通常スピードで歩くことができる、ということを知らないで「遅い」と評価している方がいることだ。
▲ PC-98版だけでなく8ビット版でも可能なスピード変更
そして、8ビット版も含めゲーム全体のスピードを3段階で変更可能であることも知らないのではないだろうか。P-98版ではf・5 キー(8ビット版では機種によりキーが異なる)にて切り替えが可能だ。
最高速にすれば不満は無いはずだ。ただし、当然ながら敵も同じくスピードアップする上に、崖から落ちた際のカウントスピードもアップするので本来スペースキーを2秒以内に6回叩けばいいところが1秒以内に6回くらいのイメージで叩かないとあっという間に死んでしまう。敵のいない場所を移動するだけならまだしも、通常シーンではトリッキーな敵の動きを捉えるのも含めて標準スピードが一番扱いやすい絶妙な設定であることに気づくまで時間はかからないだろう。
▲『うっでいぽこ』では遅いと騒がないのに『メルヘン・ヴェール』では遅いと騒がれる理不尽さ
以上の2点でなければ、「敵が追い詰めてきて隙がなく攻撃体制を作りにくい」というイメージから「遅い」という批判に繋がっているのではないだろうか。つまり、敵のスピードをヴェールよりかなり遅くするか、敵の思考ルーチンを限りなく低いレベルにしなければ納得しないだろう。
例えば後の1986年12月にデービーソフトから発売された『うっでいぽこ 』は視点こそサイドビューだが似たようなゲームジャンルで、歩くスピードも『メルヘン・ヴェール 』と然程変わらない*5 (むしろ『メルヘン・ヴェール 』のほうが速い)。なのに『うっでいぽこ 』では遅いという批判を聞くことが少ない。結局はスピードではなくアルゴリズムが単純な敵が多く、ダメージを受けにくく敵を倒しやすいから文句が出ないのだろう。
*5 マニアックだがFM77AV専用で発売した『少年マイクのひとり旅 』も主人公の移動スピードは同じレベルだが遅いという批判は見た記憶がない。
◆1985年の難易度
▲ 1985年に登場したロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームの一例
『I・O』1985年5月号,p.506「京都メディア」広告
世代でない方はロールプレイングゲームやアドベンチャーゲームというものは適度にボリュームがあり、あまり詰まることなく割とテンポよく進んでエンディングを迎えるものというイメージがあるかもしれない(1987年や1988年だとそういったゲームが多くなってくる)。
しかし、1985年ではまだ難しい時代だった。製品寿命を長くするための対応として、時間稼ぎのためにマッピングを必要としたり謎解きの難易度を上げたり、レベル上げの経験値稼ぎ、強い武器や防具を買うためのお金稼ぎなどの単純作業の負荷を増やし時間を費やさせるしかなかった。それらの枷を外してしまうと数十分~1,2時間程度で終わる作品がザラだったからだ。
その最たる要因はコストの問題*6 もありゲームに使用されるディスク枚数はまだ1枚の作品が多いからというのも1つの理由だろう。2Dや2DDのフロッピー1枚に入る程度(320KB,640KB)では広い世界に、数多くの場面やグラフィック、色々なアイデアを詰め込むことが難しかったのは想像に難くない(1985年はテープ版のゲームもまだまだ出ていた時代だ)。
もちろん、技術に関しても1985年は後から見ればまだまだ発展途上だった時代だったといえるだろう。アドベンチャーゲームではまだライン&ペイントを行ってグラフィックを描画しているソフトハウスも存在する時代だ。
*6 1984年に発売したスクウェアの『ザ・デストラップ』は当時異例のディスク3枚組にしたため定価が9,800円と高くなったという(1985年に発売した『ウィル』はその反省でディスク1枚に収めて5,800円の値付にした)逸話が残っている。
▲ 高難度に火が付いたのは1986年くらいからで主に日本ファルコム作品だった。
1985年12月に発売した『ハイドライドⅡ』。難易度は前作と比べ大幅にアップした。
『メルヘン・ヴェール 』はゲームが特別難しいのか?というとそういうわけでもない。他のゲームも1985年の8月段階では理不尽と伝説のように語られるような難易度の高いゲームは心当たりがない(あるかもしれないが)。
極端に難しいゲームが出始めたと思わされるのは1986年あたりからで、ティーアンドイーソフトの『ハイドライドⅡ 』(PC-88版は1985年12月発売)、日本ファルコムの『ザナドゥ・シナリオⅡ 』、『ロマンシア 』、『太陽の神殿 』あたりがその代表格であった。名作とも評されるが、難易度の高さは今や伝説になっているのではないだろうか。
よく当時のパソコンゲームだけが難しかったように評されることもあるが、私からすれば家庭用ゲーム機でも謎解きアクションゲームの難易度は相当なものだ。任天堂ファミリーコンピュータ用として発売された『アトランチスの謎 』(サンソフト作品)や『迷宮組曲 』(ハドソン作品)はまったく歯が立たなかった。『ゼルダの伝説 』(任天堂作品)はクリアこそしたものの、攻略本頼りで相当に難しかった。他にも有名な『トランスフォーマー コンボイの謎 』(タカラ作品)も難易度という点では有名だ。また理不尽と言えば『たけしの挑戦状 』(タイトー作品)などもあったことを忘れてはならない。(1986年だけでも他にも恐らくたくさんある)
▲ 1987年4月28日にエニックスより発売したアドベンチャーゲーム、『ジーザス』
余談ではあるが、こういった世界を変革したのが『イース 』(日本ファルコム作品)とよく言われるが、その超高難度のゲームを次々に送り出した元凶こそ日本ファルコムだった。難易度も特に高いゲームが当時多かったわけでもない。例えば『イース 』よりもおよそ2ヶ月早く発売した『ジーザス 』(エニックス作品)は難易度も高くなかった。現在ではあまり名前が挙がることのない作品だが当時のPCゲーマーではその名を聞いたことがない人はいないくらいには有名な作品だ。そういった意味では『ジーザス 』のほうがボリュームも内容も満点で難易度も決して高くない先駆けの作品と言えるだろう。ちなみに『ガルフォース 創世の序曲 』(スキャップトラスト作品)も同時期だ。ロールプレイングゲームでは『ガンダーラ 』(エニックス作品)も『イース 』より先に出た難易度低めの作品と言えるだろう。
そして、ほとんどの人は触れないが1987年でもコナミのMSXゲームは相変わらず難易度は高い作品が多かったという事実を残しておこう。
◆基本テクの解説が雑誌や攻略サイトに存在しない不遇のゲーム
