X68000ユーザー待望の「イース for X68000」
イース
対応機種 : SHARP X68000シリーズ
メディア : 5inch 2HD (2枚)
定価 : 9,600円 (税別)
発売日 : 1991年7月19日
オリジナル販売元 : 日本ファルコム
開発 : マイコンソフト
販売元 : 電波新聞社
目次
イース for X68000
※マニュアル抜粋
PACKAGE REPRODUCTION
STORY
冒険者を夢みる少年、アドルは、
ある日興味深い噂を耳にした。
最近、海を隔てたエステリアの国で、魔物が数多く出現し
「悪魔の塔」が姿を現わしたという。
エステリアといえば銀の輸出で名だたる国。
高まる好奇心に突き動かされ、何者かに導かれるように
アドルはエステリアの港町ミネアへと向かった。
しかし、そこに待ち受けていたのは意外な運命であった……。
これは、後に伝説的な冒険家として名をはせた
「アドル=クリスティン」
の最初の冒険の記録である。
電波新聞社 〒141東京都品川区東五反田1-11-15☎03(3445)8201(ダイヤルイン)
DP-3205017
標準価格9,600円
税抜き
『イース』X68000版について
◆『イース』概要
『イース』は日本ファルコムが開発し、NEC PC-8801mkⅡSR以降版をオリジナルとして1987年6月21日に発売したロールプレイングゲーム。
SHARP X68000版はマイコンソフトが移植・開発を行い、1991年7月19日に電波新聞社から発売した。メインプログラマーは妹尾真一(Shinichi Seno)。タイトル画は天野喜孝(Yoshitaka Amano)、イースの題字は 平田弘史(Hiroshi Hirata)という日本の巨匠をパッケージに起用している。
◆突如の発表に驚いたX68000版『イース』
『イース X68000』の情報らしきものが出たのは、16MHzのX68000 XVI(エクシヴィ)が投入され、コナミが自ら本気を出した『ロクハチパロ』の発売目前で盛り上がりを見せていた時期だ。ベーマガの「発売予定日Data Base」に突如謎のタイトルが掲載される。「✕✕✕(近日タイトル発表)」という人気ゲームのアレンジ版。情報通ならいざ知らず、一般的には電波新聞社ならアーケードゲームの移植しかないと思っていた人も多いと思う。当時は…ま、まさか…あの『ワルキューレの伝説』とか!?とX68000を所有する仲間内(3人)では予想で盛り上がった。
そして2ヶ月の沈黙を経てついに発表される。まさかの『イース』。そのタイトルを見て正直がっかりした。移植してほしいと願っていたアーケードゲームのビッグタイトルではなかったからだ。それとともに何故に?という疑問でしかなかった。それは、X68000で『イースⅠ・Ⅱ』は発売されていなかったが既に日本ファルコムから『ワンダラーズ フロム イース』(『イース』シリーズの3作目)が既に発売されていたからだ。日本ファルコムから手を離れたことと、ナンバリングの回帰という事態に状況が呑み込めなかった
◆リアルタッチの画風に界隈は驚き、賛否で揺らいだ
その後、発表時には見ることが無かった人々のビジュアルが公開されて驚愕する。当時、これを見た人は結構な衝撃を受けたのではないだろうか。X68000版のイメージを語るならほとんどの人がリアル「すぎる」人物グラフィックを挙げるだろう。とにかくリアルすぎて不気味なのだ。萌え要素など一片もなく、キャラクターグッズ展開を行っても爆死しただろう。
このグラフィックを誰が描いたのかあまり知られていないのでプロも含めて割と失礼な物言いも見受けられる。X68000ユーザーなら知っている方も多いであろう データーイーストの『デス ブレイド』、セガの『ゴールデンアックスⅡ』など多数のパッケージアートを描かれていた佐藤樹云(Jun Sato、1960年-2021年4月19日)が関わっていることを知っておくべきだろう。