▲ 慣れてくるとそれなりに対処できるようになる(もちろん最初の方のステージだけ)。
『メルヘン・ヴェール 』の意見や感想をネット上でいろいろ調べてみたがどうにも本質を捉えていない発言も多い。これは当時の雑誌記事、ネットの攻略記事に掲載されているのはマップ紹介と謎解きしかないからだろう。アクション面において最も重要な「基本テクニック 」には全くと言っていいほど触れておらず、せいぜい載っているのは崖から落ちた時にスペースバーを連射することくらいなのだ(なお、『チャレアベ』には基本テクニックが掲載されている)。
『メルヘン・ヴェール 』は適当にプレイしてもすぐやられてしまうゲームだけに基本テクニックの習得は必須。攻略サイトを見ながら遊ぶ「攻略方法ありき」のプレイヤーだとアクション面の攻略法が書かれていない『メルヘン・ヴェール 』は初っ端から躓くだろう。書かれていないことは必要ないものとし、自分で基本テクニックを探さなければならないことにも気づかないプレイヤーもそれなりにいるからだ(マニュアルに少しは書かれているが)。それを怠り、クイックセーブを使いまくって、運に頼ったリトライの応酬で進んでも面白くなるはずもない。『メルヘン・ヴェール 』で「基本テクニック 」を知らずに遊ぶのは某ゲームで半キャラずらしも知らず適当に突っ込んで遊んでいるくらいのやらかしなのだ。
▲ 鬼と名高いシーンと言えば1面はルナ、2面は山岳地帯だろう。2面はスペースキーを連射しまくりだ。
本当に鬼のゲームならセーブ機能なしの上に制限時間が加わってくるだろう。制限時間以内にクリアしなければならないルールがないだけ随分マシ。落ち着いてプレイしていいのだ。それに、普通は崖から落ちた瞬間ゲームオーバーになって救済措置なんか作ってくれないぞ。最終ステージの通路で足を踏み外して落ちないのも優しさだ。
▲ PC-98版が出た時に難易度に関して触れていたのはこの記事くらい(『ログイン』1985年11月号p.21)
難易度に関しては私のコミュニティーで見ている限り、「高い」という意見で一致している。だが、PC-98版発売当時は難易度に関して問題視している記事はほぼ無かった。X1版やMZ版のレビューで「スクロールが遅くうっとおしい」(MZ版)、「ディスクのアイテムを取らないとセーブできないというのはちょっと厳しすぎるのではないでしょうか」(X1版) といった意見も出ている。(PC-98版もスクロールが早いとは言えないが8ビット版はディスクアクセスの時間でテンポが悪くなっているように思える)
「GAME REVIEW」.『Oh!X』. 1986年4月号, p.37
▲ 右からならば斜め左に流されて移動する方法もあるが…敵が待ち構えている。
じゃあ、個人的に『メルヘン・ヴェール 』で鬼に思える部分はないのか?というと…ある。私は7面の渦を挙げたい。私の指さばきは決して上級レベルでもなんでもなく2面のギアスがいる崖なんかで千鳥足のように歩いて落ちては這い上がり、落ちては這い上がりを繰り返している。
崖で即死はないが、中には一発即死系の罠がある。例えば序盤では2面の砂漠にある渦も挙げられるが、渦と渦の間が離れておりシビアな操作が要求されることはないのでそこまで難儀に思われることはないだろう。ところが7面の海にある渦は隣接しているものが多い。その間を通り抜けるのは私にとってはシビアだ。意識せずに移動すればすんなり通り抜けられるのに、意識するとあっという間に吸い込まれてしまいリカバリーもできずこの面で行ったことは一撃でパーだ。ここだけは鬼やー!と思うのだ。ただ、クイックセーブができる今の世の中ではそんな思いは古いのかもしれない。
◆8ビット版はPC-98版より難易度は甘く作られている。
▲ EGGコンソール メルヘンヴェール PC-8801mkIISR(マイニンテンドーストア)
EGGコンソールなどで遊べるようになった『メルヘン・ヴェール 』。ここで「なぜPC-98版じゃないんだ」という意見もあった。ごもっともだ。グラフィックの美しさ、漢字とひらがなを使った読みやすいビジュアル、スクロール時にディスクアクセスが無いことによるプレイアビリティーの向上などもあるだろう。
だが、8ビット版で優れていることはPC-98に比べて難易度の改善(難易度が下げられている)が行われているということだ。8ビット版でゲロっているプレイヤーにPC-98版を遊べというのも酷なのだ。
▲ PC-98版はポーズすると画面が暗転して現在の状況を冷静に考えることができない。
例えばゲームのポーズ(一時中断)機能だ。PC-88SR版では一般的な一時停止画面だが、PC-98版では画面が暗転するのだ。例えばスクロールを終えた瞬間にポーズしてマップや敵の配置を分析できない。スクショとかないし、スマホやデジカメもない時代だ。つまりマッピングができないのだ。リアルタイムでしか状況判断することができないようになっている(もちろん敵に襲われない安全な場所を見つけてマッピングを行うことは可能だ)。
▲ PC-88SR版では定番のワザ。バグなんだと思うが右の画面に戻れない。
これを出すのは反則かもしれないが、PC-88SR版では定番のワザだ(『チャレアベ』にも掲載されている)。魔獣ギアスの画面は難所の1つとされているが、崖の道を行かずともいま来た道を戻ると魔獣ギアスの左側に出る。これはPC-98版ではできないワザだ。(X1、MZ、FMなどで可能かは不明)
▲ PC-88SR版では定番のワザ?スクロールを利用したワザ。
これも出すのは反則かもしれないが、PC-88SR版では定番のワザかもしれない。「アンシーリー・コート」などの1発当てるとワープ系の敵は倒した時にスクロールさせると同じ場所に出現するというものだ。これはPC-98版ではできないワザだ。(X1、MZ、FMなどで可能かは不明)
▲ 最も大きく変わったのが7面のこの画面。PC-98版はかなり難しいシーンだった。
ケラステス
8ビット版が最も大きく変わったのは7面にある地底シーンの2画面目だ。
PC-98版はケラステスがいとも簡単にこっちにやってきたりする障害物配置だった。しかし、こればかりはさすがに制作サイドも難しすぎると思ったのだろう。かなり大幅に障害物配置が変わってかなり簡単になっている(とはいえ気を抜けばガンガンダメージを食らうから注意)。
▲ PC-98版。ケラステスが変なルートで来なかったパターンを4パターン収録してみた。
敵はここを抜けてくるので 誘導しないよう注意。
ケラスケスがここを 抜けてきたら大ピンチ
ここは一本道みたいなものなので誘導して倒せ!
PC-98版の7面にある地底シーンはかなりえぐいことがわかるだろう。大きな違いはなくマイナーなバージョン違い程度だがオリジナルのPC-98版は8ビット版の上を確実に行く難しさだ。ケラステスは近寄ってこられたらダメージ必至なのでランダムでこっちへすり抜けてくるスペースがあるPC-98版は攻略法をある程度作ってもダメージに関しては運に頼らざるを得ないシーンなのだ。
▲ 気のせいとか偶然だと思っていたけどPC-88SR版はすぐ近くに出てきてくれる。
そして、きっと気のせいだと思っていたけど、どうやらそうでもなさそうなワープする敵が簡単になっていることだ。1発当てるごとに姿を消し、どこかに再び姿を現す敵だが、ヴェールの割と近くにでてきてくれる。この時たまたまかと思ったが数回プレイしても同じような感じだったので調整されていると思われる(YouTubeにアップされている方の動画を見てもこのシーンは一瞬で終わらせている)。
▲ PC-98版は微妙な位置や遠くに出現してどうにもならないこともままある。
PC-98版は本当にランダム的に姿を現すので微妙に魔力が届かない位置や、どうしようもない位置に出現することもあり時間を取られることが多い。8面なんかは時間をかけると強敵ウィルオー・ウィスプが復活してくるのでその対処もかなり厄介なのと、そのテクニックも必要になってくる。
基本的な部分はPC-88SR版もPC-98版も同じなのだが、微妙に修正されている点が大きい。PC-98版を遊んだ後にPC-88SR版を遊ぶとヌルく感じるほどだ。確かにいろいろな面でPC-98版が素晴らしい点は多いのだが、スクロールするまでの時間が早いとかいうレベルではオススメするべきではないかもしれない。
◆『メルヘン・ヴェール』の人気は実際の所どうだったのか?
▲ 異様に評価の高いBeep(『Beep』1985年12月号p.160)
『マイコンBASICマガジン』1986年4月号p.240
PC-98版が発売した時には『メルヘン・ヴェール 』を取り扱った雑誌は限られていた。その中で力を入れていた1冊がコンピュータゲーム情報誌『Beep(ビープ)』(ソフトバンク刊)だ。雑誌でゲームをそれっぽく褒めるのは常套手段だが、その域を出た絶賛ぷりだった。「今年度"ベスト1"の声もあがる満足度」とまで書かれている(この後に『ザナドゥ 』と『ハイドライドⅡ 』が登場するわけだが)。8ビット版しか遊んだことのないプレイヤーからすれば記事を読んだらPC-98版だけ難易度が圧倒的に低いんじゃないの?と思うかもしれないが基本的には同じ(むしろPC-98版のほうが難易度は上)なので安心してほしい。
また、8ビット版が発売して初めて『メルヘン・ヴェール 』を誌面で紹介した『マイコンBASICマガジン』では「ハイドライドを超えたといっても過言ではない!」という評価であった。
▲『月刊ログイン』(アスキー刊)1986年1月号掲載 SOFTLOG全国TOP20(10月20日現在)
PC-98版『メルヘン・ヴェール 』を発売直前に取り上げた記事は私が調べた限り1冊も無かった。発売後に『Beep』(1985年12月号)、『ポプコム』(1985年10月号)、『ログイン』(1985年10月号)のみが取り上げていたことを考えるとPC-98シリーズ専用というゲームはいかに注目されていないかということがよくわかる。それでも、ゲーム層の少ないPC-98シリーズのみの発売で最高12位に入っているというのだから、立派なものだろう。
▲『月刊ログイン』(アスキー刊)1986年6月号掲載 SOFTLOG全国TOP30(3月25日現在)
他の専門雑誌で記事が掲載され始めたのは8ビット版発売以降で『コンプティーク』『テクノポリス』『マイコンBASICマガジン』などはPC-98版発売からおよそ半年後である1986年2月頃から初めて取り扱ったのだ。ゲームをプレイするユーザー数はPC-98に比べれば8ビットPCが圧倒的に上であったのと露出が大きくなったのもあり、PC-98版発売から5ヶ月も経過してトップ10入りを果たしている。
▲ 『ログイン』1987年4月号p.4「読者が選ぶTOP20 1986BHS大賞」
重要なのは当時プレイヤーのゲームに対する印象は売上と乖離していた(上振れ下振れ)のか、それとも売上どおりだったのかだ。当時だと特に雑誌記事や口コミしか情報が無く、パッケージに騙されたり、記事に騙されたりということはままある時代だった。そこで、客観的に参考にできるとすれば売上ではなく「読者が選んだ」といった集計だろう。その中で最も参考になるであろう『ログイン』のBHS大賞。しかし、TOP20にその姿は無かった。また、移植版にはなるが『Oh!X』の「1986年度 GAME OF THE YEAR」のTOP10にも選ばれていない(ただしテーマ音楽賞で5位、美術デザイン賞で1位を獲得)。
元々『ログイン』では9位が最高ということで、ネームバリューほどの人気は無かったというのが実情だろう。またビジュアルステージや、かわいいキャラクター、音楽などは評価が高かったようだ。しかし、アクションステージに対する評価は見ることができない。
◆まともなレビューがもうほとんどネット上に残っていない問題
▲ 電ファミニコゲーマー「我々は「感動の時代」を生きている。ゼルダ“以外”のアクションRPG史【ゲーム語りの基礎教養:第四回】 」
現在、ネット上には遊び方を理解した上でのレビューであったり、楽しみ方を記したページは存在しないといっていいだろう(素晴らしい攻略ページは存在する)。昔の有名なゲームだけに最近手を出してみたものの「何が面白いんだこのゲームは?」と思って検索してもその答えは見つからないのだ。