そして、こんなリアルな絵柄で『イースⅡ』が出たらリリアの姿は一体どうなるのか?という話題に事欠かなかった。恐らくこの『イース』を見たX68000ユーザーならば一度は想像し眉をひそめたに違いない。(残念ながら電波新聞社から『イースⅡ』が発売されることはなかったが、勝手移植は2作品確認している。)
◆X68000のグラフィック機能を見せつけてくれる作品
賛否両論のあるビジュアルグラフィックであるが、X68000というマシンの底力を誰にでもわかりやすく見せるという点ではこれはマストだったのではないだろうか。アニメ絵やイラスト調の絵でも問題無かったと思うが与えるインパクトは絶大だ。また、512×512ドットで65536色モードを使用するというX68000が本来持っているグラフィックスのパワーを存分に見せてくれる。CGではよく使われる定番のモードではあったがゲームでは使用容量や処理速度の点からほとんど使われなかったモードだ。
制限のある中で限界を超える結果を出すのは日本のお家芸ではないだろうか。ジャンルは異なるが1990年代には280馬力自主規制に対して限界を超えるような素晴らしい名車が各社より数々登場し世界の評価を得た。大気汚染防止のための法律マスキー法をクリアしたホンダの話も聞いたことがある話だろう。ゲームに用いられたグラフィックも8色や16色の機種で描かれたグラフィックが256色のグラフィックに勝る表現力であることも数々見てきた。
しかし、そんな8色や16色の限界など鼻で笑うかようなモアパワーのX68000版『イース』に一体どの程度色数が使われているのか気になって調べてみた。なんと砦で表示されるグラフィック(256×256ドット)単体では877色と出た。多少誤差があってもゲームとして使用するにはすごい色数だ。
通常のゲーム画面(512×512ドット)で気になったのは凄い岩肌に見える湖脇の山道だ。なんと、この場面ではたった62色。凄いと思っていた背景を含めてもたったこれだけとは。それでもこれだけの色数を同時使用しているゲームはX68000では少ないだろう。特にアクションロールプレイングゲームというジャンルでは。
色数が多ければ凄く見えるかというのは別の話だ。しかし、単純な使用された色数というだけでも雑誌紹介であれば1つのトピックスとしてここは凄いぞと誇れる部分だったのではないかと思う。
単純になりがちな建物の屋根などもよく見るとこだわりが凄い。一般的にはマップチップを単純に並べることが多いと思うが、ここまでやるか?というくらい多くのチップと不規則な並びで自然な装いを見せてくれる。ミネアの街を作るだけで一体どれだけの労力が必要だったか想像に難くない。どんなゲームも制作において色々な制約がありその中でデザイナーもベストを尽くしている。ここまで機能を余すところなく使いこだわって作ることができた作品は数あるX68000のゲームでもそう多くないはずだ。
雑誌掲載の写真だけでもリアルで押しの強い人物がグラフィックの凄さを伝えてくれる。しかし、伝わっている凄さはそこだけに終始することが多い。
実際に動作しているゲーム画面は写真で伝えきれない溜息が出るほどの表現と美しさを見せてくれる。ミネアの街の中央にある池、平原に流れる川、山にある湖、そこから流れ落ちる滝、神殿内を満たす水。とにかく水の処理が美しい。そして、山道の岸壁、森林など初めて目にした時にはあまりの景色の美しさに感動した。
後に後藤浩昭(Hiroaki Goto a.k.a GORRY, 1970年5月6日-)に明かされた話によると一部のオブジェクトとバックグラウンドはトランスピュータでレイトレーシングし、ゲームで使える色数まで減色。それを手打ちで修正していたという。X68000は奇しくも『イース』と同じ1987年に産声を上げた。X68000版『イース』誕生までの4年間にここまでの表現を採用した市販ゲームは、X68000上に存在した記憶が私にはない。(あくまで見聞は狭い個人的記憶と知識による)
◆コダワリの素晴らしさ
細かい部分のこだわりも多い。例えば、アドルの装備品だ。武器、鎧、盾は装備する品により全てグラフィックが異なる。SNSなど存在しない当時は製作者の声が簡単にプレイヤーへ届くことが無かったから、こういった演出のこだわりは雑誌の記事頼みだった。ただ、ベーマガを含めても、細かいこだわりに関してはほとんど触れられておらず、本来の魅力が読者層には伝わっていないだろう。恐らくは目にしていながら気づかないこだわりはまだまだあるに違いない。いや、絶対ある。非常に勿体ない。
グラフィックだけではなく、マップも殆どが再構成されている。ミネアの街から平原、ゼピック村、山道、廃坑など雰囲気は残っているが別物になっている。マップ構成が同じなのは神殿の一部とダームの塔くらいだろう。1987年に発売された各機種の イース を経験済みのプレイヤーなら平原の狭さにはびっくりするのではないだろうか。また廃坑のマップも一新されており、階層数も減ってあまり迷うことがないような作りに再構成されている。
◆見直されたゲームバランス
ゲームバランスも大きく見直された。想像ではあるが、『イース』の良い部分であった面倒なことの排除、時間のかかる単純作業(ストレス)をさらに少なくしようとしていたのではないだろうか。草原が小さくデザインし直されたことでゼピック村や廃坑との往復も面倒に感じないだろう。また、本来少し面倒な経験値稼ぎも、敵がわんさか湧いてくる上に経験値もそれなりに得られるので意識すらしなくても序盤の草原でレベルがどんどん上っていく。HPの回復スピードもすこぶる早い。(その代わりレベルが上ってもオリジナルのように弱い魔物やボスに対してノーダメージになるようなことはなくそれなりの緊張感を与えてくれる。)
X68000版『イース』はレベルが上がってしまうと、要所要所で待ち構える各ボスキャラクターたちは適当にこなしていればあまり苦労せず倒せてしまう。あの、ヴァジュリオン(廃坑のボス)でさえもだ。これこそが、日本ファルコムが後に優しさを誰にでも解けると解釈し直したことの実現だ、と思うであろう。
しかし、優しさ=易しいではないというコンセプトは変わっていない。つまり、誰にでも簡単に解けるわけではない。ボスの強さにおけるバランスは再調整されており最後へ進むに連れ強くなっていく。歯ごたえのあるボスが後半には待っている。(それでいい)
ラスト直前に待ち受けるヨグレクス&オムルガン(ダームの塔21階ボス)は移動のアルゴリズムが大きく変更された上に周りの火玉に当たると受けるダメージも大きく、なかなか攻略ポイントが見いだせないので私にとっては最強のボスとなった。ダルク=ファクト(ダームの塔25階ボス)ですら攻略方法こそ変わりないものの、飛んでくる火の玉に当たるとダメージがかなり大きく、何気にかなり強くなっている。
◆残念なベーマガでの扱い
残念だったのはマイコンBASICマガジンでの扱いだ。他社製品では2ページ割いているタイトルも多い中、自社製品の『イース』にはたった1ページしか与えていない。こういうときは3ページでも4ページでも割いていいだろう。いや、別冊付録をつけてもいいくらいだ。
記事内容はX68000のゲームになら流用できそうな抽象的話がほとんどであり、電波新聞社作品のファンやベーマガ読者に買いたい!と思わせる魅力やこだわりを紹介する記事だったか?というと全くそうは思わない。ましてや、「ビジュアルなどのデモは設定されていない」、「残念ながらMIDI音源には対応していない」、「リアリティを求めているのに、なぜか街の人間はデフォルメされているのは残念」など発信するのは、自社発売の作品に対するプロモーションとしては最悪の部類だろう。プレイすることもなく外面の文章を読んでX68000版『イース』はまあこんなものと理解されたと思うと悔しい。本当に悔しい。
◆自分一人になっても推し続けたい作品
当時であれば8bitPCを過去に所有しており、既に『イース』をプレイしたことのあるプレイヤーは数多くいただろう。オリジナルの『イース』を一旦完全に分解したあとあらゆる面で再構成したことにより、そういった層でも十分に楽しめるゲームとしての新しい魅力とX68000の凄さを再度見直させるツールとしても非常に有効であったことは間違いない。