キツイ書き方だがゲーム史の本を出すようなプロのライターが書いたレビューですらもこのようにデタラメだらけで正しい紹介文などもうネット上に存在しないかもしれない。弾とか盾という表現はまだ理解できる(盾を持っているというのは間違い)としても、「攻撃を受けられる」とか「そんなシステムはめったに使わない」というのも呆れてしまう(攻撃は受けられないし、バリアは全ステージで使うし使わなければクリアは相当難しい)。「弾は画面の端から端まで届く」というのも間違いだし、敵は8方向に動けるというのも間違い(4方向のみ)だ。引用部分を除いてここまで綺麗にズレて間違えているのはまともに遊んだ経験がないのに無理にレビューを書いたからに他ならない。
◆私個人の評価は★★★★★
宝探し的な仕掛け、罠、謎解きなど一部オマージュはあるが、独特なアクション性、どことなく可愛いいグラフィック、ステージ前後のビジュアル展開などを融合した当時では見たこともない斬新なゲームに驚いた(私の見識が狭いだけで同じようなゲームはあったのかもしれないが)。広告のキャッチコピーが示すまさに「新世界」だったのだ。
基本テクニックをマスターすると駆け引きが非常に面白い。何度も先述しているが、敵の特徴を理解して遊び方が分かってくると、誘導して誘い込んで倒したり、最初は翻弄された相手を手球に取ることが楽しいのだ。キャラクターが成長して強くなるのではなくプレイヤーが成長して強くなるという新しい感覚。
▲ 敵の出現位置は同じだけどその後の動きがランダムのため対応方法が変わるのは大変。
ただし、気を抜くと1面ですら一気にやられる。至近距離に入ると妙な動きで確実に襲いかかってくるアルゴリズムは多数のボスキャラと対峙しているような緊張感さえ覚える。慣れても油断は禁物の手に汗握るゲームなのだ。
ただ、それでも後半はちょっとやり過ぎなように感じる難易度であることは間違いなく、面クリア時にはパワーを全回復するとか、安全地帯ではパワーが回復するくらいはしてほしかったところだ。そうでないと、面が進むにつれてパワーが残り少なくなっていき最後はどうにもいかなくなるなんてことがある、というのはちょっと厳しいかなと思う。また、セーブポイントに関しては言わずもがなだろう。
▲ パソコンゲーマーのバイブルであった『チャレンジ!パソコンA.V.G&R.P.G』
『チャレンジ!パソコンA.V.G&R.P.GⅡ』p.10「著者経歴」より山下章
たしかに、ちょっと遊んでみるか、と適当に手を出して遊べるゲームではない。それで、一般的な評価としてちょっとどうなんだと疑問を投げかける人も多いだろう。それは非常に残念だ。虎の威を借る狐だが、山下章 (Akira Yamashita )大先生が厳選したゲームを収録した『チャレンジ!!パソコンA.V.G&R.P.G』シリーズにも(Ⅰ・Ⅱ共)収録されている。紹介文でも
システムサコムが作り上げた、ARPGの傑作。全8面に分かれたゲーム・バランスもさることながら、ビジュアル・ステージで構成されたゲーム・ストーリーがスバラシイ。これほどまでに各面がうまくつながりあったゲームがかつてあっただろうか?アイテム数、敵キャラの種類も豊富で、グラフィック、BGMともに文句なし。まちがいなく現時点でARPGの最高峰に立つ作品のひとつだ。
と紹介されている。面白さはお墨付きだ。何がそんなに面白いのか、革新的だったのかを理解してみるのも悪くないのではないだろうか。ただし移植版は動画を見て色々といいたいことがある。(特にMSX/MSX2)
現在ならProjectEGGやEGGコンソールなどで遊ぶ事も可能で、クイックセーブも可能となっている。微力ながら当サイトで掲載した基本テクニックを押さえた上で、攻略本もしくは攻略サイトさえ見ていれば3面や4面くらいまでは割と容易く到達できるだろう。こうなれば、また評価も変わるのではないかと思う。(何度も何度も何度も書くがくれぐれも「基本テクニック 」は理解しておくように)
山下章. 「メルヘン・ヴェールⅠ」.『チャレンジ!!パソコン・アドベンチャー・ゲーム』. 電波新聞社, 第2刷, 1986, p.147
◆BGMについて
▲ 序盤から中盤にかけてアクションステージで流れるこの曲にはなじみのあるプレイヤーも多いだろう。
『メルヘン・ヴェール 』のBGM*7 を手掛けたのは佐藤浩一 。大半はクラシックのバロック音楽をモチーフとしてアレンジされたものが使用されている。完全オリジナルのBGMは、「ファンファーレ」「メルヘン・ヴェールのテーマ」、「ヘブン」のみと思われる(前出の曲もクラシックをモチーフとしたものかもしれない)。原曲のイメージを壊さずゲームに合わせた編曲が見事だ。
PC-98版は標準状態で効果音のみサポートだが、対応音源としてシステムサコムから発売された別売のサウンドボード「AMD-98」に対応している。また、3.5インチ版のみU専用のサウンドボードPC-9801-U-03(YAMAHA YM2203音源搭載)に対応している。(このディスクをU以外のPC-98に3.5インチドライブを装着して立ち上げても正常に動作しないと広告に記載されている)なお、後に発売されたSOFBOX版の3.5インチ版は5インチ版をコンバートしたのかFM音源には対応していないとのウワサ がある。
*7 全機種にBGMが用意されているわけではない。X1版やFM版、PC-8801/mkⅡ版に関してはBGMが存在しておらず効果音のみとなる。