しかし、残念ながら移植作ではなく異色作として取り扱われる声が見受けられるのは事実だ。それこそ実際の全体像を見ず雑誌記事などだけを見てインパクトに当てられて評価されてやしないだろうか。
実際に動いているところを見て、実際にプレイしてほしい。これを電波新聞社の移植における傑作と言わず何を傑作というのだろう。電波新聞社がX68000でそれまで行ってきた移植+α(どころではない)の究極だ。私一人になっても言おう、間違いなくこの『イース』はX68000におけるグラフィック、サウンドの魅力を想像以上に伝えてくれる移植の傑作であり名作の1本であると。
◆BGMについて
『イース』の元BGMを作曲したのは古代祐三(Yuzo Koshiro)と石川美恵子(Mieko Ishikawa)。X68000版は磯田健一郎(Kenichiro Isoda=なぞいちけんけん)の作曲のBGMが2曲加わっている。X68000専用曲の内1曲は『イース』のために書き下ろされたものではなく、自身の過去発表作品を X68000用に編曲したものだ。
編曲は磯田健一郎、磯田重晴(Shigeharu Isoda)と後藤浩昭(=GORRY)で行っており、FM音源の音色作成やPCMデータ作成および調整、最終的なデータ化は後藤浩昭が行ったということだ。後藤浩昭が語る当時の開発秘話や意見などを含めた2010年の貴重なやり取りが「togetter」に残っている。
先に「マイコンBASICマガジン」上で「対応していないのは残念」と評された当時の外部MIDI音源事情を記しておきたい。PCゲームの外部MIDI音源対応化はトレンディ(死語)ではあったが発売全体数に対してあまり進んではいなかった。1991年7月当時の対応音源はRoland SC-55(1991年3月発売)ではなく、ほぼLA音源のRoland MT-32で占められていた。
SC-55に対してMT-32の利点は(エクスクルーシブ送信などの対応と技術があれば)音色を作成できるという点だが、難点はプリセットの音色にバリエーションの幅があまり無いことと一部音色にリアルさが欠けることだ。またゲームでは必須ともいえるリードシンセの種類は少ないし、ディストーションギターは存在すら無い。リズムセットは1つのみでスネアドラムは状況によりチープに聞こえた。Roland側も気づいているのか、MT-32の一部デモ曲は音色が書き換えられ信じられない音(この音が標準で出せると何人の客を騙したことだろう)を出す曲が混じっている。音色作成を行えなければ 外部MIDI対応ながらプリセット音で代わり映えない個性の無い音になる。そうなれば音源に合わせた曲で勝負となるのだが、あいにく イース は移植作でありオリジナル曲ではないためプリセット音だけを使ってFM音源のような個性を出すのは難しい。
X68000版『イース』は先述の通り外部MIDI音源対応は非対応(電波新聞社作品のMIDI対応はどちらかというと消極的)であり、FM音源を最大で8音同時発声、リズムパートはADPCMサンプリング音を使い同期演奏させている。PCM8のようなADPCMを擬似的に複数同時発声させるような技術は用いられておらず(X68000版『イース』の開発時期ではPCM4すらまだ未発表)、当時としてはスタンダードな対応だろう。
当時はゲームソフトにおいて外部MIDI音源対応というのはウリの一つになる重要なファクターであったことは間違いない。しかし、それをあえて行わなかった(行えなかった?)のは正解だと思う。音源ドライバー制作の手間に加えて独自性を打ち出すとなれば音色の作成にMIDI音源専用の編曲など、負担は単純に倍では済まない。(もちろん、MIDI音源の場合はゲーム側の処理負担も大きく増える)両音源で中途半端な音を出すくらいなら、そのエネルギーをFM音源に回した方が合理的だ。
結果、見事に成功していると思う。一部ではオリジナルの音と全く異なることに違和感を覚える意見もあるようだが、考えてほしい。そもそもゲーム画面、絵面からしてオリジナルの要素は殆ど無いのだ。そこにYAMAHA YM2203のOPNサウンドに毛が生えたようなアレンジが鳴っても違和感の塊になるだろう。私はこのアレンジに舵を切った判断に称賛を贈りたい。
X68000版『イース』で使われている音色の作りは言葉で表現しづらいが全体的に絵面と同じようなリアリティを感じる。それは、X68000の持つポテンシャルが一段上がったかと錯覚するクオリティだ。廃坑で流れる「Beat of terror」は完全に独自の世界観を確立した素晴らしいアレンジに仕上がっているお気に入りの1曲だ。また、宝箱を開けた音楽の後の処理が凄い。シームレスに通常のBGMが途切れた部分からフェードインしてくる。細かい部分なんだけどこういうテクニカルな拘りが気持ちいい。
物語
冒険者を夢みる少年、アドルは、ある日興味深い噂を耳にした。海を隔てたエステリアの国に「悪魔の塔」が姿を現わし魔物が出没し始めたという。エステリアといえば銀の輸出で名だたる国。高まる好奇心に突き動かされ、何者かに導かれるように、アドルはエステリアの港町ミネアへと向かった。
航海は順調に見えたが、エステリアを目前にしたアドルの船は、突然の嵐に見舞われてしまった。激しい波に船は転覆し、アドルは海へと投げ出された……。
気が付くと、アドルは見知らぬ海岸に漂着していた。幸い怪我はなかったが、所持品のほとんどが失われていた。疲れきった体をひきずりながら、アドルはとりあえず、近くに見える砦の町を目指して歩き出した。
これは、後に伝説的な冒険家として名をはせた「アドル=クリスティン」の最初の冒険の記録である。
操作方法
●キーボードの操作
移動
スペース・キー
F1 F5
ステータス表示 取り消し
アイテム使用 LOAD SAVE
●ジョイスティックの操作
移動 トリガB 取り消し
アイテム使用 トリガA 決定
メニュー表示
(SAVE, LOAD, ステータス)
画面説明
○通常移動画面
普通に移動しているときの画面。人との会話や魔物との戦闘はこの状態で行う。
・H.P(ヒットポイント)
アドルの残り体力。どれだけ攻撃に耐えられるかを示す。左側が現在の状態で、これが0になるとゲームオーバー。右側は最大値。
・EXP(経験値)
アドルの現在の経験値。敵を倒す毎に増えていき、右側の値を超えるとレベルアップする。
・GOLD(お金)
現在の所持金。
◆操作
アドルを動かすのは「移動キー」。「決定キー」でステータス画面になり、「取り消し」キーで装備しているアイテムが使える。
◆会話
人に触れるとセリフが表示される。
決定、取り消し、あるいは移動キーを押すと次へ進むことができる。
◆戦闘
敵との戦闘はきわめて単純「体当たり」。画面下にアドル("PLAYER")と、最後にぶつかった魔物("ENEMY")が表示されている。
敵の正面から当たるとアドルもダメージを受けるが、敵の死角をついたり、「半キャラずらし」といったテクニックを使えば、敵だけにダメージを与えることも可能。
もうひとつのX68000版イース "True-Ys"
X68000版の『イース』は、良質なアレンジ作ということで認められつつも、オリジナルのグラフィック、そして古代祐三(こしろゆうぞう)のオリジナルサウンドを求める声も少なくなかったように思う。
私も思った。あれはあれでいいものだけど、まずオリジナルが存在した上で作ってほしかったよね、と。そんなとき、当時PCゲームソフトフロア(コピーツールとサプライも扱っていたけど)の同僚であった通称シゲさんから1枚のディスクを受け取る。
当時はもう仰天した。あの PC-8801mkⅡSR以降版の『イース』がそのままの画面でX68000上で動いていたからだ。似ているとかいう素人レベルの移植ではなかった。なんでこんなことができるのかもまったく理解できなくてただただ感動した。もうこれは魔法だと思った。
世間のX68000ユーザーの声を聞いてか、それとも感じてか、MILK HOUSEが作成されたPC-8801mkⅡSR以降版に準拠の(ネット上で見かける PC-9801準拠 という話は間違い)勝手移植版の『イース』である『True-Ys』だ。オリジナルを忠実に移植することを前提として、しかたないから自分で作ってしまえという精神で X68000版 発売の1991年7月19日からおよそ1ヶ月後に公開、配布されたものだ。