ume3fmp. 3.5"版(PC-9801U2版)はFM音源対応です。また5"版やSOFBOX版はFM音源の代わりにAMD-98対応です。(FM音源には未対応). Twitterhttps://x.com/ume3fmp/status/1139486631562371072 (2019)
▲ 「I・0」1986年6月号p.180広告。当初はAY-3-3910が2個でLINEOUTも付く予定だった。
「AMD-98」はシステムサコムから1985年5月頃(6月かもしれない)にジョイスティックポートを備えたオリジナルのサウンドボードとして発売された。『メルヘン・ヴェール 』はもちろんのこと、同社の『ブラウンズラン 』や『ゾーン 』、ボーステックの『妖怪探偵ちまちま 』、『レリクス 』、ゲームアーツの『テグザー 』などが対応した。
搭載音源はGIのAY-3-8910(PSG音源)でMSXに搭載されているものと同じもの。これを3個搭載し、ステレオ対応としている(ただし3音✕3個で9音同時発声という単純な構造ではなく演奏として使えるのは6音+リズム)。『メルヘン・ヴェール 』は最大で6音(通常は5音)の同時発声に留まっており、リズムの使用はない。
不運だったのは7月にNECからPC-9801-26(サウンドボード)がAMD-98より安い定価25,000円で発売されたことだった。PC-88SRで標準搭載されたものと同じ音源であり、これがPC-98の標準となるサウンドボードとなることは間違いないと誰もが思ったことだろう。これにより、「AMD-98」はゲーム市場でその価値を失ってしまった。
▲(参考動画)2面のプレイ。原曲:ガスパル・サンス「カナリオス」からアレンジされた曲。お気に入りだ。
ただ、AMD-98はPC-9801-26でカバーできない唯一無二の音源だ。AMD-98で流れるBGMはMSXなどで聞いたPSG音源とは別物に思えるような独特の音に聞こえる。これが作り手のテクニックなのか、音源の力に頼っただけのものなのかはわからない。独特の力強い音に、情緒ある曲がゲームにマッチしている。AMD-98対応ゲームはかなり少ないし、オリジナル曲も少ない。それでもPC-98のゲーム音楽で代表的な作品を語る機会があれば真っ先に『メルヘン・ヴェール 』を挙げたい。いや、挙げなければならないだろう。
ちなみに、個人的には1~5面で使用されたテーマ曲(原曲「カナリオス」)や6,7面で使用されたテーマ曲(原曲「「マドリガル・ガヴォット」」)は延々と聞いていられるし、ずっと聞いていたい曲一選があれば一票を投じたい。ラジオ収録では1ループしか入れていないが、正直これは2ループ入れようか本当に悩んだ。
ゲームの進め方
◆まずは、ビジュアルステージです。メルヘン・ヴェールはビジュアルステージから始まります。メルヘン・ヴェールがめでたく終了した暁にも、ビジュアルステージで終わります。という事は、ビジュアルステージは鬼のように大事な部分だという事です。極論すればアクションステージは、ビジュアルステージを持たせるためのつなぎに過ぎない、ということにもなりかねません。(ちょっとオーバーかな)
とにかく、このビジュアルステージは、最大漏らさず目を通すことが肝要です。ゲームを進行する上で必要不可欠な情報源であると同時に、メルヘン・ヴェールの世界をより感じさせてくれる立派な物語になっているからです。
◆さて、いよいよゲーム開始。まずあなたは、これは…何をどうやったらいいゲームなんだろう?と思うかも知れません。目的は何なの?、どうすれば1面がクリアーできるの?という声が聞こえてきそうです。でもここで思い出してほしい。ビジュアルステージです。メルヘン・ヴェールは、各面ごとにしなければならない目的があります。それをクリアーして初めて次の面に進めるんです。目的はどうやって見つけだすのかって? それは…鍵はみーんなビジュアルステージが握っています。ビジュアルステージと拾ったアイテムを丹念に調べていけば、必ず目的が見つかります。……しかし、実は1面のビジュアルステージにはそういうヒントがほとんど入っていません。面だけみたら確かに、何をやっていいか分からないかも知れませんね。でも実はちゃっかり分かるところがあります。それは、このマニュアルについてくるメルヘン・ヴェールのストーリーです。もし1面で何をするか分からなかったら、ぜひこのストーリーを読んで見て下さい。
◆目的は分かったが、何だすぐパワーが無くなって死んじゃうじゃないかい、と思ったあなた。敵の動きをよく見ていませんね。敵に無作為に触っていたら、そりゃすぐ死んじゃいますよ。敵のキャラクターは、動ける場所とそうでない場所があるんです。それさえ見極めれば簡単簡単。それと敵のキャラクターによって攻撃力に差があります。攻撃力の強いキャラクターとは、あまり関わらない方がいいです。それと、各面に必ずあるパワーアップするフルーツを食べて、パワーを確保しましょう。
◆フルーツは食べたが、パワーが上がらん、と怒っているあなた。そーゆー時は、マックスを増やす事に専念しましょう。妖精が入っているプーカをやっつけるとマックスは5アップするし、ピクシーを殺せばマックスは3アップします。その他、パワーマックスが両方アップする薬など、盛沢山フューチャーしておきました。ぜひ見つけてください。そう言えば、1面目の砂漠地帯に、早速パワーアップする剣が……。