メッセージの漢字使用、ミュージックモードの追加、セーブ数の追加など細かいアレンジが盛り込まれている。SSG部分のサウンド再現性やモニター表示が24kHz専用(24kHzの映らない CZ-603D/604D/606D/607D/608Dなどは不可)などの一部難はあるものの、2021年版『イースⅠ&Ⅱ』に見劣りはしない。
攻略のヒント
X68000版『イース』は一部のリングを手に入れる方法が大きく変更されている。場合によっては手に入れること無くエンディングを迎えてしまう場合もある。裏を返せば、X68000版は魔物から受けるダメージが割と小さく設定されていることが多いので「HEAL-RING」以外は無くても困ることはあまりない。
◆ゼピック村の村長が話をしてくれない。
普通なら悩みを打ち明けてくれるのになんだか様子がおかしい。凄く無愛想で取り付く島もない。神殿へ先に行き 銀の鈴 を手にして持っていっても相手にしてくれる様子がない。本来なら POWER-RING がここで手に入るのに!と悩んでいるプレイヤーも多いだろう。
その謎の鍵はミネアの街にある。街の南西を歩いている親子連れの母親に話しかけると村長の娘がいる。この会話を行うことで村長のツンはデレに変わる。
これで、村長の攻略は完了だ。銀の鈴を手にしていればPOWER-RINGが手に入る。ただし、オリジナルではダームの塔17階でPOWER-RINGが非常に有効だった。しかし、X68000版では特に必要なくても大きな問題ではない。村長の心を開かないままエンディングを迎えたプレイヤーも多いはずだ。
TIMER-RING が廃坑で見当たらない。
1987年に発売された各機種の『イース』は廃坑の地下1階にてTIMER-RINGが手に入った。しかし、X68000版は地下2階までしかなく、構造も変わっている。くまなく探しても宝箱からTIMER-RINGを見つけることはできないだろう。なぜなら、廃坑に存在しないからだ。
これは廃坑で見つけた銀のハーモニカをミネアの街にいるレアに渡してやるだけで手に入る。なまじ攻略方法を知っていると探し回って迷うことになるというある意味のワナ。
裏技の紹介
◆ミュージックモード
システムディスクをドライブ0に入れて、Human68kのコマンドモードを起動する。(Human68k 3.0はPCMのリズムパート再生になり音楽を聞くことが出来ないので注意)
システムディスクをゲームディスクAと入れ替える。
A>GSD YSMUSIC.DAT YSPCM.DAT ⏎
A>GSD ⏎
1. タイトル
2. 町
3. 店1
4. 店2
5. 草原
6. 神殿1
7. デカキャラ
8. 神殿2
9. 廃坑
10. 塔
11. 最上階
12. ファイナルバトル
13. Restin Peace
14. エンディング1
15. エンディング2
16. サウンド無し
17. 山
18. ゼピック村
19. サウンド無し
20. ゲームオーバー
21. サウンド無し
22. ハーモニカ
32~53. 効果音
54. Lucky 宝箱
TRACK LIST
ラジオ収録曲(FM音源+ADPCM)
内蔵音源
音源チップ:YAMAHA YM2151(OPM)+ OKI OKI MSM6258
01 Feena(タイトル)
02 Fountain of Love(町)
03 The Shonin(店1)
04 Tears of sylph(店2)
05 First step towards wars(草原)
06 ゼピック村
07 神殿までの道
08 Palace(神殿1)
09 Holders of power(デカキャラ)
10 Palace of destruction(神殿2)
11 Beat of terror(廃坑)
12 Tower of the shadow of death(塔)
13 The last moment of the dark(最上階)