◆そして、1番難しい夜の世界。ここは何と言っても、敵の魔力の防ぎ方を習得すべきです。基本動作は、自分の剣を抜かないで正面から敵の魔力を受ける事です。ほらバリアーが張られましたね。これを守れば、4方向どこからでも敵の魔力は防ぐ事が出来ます。それでは剣を抜いたまま防御は出来ないでしょうか。実は出来ます。皆さんの中には、ナ▲◎社のド★アー※の塔をやった事がある方も多いと思います。そう、あれと同じです。剣を持つと、防御の角度が90°左にずれるだけなんです。だから、剣を抜いて攻撃しながらの防御も可能な訳です。
◆メルヘン・ヴェールには、安全地帯という水色の楕円の場所があります。これを最大限に使わない手はない筈だ。まず、手持ちのアイテムが見れる、セーブができる、敵から攻撃を受けないで済む。更に更に、アイテムマニュアル、キャラクターマニュアルなどという極秘中の秘のプレイヤーアイテムを拾うと、敵キャラクターの攻撃力や防御力、自分が拾ったアイテムの性質まで分かっちゃうという凄さ。この辺をフルに活用しなくちゃ岩山や海は乗り切れませんゾ。
◆最後に、崖の話を一つ。崖は落ちてしまうものです。要はいかに死なないで起き上がれるか……。あなたの気合いの入ったスペースキーの叩き具合です。崖に落ちたなと思った瞬間に、何もかも忘れてキーを叩く事です。2秒間に6回叩ければ、あなたの勝ちです。
◆ここまでくれば、あなたももうメルヘン・ヴェールドランカー!さあ、私達の処へいらっしゃい。
ちょっとした攻略
ほぼ全て我流なのでもっといい別の基本テクニックがあるかもしれないのでご容赦を。
◆基本テクニック~連射機能ダメ!乱射ダメ!ゼッタイ!~
▲ ボタン押しっぱなしの縛りでプレイしてみたらこうなった。
『ギャラクシアン』1979年ナムコ作品
『メルヘン・ヴェール 』をプレイする際、ジョイスティックで連射モードをONにしているプレイヤーがいるかもしれない。押しっぱなしでプレイすれば崖でボタン連打する必要はないから楽ちん、なんて思われるかもしれない。ここは必ずOFFにしておこう。なぜなら、『メルヘン・ヴェール 』はシューティングゲーム『ギャラクシアン 』(ナムコ作品)などのようにタイミングを計って敵を狙い撃ちするゲームだからだ。
ちなみにボタンを押しっぱなしにすれば魔力は連射されるということを覚えておこう。ただし、ボタンを押しっぱなしにしての適当な移動も厳禁だ。乱射しているとピクシーが隠れている岩に意図せず当たってしまい対処できないこともある。また、連射の隙は大きいので他の敵でも近距離だと次の魔力を発射する前に詰められてダメージを受けてしまうこともある。
◆基本テクニック~連射ダメ!防御できないから!~
▲ 魔力を放ってくる敵と正面から戦う時は数発撃ったあとキー(ボタン)は離す。
ロック・カピトー
キー(ボタン)を押しっぱなしにする弊害は防御にもある。ボタンを押しっぱなしにしていると敵の魔力防御が正面でなくなるのだ。魔力防御は1面の「月の女神ルナ」だけで使うものではない。ボタンを押しっぱなしにしているときは左側にバリアが貼られるということを改めて覚えておこう。なので、上から攻撃が来る時に右へ向かう時はキー(ボタン)を押しっぱなしで有効だ。下から攻撃が来た時は左を向いて攻撃していればバリアを下に張れるぞ。あと、何度も書いているがロック・カピトーが口から吐き出しているのは魔力ではなく石なのでバリアは無効だ。
◆基本テクニック~障害物をうまく使おう~
今回のような場面では左にある枯れ木のやや左下側に逃げ込むと横軸を合わせて反撃できる。敵が追撃体制になっている場合、ヴェールを障害物の陰に位置しておけば敵は近くの障害物を必ず沿うように移動する。障害物の影に隠れて軸が合った瞬間に撃つと倒すことができる。これが特に押さえておくべき基本テクニックだ。
上で「近くの障害物を必ず沿うように移動する」と記載しているが厳密には最も短い距離でヴェールに近づこうとするからだ。この映像を見ればその片鱗が見える。
陰険とか陰湿と表現するプレイヤーの話を見ていると理由の1つとして「こちらの弾が当たらないように半分ズレた状態で近づいてくる」というような表現を見る。ヴェールの魔力が当たらないように敵が頭を使っていると思っているプレイヤーも少なくない。これも今回のように障害物を上手く使えば特に問題ないのだ。
▲ 種類は少ないが2モーションの敵も後半には出てくるぞ。
ただ、敵がヴェールの魔力が当たらないように移動しているというのは分析の結果半分は誤解であることをお伝えしておこうと思う。まず、敵の移動単位は8ドットだ。「敵は同じ方向にこの移動を2モーションもしくは4モーション行う」ということがまず基本だ。障害物がなければ32ドット(or 16ドット)は同じ方向に移動するのだ(後半の増え動きが機敏に見える敵は2モーション16ドット移動を1セットとして行動する)。
では、障害物があった場合はどうなるのか。例えば4モーション(or 2モーション)の途中で障害物に当たった場合は、そのまま残りのモーションを同じ方向に移動しようとする。これが敵の考えているように見える時間だ。位置がずれてしまうのはその最短距離(ヴェールの身体の角)になったとき敵の位置がずれているからだ。
つまり敵が4モーション(or 2モーション)移動した位置にヴェールを配置しておけばずれたりしないのだ。ただ、迫ってくる間に32ドット(or 16ドット)を正確に測るというのは少なくとも私には無理だ。だから、観測範囲外から倒すか敵の動きをある程度予測し障害物の影に誘い込んで倒すというのがセオリーじゃなかろうか。
◆基本テクニック~ピクシーをノーダメージで倒そう~
▲ ピクシー退治の失敗例と成功例を見て、捌き方をマスターしよう。
ピクシー
妖精ピクシー。1面から6面まで登場するいやらしい敵だ。岩に隠れているため適当に岩に魔力をブッ放すのは厳禁、ということは先述している。しかし、岩を破壊したときにトリッキーな動きでヴェールの攻撃範囲から外れてしまうことも少なくない。そして、変な角度からにじり寄られ連続ダメージを食らってしまうこともあるはずだ。
この動きに翻弄されるのは遠くから岩に魔力を放ったときだ。最初のトリッキーな動きがヴェールの攻撃に対して水平方向であればそのまま連射で倒すことが可能だが、横方向に移動されると大変なことになることになる場合がある。運任せということだ。
対応法は岩から2~3キャラ分くらい空白を開けた状態で攻撃すること だ。先述した敵に認識される範囲をうまく使うことにより、岩を破壊した瞬間からピクシーはヴェールに必ず向かってくる。撃ち漏らすことはないだろう。
◆敵の位置は画面から移動しても保存されている
▲ 敵に追いかけられてギリギリで逃げ切った場合はもうその道をノーダメージで通れない。
『メルヘン・ヴェール 』は敵の初期位置が全て決まっている(ランダム配置ではない)。画面を切り替えても前の敵位置は保存されている。そのため最悪のケースは試しに隣の画面を覗いてみたら敵に追いかけられて命からがら逃げ切った場合だ。その道を再び戻った時には、敵とばったり鉢合わせてダメージを受けるのは必至だ。なので、戻って来る可能性がある道では敵に追いかけられた状態でスクロールを使って逃げることのないようにしなければならない。
今回のような別ルートがある場合なら回り込む方法も採れるが、別ルートがない行き止まりから逃げた場合はダメージを受けるのは間違いない。運が良ければ崖を隔てた対岸側から誘導して倒すという手もあるが、その間に余計なダメージを受けてしまう場合もあり、難しい選択肢を迫られることになる。
もしこれから攻略サイトを作成し攻略マップを掲載するのであれば敵の初期配置も記したマップにしておくと100点満点のマップになるだろう。
◆月の女神(1面)
▲ 赤く塗った部分は「月の女神ルナ」の死角だ!往路は最下段を移動すれば「月の女神ルナ」の攻撃はなし!
個人的な意見を言わせてもらえば1面にある「月の女神ルナ」のシーンは難易度が高すぎる。斜めにバウンドする「サフィルス」は魔力を打ち込んでから動き出すまでおよそ6秒。ヴェールの移動速度は「フェスティノー」も装備していないので動きは砂地並み。6秒で一気に逃げ切るのは難しい。基本的にヴェール側に斜めに進んでくる(上下左右には動けない)のでまず最初に通り過ぎたら振り返ってすぐに動きを止める準備を。
ちなみに往路だけだが、最下段を歩いていけば「月の女神ルナ」の攻撃は無く進めるので最下段を歩こう。これだけで随分楽になるはずだ。あとは動画のとおり死角をなるべく通って気合で逃げよう。
半分くらいパワーが残っていれば隣のマップにあるユンゲルで50回復とクリア時の20回復(合計70回復)でなんとかなるはずだけど、もしパワーが残り半分でユンゲルを既に取ったあとだったら、この先はほぼ詰みだろう。なので、ユンゲルはここを終えるまで絶対に取らないこと。
◆初見殺しの場所は把握しておこう
▲ あくまでも一例だが初めて突入した場面ではイジワルな敵配置もある
『メルヘン・ヴェール 』は反射神経さえよければ初見でノーダメージクリアできるようにはなっていない。かなりイジワルな敵の初期配置もあり、別ルートで先に倒しておかないとスクロール直後にダメージを食らうことはままある。しかも、スクロール直後に敵を引き付けて一撃で倒すというワザだったり、スクロール前にはスペースキーを押しておかないと間に合わなかったりとパターンは色々あるので自分のプレイスタイルに応じて覚えておいたほうがいいだろう。
もちろん安全策を取るなら別ルートから予め倒しておくというのも手だ(復活する敵はなるべくスクロール終了位置から離した場所で)。
◆6面のアルベーンス・ケーテのうまい倒し方
▲ なるべくルボル・ケルピーを倒さず近づかず。
ルボル・ケルピー
アルベーンス・ケーテ
6面は4面のアンシーリー・コートと同じように全6面中5画面にいる「アルベーンス・ケーテ」を倒さなければならない。1発撃ち込んだ瞬間に姿を消し、徒歩を続けると再び別の場所に姿を表すという面倒かつ時間のかかる代物(ミスして大ダメージを受けた時にやり直す時間も相当かかる)。
アルベーンス・ケーテを倒すには合計5発の魔力を打ち込むこと。ちなみに、アルベーンス・ケーテが放っているのは魔力なので、月の女神「ルナ」と同様にバリアで身を守ることができるぞ。
最初の画面は安全地帯から始まる。陸地にルボル・ケルピーはやってこない。この画面での注意点はなるべくルボル・ケルピを倒しまくらないことだ。不意に復活したルボル・ケルピーに当たって大ダメージを食らってしまう可能性がある。アルベーンス・ケーテを倒しに海へ入る時はルボル・ケルピに追いかけられないよう注意しながら、倒した場合はなるべく早め(およそ18秒以内)に陸地へ戻ってルボル・ケルピの復活を待つ。この繰り返しでなんとかなる…はずだ。
▲ 岩に囲まれた入江は敵に関して一方通行なのだ。
他機種でできるかわからないが岩に囲まれた入江にルボル・ケルピーを誘い込んで封印する、という手もある。こうなると精神的にグッと楽なのではないだろうか。誘導する時にミスって大ダメージを受けないようにしよう(動画では一発もらっちゃってる)。
▲ 3体のルボル・ケルピーを誘導して左側で倒し、右側の入江に陣取れ!