14 Final battle(ファイナルバトル)
15 Rest in peace
16 The morning grow(エンディング1)
17 See you again(エンディング2)
18 Game Over(ゲームオーバー)
合計時間 : 11:22
作曲 : 古代祐三, 石川三恵子, 磯田健一郎(なぞいちけんけん)
編曲 : 磯田重晴, 後藤浩昭
DISCOGRAPHY
ねこはとってもピアニスト/小原孝
発売日: 1990年6月21日
価格: 2,600円(税込)
商品番号: APCE-5061
販売元: アポロン
ラジオ収録曲
01 仔ねこの情景
02 テンダネス・ウインドウ~窓からの訪問者~
03 我輩はジルである
04 MA-DO-RO-MI
05 母ねこのまなざし
06 こたつの思い出
07 ガーデン・ウォーク
08 恋するジル君
09 ジルのペティ
10 夕やけジル君
11 雨がすぎても
12 子ねこが生まれた日
13 ジル君はピアニスト ねこふんじゃた
14 ジル君はピアニスト モーツァルト・ソナタ・ハ長調
15 ジル君はピアニスト エリーゼのために
16 ジル君はピアニスト 子犬のワルツ
17 子守歌
18 さよならこんにちは
作曲 : 磯田健一郎(02, 04, 06, 07, 09, 11, 12)
「02 テンダネス・ウインドウ~窓からの訪問者~」が「ファンタジーゾーン X68000版」のローディングで使用されている。「11 雨がすぎても」は電波新聞社販売、「イース」の神殿までの道で使われている原曲。
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情報
まめちしき:X68イースのObj/BGの何割かは「トランスピュータでレイトレ→自前の減色ツールで減色→手打ちドット修正」でできてる
— 後藤 浩昭 / GORRY (@gorry5) March 4, 2012
X68kイース開発中に使われていたもの/X68000 オブジェクトエディタ OE (TONBE氏作) http://t.co/MMt2cjMas6 pic.twitter.com/R7paftKTTC
— 後藤 浩昭 / GORRY (@gorry5) February 13, 2015
今あえてうちのイースの題字も見て。
— 忍者犬x乳丸 (@opaimar) November 24, 2020
AKIRAなどでお馴染み劇画家の平田弘史先生ですよ。 pic.twitter.com/YAjaH19jY3
今この状況で話題になっているのがちょっと言いづらいところもあるのですが、X68000イースのアートワークは天野喜孝先生、平田弘史先生、佐藤樹云先生ですからね。
— 忍者犬x乳丸 (@opaimar) February 16, 2024
ユーザーの期待したイースIIの路線ではなかったのかもしれませんが、古き良きRPGに全力で取り組んだのだと思います。 pic.twitter.com/QDMtHmoJyx
訃報
平田弘史氏 逝去に関するお知らせ
— 平田弘史交遊会 (@HirataKoyukai) December 16, 2021
劇画家の平田弘史氏が、2021年12月11日夜 心不全の為逝去されました。
葬儀はご親族で行われました。
生前のご功績に心から感謝を申し上げ、謹んで氏のご冥福をお祈りいたします。https://t.co/sqg5CTtlRA pic.twitter.com/fo0qqm1ZOU
奥様と連絡がとれ、私がデータイースト勤務時一緒に働いていた佐藤さんが髄膜転移の癌により4月19日に旅立たれたとのこと知りました。享年61歳。
— red-dragon (@reddrag64988892) June 16, 2021
デコ以外のゲーム会社でもご活躍されていた模様。
ご冥福をお祈りいたします。
・・・暫く仕事が手につきそうもありませんhttps://t.co/Rv695hgsLN
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