2体目のアルベーンス・ケーテを安全に倒すため、まず左にいる2体のルボル・ケルピーを倒し、復活する前に右にいる1体のルボル・ケルピーを左側に誘導して倒す。これで入江にルボル・ケルピーは入ってこないのでここを拠点としてアルベーンス・ケーテを迎え撃とう。どうしてもやっちゃいがちだが深追いは禁物だ。
▲ ここは海側で迎え撃つとダメージを受けにくいし身動きもとりやすい。
3体目のアルベーンス・ケーテは海側から迎え撃とう。海側なら移動しやすい上に崖から落ちるなんてこともない。ついでに陸地の岩に隠れているピクシー・グラシエスも海側から倒しておこう。陸地では身動きが取りづらい上にキャニウス・ケルピー3体と応戦しなければならない(安全地帯的な場所はあるかもしれないが)。
ルボル・ケルピーを倒したら復活する場所に注意しておこう。1発当たればダメージはキャニウス・ケルピーよりデカい。
最初は画面の左右にいるルボル・ケルピがうまく片側に2体寄るように右側のルボル・ケルピをなるべく中央かそれより左で倒して岩でブロックしてしまうのが良策。中央の岩の反対側(右側)に陣取り、なるべく上に行かないようにしていれば、ほとんどこっちへ来ないはずで随分対応が楽になるぞ。
▲ 初見注意!の場面だ。
ブーカ・グラシエス
左に戻って陸地に上がりそのまま真上に向かうと初見殺しポイントがある。ブーカ・グラシエスが迫ってくるが迎え撃つ体制を作る前に距離を詰められて一発は食らってしまうのだ(かなりシビアにやればノーダメージも可能)。この場合、左の一番奥まったところにワザと落ちて気持ちゆっくりスペースキーを叩いて隙を作る。そして崖から飛び出した瞬間に連打だ。速度設定を上げている場合はシビアすぎて無理だと思うので標準速度にすることをオススメする。
でも、一番安全なのは右の対岸から倒しておくことだ。そして、この場所からは障害物が多くて意外にアルベーンス・ケーテになかなか魔力が当たらないのだ(無理ではないけど)。なのでこの実は右側の画面から攻めるのが効率はいい。ここへ来たらUターンしよう。
▲ 初見注意!の場面その2だ。
ここも初見注意だ。余裕があればこの対岸の陸地から先に倒しておくというのもありだ。ただ、対岸の陸地では狭すぎてアルベーンス・ケーテを倒すのに非常に時間がかかる。
スクロール直後に右側に移動して迎撃体制を取りたいのに障害物があるかのように足踏みして右には移動できない。ここはちょい上に移動してすかさず右、そして上を向いてショットだ。ただ、ここまでダメージをあまり受けていなければ別に1発くらい食らってもなんとかなる。
▲ 復活する敵がいないので割と楽勝。
ここからは復活する敵がいなくなるので岩に潜んでいるプーカとその他のキャラさえなんとかすれば一騎打ちだ。動画を貼るまでもないレベルだけどここまで攻略をやったので一応貼っておく。
▲ ここも復活する敵がいないので割と楽勝。
最後の場面はやや狭いが落ち着いて戦えば大ダメージを食らうことはないだろう。岩に割と多めのピクシーが潜んでいるので遠くから早めに倒して無駄なダメージを受けないようにしておこう。最後に、海の神の娘であるミノス・ムーメーが氷山に閉じ込められているのを助ければクリアだ。ただこれにはあるアイテムが必要だ。
◆敵を障害物に引っ掛けて倒すワザ
▲ ケラステスが変なルートで来なかったパターンを4パターン収録してみた。
敵はここを抜けてくるので 誘導しないよう注意。
ケラスケスがここを 抜けてきたら大ピンチ
ここは一本道みたいなものなので誘導して倒せ!
7面後半のザコキャラ地帯の難所を例に取るが、敵を移動できない部分へ誘導して引っ掛けてダメージの受けないギリギリのラインで倒す、というワザだ。
ちなみに上記の攻略法はかなりシビアだ。まず1回でも様子見などでこの画面に来ていたらこの攻略法は使えない。前述のとおり敵が移動した場所まで全部記憶されているので次に来たときには敵の位置が全て変わってしまうからだ。そして、敵の動きはランダムなので、パターンが通用しない。特にケラステス(青い敵)に手を焼くことになるだろう。ノーダメージで切り抜けるのは難しい場面のため、7面のユンゲルは可能な限り取らずに残しておき、ここで受けたダメージを回復したいところだ。
ちなみに、PC-98版で難しすぎると思われたのか、PC-88などの移植版は障害物を大幅に増やして簡単に敵がこっちへ迫ってきたりしないよう配慮されたマップへ変更されている。
◆グラウクス・ケーテのコツ(8面)
▲ PC-88SR版のグラウクス・ケーテは楽ちんなのだ。
ディアボルス
前述しているとおり8ビット版はワープする敵に関してはある程度ヴェールの近くへ現れてくれるようになっている。なので、この位置で待ち構えていればディアボルスからの攻撃は届かないし短時間で決着できる。映像はPC-88SR版だがこのように戦えばいい。この後のステージは無いのでダメージもそこまで気にせず攻めの姿勢で行けばあっさり倒すことができる。ただ、攻めといっても魔力だけは防御しないと一気にパワーが削られる。
▲ PC-88SR版と同じ必勝法をPC-98で試してもダメだ(運次第)。
PC-98版のグラウクス・ケーテが姿を現す位置はランダムに近く、離れた場所に出てしまうと長時間再ワープしない。その間にウィルオー・ウィスプがどんどん復活してきてパワーが削られてしまう。
▲ PC-98版のグラウクス・ケーテは真っ向勝負しかない。
PC-98版は中央あたりで頑張るしか無い。中央付近にいれば、遠くでグラウクス・ケーテが漂っているのを指を咥えて見ているだけという事態は少なくなるはずだ。何か必勝法があるのかもしれないが、私には見つけられなかった。ただ、ここでパワーが半分近くになってもこの先はなんとかなったりするのでそこまでシビアに考えなくていいのではないだろうか。